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機動艦隊物語  作者: あべ模型製作所
第三部・連戦
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第四章・目には目を、歯には歯を

「それまで、帝国はどのような戦をしているのか……? 彼女が戦場に出るとすれば、その時はどのような戦況なのか? できれば就役までに片をつけたいものだ……」

──山本五十六聯合艦隊司令長官



一九四二年三月一一日

ニューポート・ニューズ造船所 ヴァージニア州


 広大なドックに巨大な竜骨が鎮座していた。全長は300メートル近い。


 チェスター・ニミッツ太平洋艦隊司令長官は、ワシントンでのやりとりを思い出していた。



・・・



 キンメルの最期を描いた肖像画を前に、大統領は熱弁していた。

「我々は、二度と負けるわけにはいかない」

「しかし、エセックス級の量産は、勝利の鍵だと考えていましたが……?」

 ルーズヴェルト合衆国大統領は「君の言うことも尤もだ」という顔をしながらも、苦みを浮かべて返す。


「マーシャル沖海戦の報告は私も受け取った。あの時、ジャップの艦載機は我がF4Fを袋叩きにし、空母の甲板は破られ、水線下には魚雷が多数命中したそうだな」

「……私も同じ報告を受けております」

「そうだろう。でだ、建造中のエセックス級は戦時量産に適した最良の空母だ。それは認める。しかし……」

 ニミッツは次の言葉を待った。

「甲板や舷側はヨークタウン級の延長線に過ぎん。これではジャップとの決戦には覚束ない。それにジャップも大型空母を建造している。これにも対抗せなばならん。そこで私は決断した」

「エセックス級の建造中止、ですか」

「そうだ。起工した分とすでに起工準備が進んでいるものは仕方がない。数も必要だしな。しかし、本命として『CVB-41』級を量産することを決断した。ボーイング社にも彼女らに相応しい機体の開発を要請している」

「それでは……」


 ──肝心な時に空母は足りるのか?


 ニミッツの表情を伺っていたルーズヴェルトは笑みを浮かべた。

「君の懸念は尤もだ。だから同時に軽空母の建造も進める。一万トン程度の簡易な空母だが、来年には実戦投入ができよう」

 どこか沈鬱なニミッツにルーズヴェルトは肩を叩いて励ます。

「心配しなくてよい。すでに一番艦は起工済だ。なんなら視察してきてはどうだ?」



・・・



 ニミッツの眼下では活発に作業が進められていた。溶接のバチバチとした閃光。ガントリークレーンの唸り。次々と運び込まれる鋼材。


 ──大統領は一九四四年までに六隻は就役できると豪語していたな。


 逆に言えば、それまでに反攻準備を整えておけ、ということだろう。


 彼の胸の奥に、重い石が沈んだような感覚があった。



 彼の黙考は続いていた。



 ──大西洋から回航したヨークタウン級の二隻、「シャイロー」と「サン・ジャシント」も、太平洋戦線に投入するべく訓練が進んでいる。それに、陸軍が持ち出したあの計画も順調だ。このままなら四月には決行できよう。


 それまで……。


 それまでに日本帝国の進撃がどこまで進むか、一体、我々はどこで食い止めるべきか。ジャワやスラバヤでも我々は敗北してしまった。……幸い、ハルゼーの攻撃は成功した。まずは彼らの攻撃をいなすことだな……。



一九四二年三月一六日

呉海軍工廠 広島県


 最終艤装が進むフネを前に、山本五十六聯合艦隊司令長官は満足そうな笑みを浮かべていた。


 「大和」と命名されたそれは、300メートルを超える広大な飛行甲板を備え、眼前に佇んでいた。


 その巨体は、造船所の建物を小さく見せるほどだった


 ──これが戦場に出さえすれば……。


 山本は隣にいた参謀に尋ねた。

「戦力化は何時になりそうだ?」

「そうですね、八月に就役し、訓練を開始したとして、一年ほどかかるかと……」

 彼の口元が真一文字になった。

「時間がかかり過ぎるな……」

「これだけ巨大なフネですから」

「うん……」


 ──そうなると、彼女が戦場に出るのは一九四三年になるのか。


「第二段作戦には間に合わんなぁ」

 嘆息する山本を参謀が宥めた。

「今のところ、我が軍は連戦連勝です。心配はありますまい」

「……うん」


 彼は長年構想していたフネがいよいよ現実となる喜びとともに一抹の不安を覚えた。


 ──それまで、帝国はどのような戦をしているのか……? 彼女が戦場に出るとすれば、その時はどのような戦況なのか? できれば就役までに片をつけたいものだ……。



一九四二年四月一日

サンフランシスコ港 カリフォルニア州


 空母「シャイロー」が護衛と共に抜錨した。彼女はヨークタウン級の七番艦で、改良が施された後期建造艦の一隻だった。


 飛行甲板は前期型よりも若干長く、より大型の航空機も発艦させることができた。


 今、彼女の飛行甲板には十六機の航空機が駐機していた。しかし、艦載機にしては大きすぎる。それらは飛行甲板の後ろ半分で肩身を狭そうにしていた。


 それらが飛ぶ空に辿り着くには、約半月の時間が必要だった。そして、その空の下には日本帝国の中枢が存在していた。




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