第12話 和服美人、鬼と化す
応接間はあちらこちらで鬼と鬼との闘いが繰り広げられていた。
祖父が叫ぶ。
「桜っ、逃げなさいっ!」
その戦いに紛れて、父と祖父も戦っていた。
(え⁉ なんであんな強いの?)
木刀を構えた父と祖父が、鬼の繰り出す日本刀の切っ先をカンカンと跳ね除けている。
「桜っ! 逃げてっ!」
父の声に我に返った桜が自分も台所へ逃げ込もうとした、その時だ。
魁の白地に青の朝顔が咲く薄い夏生地の着物の袖がスパっと切られて宙を舞った。
「……っ⁉」
息を呑む桜の前で、魁の姿が変わっていく。
「あーあ。コレ気に入っていたのに……殺すしかなくなっちゃったね!」
不穏な言葉を口にした魁の体がみるみるうちに巨大化していく。
(魁さんの体が……鬼に……)
桜はポカンと口を開けて魁を見上げる。
和服美人だったはずの魁は、着物を裂きながら筋骨隆々の鬼へとなっていった。
(あ、でも。魁さんは魁さんだ)
額の角は太く立派にそそり立ち、体は厚みのある筋肉に包まれてバッキバキになっている。
顔も鬼らしくなっているが、やはり美しいままだ。
その魁に向かって、幾振りもの刃がギラギラとした光を放ちながら振り下ろされた。
「危ないっ!」
桜は近くにあった木刀を握り、魁と刃の間へと飛び込んだ。




