第38話 目指せ逆玉
「ジョージは、あなたとは次のダンスパーティで、派手に婚約破棄をするつもりらしいわ。あなたの不貞が原因で」
「それは……」
困る。
「ハンナ、もう婚約破棄されておけば? ジョージなんか嫌いでしょ?」
「ええと、婚約破棄は構いませんが、私の有責というのは困ります」
「あなたが不貞なんかしていないって、私が証言してあげるわ。でも、ジョージが好きってことはないわよね?」
「ありがとうございます。私は、ジョージ様とは一度も会ったことがないので、好きも嫌いもありません」
アレクサンドラ殿下とパース公爵夫人がヒュッと息を飲むのが聞こえた。
なぜか、護衛騎士の鎧もガタンと言った。
「会ったことがない……」
ハンナは気まずそうに答えた。
「こちらの学園に入学した時、ジョージ様から手紙が届いたのです。なんでも、フィリップ殿下のご学友に選ばれたそうで、今後、とても忙しくなるので、私の相手はできないと言う趣旨の手紙でした」
アレクサンドラ殿下のきれいな青い目が大きく見開かれた、
「ジョージ様は、その、ご学友になられたことを大層自慢されていて、食堂でも大きな声でお話されていました。私のことを見かけたこともあると思いますが、私の顔をしっかり見たこともないのではないでしょうか。地味な女性だと思っていらしたそうです。でも、その後、私がアレクサンドラ殿下のご学友になったことが、気に入らなかったらしくて……」
パース公爵夫人とアレクサンドラ殿下、それに身動き一つしないはずの護衛騎士が真剣になってうなずいていた。
「ああ、それで、ヒルダ嬢との結婚を画策しているのね。格上貴族が好きなのね」
「よくいる貴族のタイプですけど……あまり好感はもてませんわね」
アレクサンドラ殿下とパース夫人は、何か納得したようにうなずき合った。
だが、ハンナには疑問があった。
「ジョージ様は、本気でヒルダ嬢とのご結婚を望んでらっしゃるのでしょうか?」
「そうだと思うわ。ヒルダ嬢の公爵領は広大で一人娘。土地から上がる収益もけた違いよ。かなうなら、入り婿になりたいでしょうよ」
「でも、可能なのでしょうか?」
問題はそこだ。ヒルダ嬢の家は大公爵家。婿に第二王子を望んでいる。それに比べて、ジョージはただの侯爵家の令息にすぎない。
「まあ、ご学友になったら、王家といろいろお付き合いする機会が増えますからね。ご身分は変わらずとも、箔がつくというか。王家に認められたと勘違いして、チャンスと捉える方もいますね」
パース夫人が言った。
「チャンス到来という訳ですわ。市井では逆玉婚と言うそうですのよ」




