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セクハラ護衛騎士と婚約者の観察日記  作者: buchi


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第91話 他人の婚約発表にマウント取りする

「パーティ会場はスプリンバーグ公爵家ですって」


当日の朝、母が平然と言った。


「は?」


スプリンバーグ家?


「正式な夜会ではなく、園遊会なのですって。天気がよければ庭園で、悪ければ大客間で催すそうよ」


スプリンバーグ家と言えばヒルダ嬢の家。

絶対に行きたくないと心底ハンナは思った。


「あの、おかあさま、私、急に気分が……」


「まあ、いいお天気だこと。格好のデート日和ね。もうお返事は出してあります。殿下が王家の馬車で迎えに来られますわ」


見ると、先にヘルマンとカーク卿が、この前のような適当な格好ではなく侍従風な黒服に身を固めて、ハンナの家の玄関の間に、早くも到着していた。


「護衛だそうよ。さすが王家ね」


行きたくない。でも、体調不良くらいでは、ダメかもしれない。


そもそもヒルダ嬢というのがよろしくない。

どんな騒ぎを引き起こすか見当がつかない。


公爵はお目にかかったことがないが、父から聞く限りでは、一言で片付けてしまうと「俗物」。

夫人とは完全な政略結婚で、色々な女性の間をさまよったが、だんだん相手の質が落ちてゆき、現在のお相手はメイドだそうだ。

逆に、夫人の方は決まった恋人がいる。公爵家に使える馬丁だそうで、公爵家に嫁いできてすぐの一目惚れで、以来一筋らしい。

自邸内で完結しているので、漏れ聞こえさえしなければ外聞に問題はない。……はずだったが、意外と知れ渡るものらしい。

ただ、自分たちの欠点はよくわかっていて、次代には真実の愛をと奨励しているそうだ。

この間、フィリップ殿下から聞いた。


「別に相思相愛じゃなくても真実の愛って、成立するんだって。一方通行の真実の愛って言うそうだよ」


その時は、婚約後の最初の『頃合いの』パーティ会場がまさかヒルダ嬢の屋敷だなんて知らなかったから、聞き流していた。


「違うような気がしますけど」


フィリップ殿下が話す内容は、突拍子なさそうでも、実は関連があるんだって覚えておけばよかった。


「ハンナ、そんなところへ殿下を一人で行かせるわけにはいかないわ。何をどう勝手に決められるかわからないでしょ? 殿下は私のものよって、主張しないと」


この世でハンナに最も不向きなことが何かあるとしたら……それは自己主張である。


無理!


それでも、フィリップ殿下がやってきた時、ハンナだって決意した。


頑張らなきゃ。


「ねえ、どうして、そんな固い顔してるの? ドレス似合ってるよ」


「殿下こそ」


「あー、もー、やんなっちゃうなー。フィリップって呼んでよー」


親しげにフィリップと呼んだ方がいいのか、それともまだ婚約者と王家から公表されていない段階で、名前呼びは引っかかるだろうか。


しかしヒルダ嬢の屋敷は意外と近いのであっという間に着いてしまった。


ヤバい。

超ヤバい。


マズいわ。他人の婚約発表の場に乗り込んで、それより大物カップルの婚約発表をその場でやるだなんて、なんと説明したらいいかわからないが、パーティの乗っ取りみたいな、せっかくのパーティ潰しみたいな?

どうして両親もフィリップ殿下も涼しい顔をしているのかしら。




一人娘の婚約発表ということで、大きな屋敷は超満員だった。


ハンナの屋敷から近いくらいなので、王都の中でも一等地である。

そこに広大な屋敷を構える公爵家はさすがであった。


馬車に付けられた紋章だけで、門番は、乗っているのが誰かすぐにわかる。

多分、地方の男爵かとかはわからないだろうけど、呼んでないから問題なし。

しかし、王家の紋章は、市場の売り子でも知っている。

最敬礼して通してくれた。


中身を改めようなんて失礼な真似はするわけもなかった。よし。


だけど、車回しまで来たら降りなきゃならない。


「陛下が来るわけもないし、アレクサンドラも忙しいし、僕だって来るかどうかわからない。まあ、今回は、出席で返事したけどね」


やはり王家。態度がでかい。ハンナは縮こまった。


「あ、遊びの相手じゃないから。正式な婚約者だから。堂々としてて」


馬車から降りた途端、好奇の目がハンナに降り注いだ。


「最初が肝心だから。頭を上げて」


ハンナは顔をあげ、視線を走らせた。知らない顔が多い。


「まあ! どなたかしら?」


「知ってますわ! あの方、伯爵家の令嬢よ!」


「伯爵家の? ただの?」


ただの?は余計だ。


「そんな……王家に釣り合わない……殿下の気まぐれかしら?」


「ハミルトン家ですわよ!」


伯爵家にもいろいろある。

ハミルトン家はただの伯爵家ではない。

なんだったら王家より歴史は古いかも。

王家は系譜が途切れているので、古くないような形になってるけど、前の王朝から、嫁だの養子だのを迎えているので、そこをカウントすれば、ハミルトン家より古い。

とはいえハミルトン家は、国内で最も古い一家だった。


そして、多分全貴族ひっくるめて、絶対的に裕福だ。近隣国の貴族全部含めても、多分一番お金持ち。


「お金かしら?」


「そこまで貧乏じゃないですわよ? 今の王家は」


借金のカタに豪商の娘を嫁をもらった話はあるが、失敬である。


聞こえないようにしているのかいないのか。結構聞こえる。


事ここに至ってハンナは決意した。


よしんば後でこの話が流れるとしても、ハンナは頑張らなくてはならない。


誰よりも気品があり、誰よりも堂々として!


誰よりも美しく!は自信がないので、まあ、他のところで!





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