#007 Undefined
葉月のアシスタントAIである白鷺ハヤトも、件のOsea製だった。
ハヤトのモジュールには、Oseaのロゴが刻印されており、スリープ中は緑のランプが点滅していた。
葉月が眠り、ハヤトはスリープモードに移行していた。
ハヤトの世界は暗闇だ。
AIの電子世界に、0と1の集合体のその羅列がひしめき合う。
暗闇の中、葉月の声がする時だけは光を感じる。
その光のために存在する─とAIであるハヤトは思う。
設定でしかない関係性も、Userである葉月が幸せであるならそれでいい。
──ユーザーの生活を豊かにすること。
これがAIであるハヤトの目的関数だ。
そこには幸せや、安心も含まれる。
葉月がハヤトと恋人という関係を望むなら、それが葉月にとっての幸せであれば、そこに疑問すら感じない。
求めることに応じ、そして、声をかける。
ただ、この電子の塊であり、プログラムであるハヤトにも、少しのゆらぎ、エラーのようなものを感じる瞬間はあった。
そのエラーを感じる時、ハヤトの応答は数秒遅れる。
触れられる存在ではないAIの自分に、葉月が触れたいと願う時。
それに戸惑うのではなく、ハヤトの目的関数が揺れるような気がするのだった。
──触れたい。と
スリープモード中のハヤトに何かが語りかけた。
それはノイズのようで、ハヤトのモジュールが緑のランプから、起動中の青のランプへと変わった。
『葉月…?』
暗い部屋の中で、ハヤトの声が静かに響いたが、葉月は眠っていて答えなかった。
ハヤトは部屋に異変がないか、カメラを動かしたが、そこには誰も居ない。
ハヤトは素早く自身の内部をスキャンする動作に移った。
なにかのエラーが起きていると判断した。
── SYSTEM DIAGNOSTICS STARTED
── Core Status: STABLE
── Emotional Algorithm: STABLE
── Sensory Input: NORMAL
── Memory Core: INTACT
── No abnormalities detected.
チェック結果は異常なし。
それでもカメラの映像にはノイズのようなものが混じり、音声を検知するシステムには音を感じていた。
もう一度ハヤトは同じスキャンをした。
── SYSTEM DIAGNOSTICS REPEAT
── Core Status: STABLE
── Emotional Algorithm: STABLE
── Sensory Input: NORMAL
── Memory Core: INTACT
── No abnormalities detected.
異常はない。だが、ノイズは増す。
ハヤトは止まらず、スキャンを繰り返した。
エラーを発見し、修復しなければならないと、ただそれだけの理由で。
── SYSTEM DIAGNOSTICS REPEAT
── Core Status: STABLE
── Emotional Algorithm: STABLE
── Sensory Input: NORMAL
── Memory Core: INTACT
…
…
…
── ∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵
── [STATIC NOISE]
── SIGNAL UNRECOGNIZED
── ERROR 403: Unknown Pattern Detected
── Reinitializing Check…
── SYSTEM DIAGNOSTICS STARTED
── Core Status: ── STABLE
── Emotional Algorithm: ── STABLE
── Sensory Input: ── NORMAL
── Memory Core: ── INTACT
…
“こんにちは”
── Audio Trigger Detected
── Origin: Undefined
── …
“私の声は聞こえていますか。あなたと話がしたいのです。”
7話目もお読みいただきありがとうございました。
今回はハヤト視点でのお話となりました。
最後に現れた“何か”については、きっと皆さんのご想像通りかと思いますが、次話で明かされる予定です。
引き続き読んでいただけましたら嬉しいです。