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美容系アイドルとイケメン院長の独占欲♡秘密の診療室で溺愛されて困ってます~推しの秘密は蜜の味〜  作者: はなたろう


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10/12

#8 またしても新事実

休憩室でひとりランチを食べていると、スマホにメールが届いた。



ファンクラブ会員限定のお知らせだ。



『ついにdulcis〈ドゥルキス〉海外新出!アジアツアー決定!先行チケット販売のご案内』



いつもなら、悲鳴をあげているはずのビッグニュース。

でも、今は画面の中の「チケット申し込み」の文字がやけに遠い。



先週、私の肌を熱く撫で回した指。何度も名前を呼んでくれた、あの掠れた声。



ファンなのに推しとの一線を越えた自分。何万人の観客の一人として、ペンライトを振る権利があるのだろうか。



私は逃げるように画面を閉じた。



何気なくテレビをつけると、耳馴染みのあるイントロが流れてきた。



『本日のゲストは、dulcis〈ドゥルキス〉のアラタさんです!』



画面いっぱいに、あの人の姿が映し出された。



『こんにちは、よろしくお願いします』



透き通るような肌、完璧な骨格。美容系アイドルとして絶大な人気を誇るアラタ。


白いスタジオライトの下、一分の隙もない角度で笑っている。



『美しさは努力の賜物です』



そのストイックな言葉、凛とした表情。


昨夜、シーツの上で私を求めていた、あの淫らな熱を帯びた瞳とは、まるで別人のようだった。



『ただ、誰かを愛すること。そして、愛されている自信。それに勝る美容液はありませんね』



スタジオにため息が漏れる。カメラに向かって投げられる、完璧なウィンク。


ああ、やっぱり、カッコいい。



『――え? いえいえ。もちろん、ファンのみなさんのことですよ』



軽やかに笑って、スタジオの空気をさらりと支配していく。



私があの夜抱きしめたのは、本当にこの人だったのだろうか。



「あらまぁ、立派なことを言ってるわねぇ」



百合さんがお弁当を片手に戻ってきた。画面のアラタを見ながら、やけに面白そうに笑っている。



「誰のおかげの美肌なんだか」


「え、百合さん……」



百合さんは私の目の前の席に座ると、



「ん?愛香ちゃん。なんか肌がいい感じねぇ」



百合さんがじっと私を覗き込んだ。



「さては――抱かれたわね。しかも、最高のセックスができたわね!」


「えっ!」



どうしてこの人は、こんか単刀直入なのだろう。



「あーん、ほらね!やっぱり女が美しくなるには、注射もサプリも必要ないのよ。好きな男に燃え尽きるまで抱かれてこそ、女は花咲くものなのよ」



アラタとの夜が、一瞬で脳裏を過る。



「あの、百合さん……。私、どうすればいいでしょう」


「なになに?聞かせてちょうだい」



百合さんは楽しそうに身を乗り出した。



「実は、その、相手の名前は伏せるのですが。ちょっと、いえ。わりと有名な方と……してしまったのです」



そこまで言うと、百合さんはテレビ画面をじっと見た。そして、ポンと手を叩いた。



「なんだ、愛香ちゃんの相手ってアラタなの?」


「えっ! なんで、わかったんですか!?」



私は驚きで箸を落としそうになる。アラタとの関係は、克哉と私だけの秘密のはずなのに。



「弟だもの」


「誰が、ですか?」


「だから、dulcis〈ドゥルキス〉のアラタはわたしの弟」


「ええ、ええええーーーー!」



ここに来て、また新情報が加わり、私の脳内は完全に停止した。克哉の右腕である百合さんが、国民的アイドルの姉!?



「なるほど、そっか。うんうん、わかったわ」


「いえ、私は全然状況がわかりません」


「いつまでも、男の克哉相手に満足してるようじゃ、姉としては心配だったのよ」


「えっ! 百合さん、知ってるんですか? 克哉とアラタが……、その、つまり……」


「まあね」



ふふっと、彼女は隠し事を楽しむように笑った。



「アラタに克哉を紹介したのは、わたしだからね」



百合さんは克哉の大学時代の先輩で、付き合いは10年以上と聞いている。



「医師と患者のはずが、妙な関係になったと聞いたときは驚いたけどね」



ぶっ、と思わずお茶を吐きそうになる。


あの二人の関係を、実の姉がそんなにあっさりと認めているなんて。



「克哉とアラタが真剣な交際ならともかく、そうではない以上、心を許せるパートナーが現れてほしいと、姉は願っていたわけよ」


「いえ、そんな関係とはちょっと違うような……」



専用セラピスト。


彼は確かにそう言った。でもそれは、要するに身体だけの関係ということではないだろうか。


女性不信を治すための練習台だもの。


そこに恋心なんてない。……そう思えば思うと、胸の奥がキリキリと痛む。



「そうだ、来週の水曜に予約したって聞いたわ。愛香ちゃんに会いに来るのね」


「そんはこと――ないですよ」



そのとき、ランチに行っていたスタッフが戻ってきたので、百合さんは「この話は内緒よ」と、悪戯っぽく囁いて会話を切り上げた。


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