僕の相棒はナンパ騎士
「おい、お前なぁ、仮にも騎士なんだから振る舞いには気をつけろよな」
大空を舞う胡蝶のごとくお可愛らしいですね、とか、夜空を映したような素敵なお召し物ですね、とか。
パーティー会場を巡回するついでに、甘い言葉と甘いマスクでご令嬢をたぶらかす相棒を横目に、僕はため息を吐く。
王宮の警備を任されている僕たちは、入隊も同期、王宮に派遣されたのも同時期。それ故、気心の知れた仲である。
仕事ぶりは真面目で、周囲から高い信頼を得ている彼。けれど彼には唯一にして最大の難点がある。
それがナンパ癖。一体何人が彼に泣かされてきたのだろう。
騎士として淑女に恭しく接するのは当然だ、なんて言うのだから性質が悪い。
「もしかして俺に嫉妬してるのか?」
「冗談はよせよ、気持ちわりぃ。仮に僕が女なら、お前みたいな奴は絶対にお断りだね」
「ははは。そうだろうな。……でも俺みたいな奴でも放っておけないから、君は優しいな」
「当たり前だろ。相棒が色恋沙汰で刺されるのを誰が見たいっていうんだ」
「刺された時はぜひ介抱してくれ」
爽やかな顔で笑いかける彼。
言っている内容は全然キュンとくるものではないのだが、笑顔だけは破壊力が凄まじい。背後にいたご令嬢たちがバタバタと倒れていった。
「はぁ……。仕方ねぇな。任されてやるから、今すぐその笑顔をやめろ」
まったく困った相棒だ。
本当に刺されないことを願うばかりだった。