第78話 エリザ嬢とジョゼフィン嬢の失望
パーティは完全に室内組と庭園組に別れてしまった。
室内組はマチルダとリリアン、アンドリューとパーシバルを中心にした正常なグループである。
庭園組は、フィリップ殿下と輝くばかりに美しいエリック様と、エリザ嬢とジョゼフィン嬢、それになぜか今回も巻き込まれたハンナである。
「ハンナは巻き込まれる才能でもあるのかしら?」
やきもきしながらマチルダとリリアンは心配した。
「あの王子様とその幼馴染のイケメンと、隣国の高貴な令嬢方は何の用事でここにきているのかしら?」
リリアンはイライラしていた。
「気にしないで。私たちはパーティを続けましょうよ」
マチルダがなだめた。なんだかいろいろと事情がありそうである。そして関わり合いにならない方が吉と見た。
「そうはいかないわ。今日はハンナに合うかもしれない殿方を集めたのよ」
それもやっぱりマチルダとアンドリューの婚約祝いとは趣旨が違うんだけど。
とはいうものの、集められた数名のご子息連中も、マチルダとリリアン、アンドリューとパーシバルも、興味津々で庭園組の様子を窺っていた。
ある意味、下手なパーティなんかよりはるかに興味をそそる会合である。
三十分もすると、エリザ嬢とジョゼフィン嬢の二人は、見るも打ちしおれて戻ってきた。
ハンナが付き添っている。
ハンナはいつもの静かな様子で、それとなく気を配っている。
エリザ嬢とジョゼフィン嬢の御者を呼んでくるよう、マチルダの家の者に言いつけ、正面玄関に馬車を回すよう手配した。
「お茶はいかがですか?」
それとなく声をかけ、にぎわっている客間の隣の部屋を用意させた。
気が付くとハンナ自らがお茶を入れている。
呆然自失状態だったエリザ嬢がふと我に返った。
「いい香りだわ」
「はい。異国のお茶です。お好みでしたら、お届けしましょうか? アレクサンドラ殿下のお気に入りですわ」
「殿下の?」
ハンナは控えめに微笑んだ。
ジョゼフィン嬢もお茶の香りを胸いっぱい吸い込んだ。花の香りがする。
「こちらに菓子もございます」
ジョゼフィン嬢はいささかふっくらしていた。
甘いものに目がないと言う噂である。
一口サイズに整えられた小菓子は色目も美しく、主に甘いものだったが、塩味のものや果物などスッキリさせる口直しも並べられ、ハンナが説明する。
「そちらのナッツは遠くの異国産のものです。冷やしたレモネードはいかがですか? ハチミツを入れると甘さが調整できます」
二人は悄然としていたが、食べているうちに復活してきた。
「あら。馬車の用意が整ったようですわ」
ハンナが静かに窓の外を見た。しかしすぐに目をそらした。
エリック様が、逆立ちをしていたからだ。そのあとは木に登り始めた。フィリップ殿下が木の根本から何か言っている。抗議しているようだ。
二人の令嬢は大きなため息をついた。
「エリック様は、来月、未開の地の冒険に出かけるとおっしゃっていましたわね。体を鍛えるのが目下の目標だそうですわ」
二人は何も答えなかった。そのまま、屋敷の主のカーン男爵にもマチルダ嬢にも挨拶もせず帰ってしまった。




