オーレイローラ号の船首
私は、取調室で丸裸にされて。
拷問官に、反旗を翻した。
「お前は、何処から入ってきた。正直に白状しろ」
私の目の前にいる男は、イヴァンで。
「ですから、何度も言ってますよね。猿の森から来ました。私にとって、猿は雑魚なのです」
こいつが、納得する答えを出さない限り。この魔法が封印された。取調室からは出られない。
「お前は、この部屋に入った時に。直ぐに気付いたよな。魔法が封印されているって。魔法使いなんだろって。聞いたら。違うとも、答えている。女性が1人で、猿の森を抜けられるはずがない」
過去に、兵士を5000人送り込んで。あの別荘を作ったらしい。
負傷した兵を、休憩所で手当をしながら。大量の死を看取り。バヤナルト侯爵家の避難所が、完成している。
「おい。まだ、話は終わっていないんだぞ。私が、納得しない限り。永遠」
『コンコン』
イヴァンの後ろのドアを、誰かがノックした。
筆記係が、立ち上がり。何も語らずに。ドアを開けた。
イヴァンは、振り向き。驚いた。
「誰だ、オリスを呼んだのは。何かの間違いでは無いのか」
ドアの外を守る兵が、オリスを中に入れて。
「その女は、秘密の地下通路を知ってしまったから。『生きて返すな』と、のことです」
オリスは、右手に道具箱を下げて。
椅子に座るイヴァンを、見下すように余裕の表情を浮かべて。道具を、机の上に置いた。
「おい。なるべく、苦しまないように、殺させてやるから。正直に話せ」
私の発光は、通常運転で。動揺せずに。冷静だった。拷問を受けたい訳では無い。
それに、罠だったとしても。魔法が使えない限り。私を、武力で殺せるのか。猿にも劣る人間が。
「何度も言ってますよね。私は、真理子と言います。猿は、私にとって雑魚でしか無く。たまたま、森を歩いていて。封印された、土地を見つけたの。何回目の説明になるのかしら」
オリスは、オモチャ箱から。ハンマーを取り出して。右手で持ち。左の手の平に、軽く振り下ろしている。
「ゴメン。手が滑った」
喋った。と思ったら。ハンマーを、思いっきり私の右手の甲に、振り下ろした。
私の手を通り。運動エネルギーは、机にダメージを与えて。3回バウンドした。
オリスは、興奮しながら。大きな私の、グローブを捲り。人では無いことを知った。
ハンマーを、オモチャ箱に戻して。ナイフを取り出した。
「それは、聖剣の類かしら。鉄で、私を傷付けるおつもりですか」
オリスは、少し怯んで。イヴァン方を、一度見たが。逃げる訳にも、行かなかった。
イヴァンは、目を背け。
筆記係は、指の間から覗いた。
しかし、私は無抵抗のまま。オリスに、任せた。
私の服は、またボロボロになり。
あられもない姿を晒し。
白く透き通る肌は、たまに発光して。反対の壁を歪んで見せた。
「お前は、何者だ。何が目的だ」
イヴァンは、席を立ち。間に机と椅子で距離を保ち。剣を抜いた。筆記係も、鳥の羽根を降ろし。立ち上がり。構えた。
「これも、何度も説明しましたよ。私を、倒したいのなら。聖剣の類を、持って来いと。鉄で、私は、討てません」
私は、オリスの左手の小指を握り。
(この時点で、骨が飛び出している)
2回ほど、私の手首の方から回転させて。
オリスの小指を、ネジ切れる。手前まで、ダメージを、与えた。
「私は、回復魔法を持っています。数十回かけたら、こいつの小指を治すことは、可能なはずだ。魔法封印を解け。これが、条件だ」
真理子は、オリスの指を離し。
椅子を、少し引いて。腕を胸の下で組み。胸を持ち上げ。木の椅子の背もたれごと、背中を倒して。長い足を組み陰部隠し。片足でバランスを取った。
「私が、本気を出したら。5日でこの街を、更地に出来るぞ。それと、何時まで私を、裸で放置するつもりだ。バヤナルトの兵は、レディの扱いも知らないのか」
オリスが、ドアに走り出し。私は、右手を触手に変えて。引き戻した。
「お前の仕事だから、仕方ないが。逃げるのは、少し卑怯だろ。責任を持て」
私は、オリスの左手を握り。少し捻った。
「今度は、左手を貰おうか。気絶するなよ」
オリスは、私に対して。恐怖を感じ。漏らした。
「汚いね。嬉ションするなんて。恥ずかしい駄犬だ」
「分かった。要望は聞く。だが、この部屋の封印は解けない。理解して欲しい。部屋を変えて話をしよう」
イヴァンが、私のテーブルに付いた。
地上に出で、光の指す部屋に着いた。
給仕室に移動され。オリスは、教会に運ばれた。
私は、6人の侍女に囲まれて、ドレスを着ている。
イヴァンは、オーレイローラ号の航海日誌を持ち。バヤナルトの執事の元を目指していた。
航海日誌の最後の主人公。マドナグラの最後の姫。は、この城にいて、今も生きている。
映画や物語のその後が、この城に有った。
私は、興奮を覚えた。が……。
ドレスが決まらない。
胸に合わすと、丈が合わず。
丈に合わすと、胸が合わず。
私の作り込みは、完璧で。
1日かけた甲斐はある。
結局、どれも入らず。大きなメイド服を着た。
イヴァンが、戻って来て。執事が会うと決めたらしい。
「お顔を隠す物が、小さな扇子しかございません」
ん゙ん゙。小さな扇子で、隠れるでおぢゃるよ。
失礼で、おぢゃるよ。と思ったが。
「ここの10人で、警備をして。誰にも合わなければ良いのであろうも」
私は、廊下をスタスタ歩き。イヴァンが先導して、誰にも会わずに。執務室にたどり着いた。
「これでも、私は忙しい身だ。手短に頼む」
ビニガーは、粋な机に。書類や手紙を、置いて。
オーレイローラ号の航海日誌に、目を通していた。
「オーレイローラ号を、ご覧になった事はお有りですか」
私は、最初のプレゼントを出した。
オーレイローラ号の船首だ。
「おい、誰か。この船首を、マリア様の侍女長の部屋まで運べ。マリア様のテラスに、降ろして良いか確認を取れ」
ビニガーは、席を立ち。船首を近くで確認して。
53年前に、マリア様を運んで来た。オーレイローラ号の船首と気付いた。
「言い値で買い取ろう。幾らだ」
私も、お金に換えられない物を要求した。
「私は、見ての通り人では御座いません。簡単に、町に入る事もママなりません。そこで、1枚のプレートを頂きたいのです。お金なら、マドナグラの金貨や宝飾品もございます」
私は、オーレイローラ号の戦利品を、ローテーブルに並べて。ひけらかした。