ブルーダイヤのネックレス
真理子の計画が始まった。サハンナー国の壊滅。
バヤナルトは、被害者でなくてはならない。マーリンの餌に、サハンナーの貴族たちが、騙された。
私が、マドナグラの道を歩いていると、メイド姿の二人に止められた。
「マーリンさん。お探しましたよ。真理子様が、バヤナルトでお待ちです。お帰りの支度を、お願いします」
振り返ると、ソサルジとサバガヌが、私に向かって頭を下げた。
「なぜ、ここがバレた」
「最近、カノタマーのビンテージを、仕入れましたよね。そこを辿りました」
ソサルジは、手に隠したカンペを読みながら。頭を、上下に動かした。
「観念して下さい。今なら、真理子様は、お許しになると思います」
サバガヌは、オーバーアクションをして。セリフを吐いた。
「さぁ、真理子様がお待ちです」
「バヤナルトへ、お戻りください」
私は、抵抗せず。そのまま、2人に捕まり。チャーター船に乗せられた。
これは、マドナグラの半分の人間が見ている。
港の人間は勿論。マーリンが、指名手配されていると、噂が流れていて。見送られる感じではないが。心配そうに、見送られた。
この時の私は、罪人のように見られていた。
この噂は、サハンナーでも流れた。ビンテージワインを求めていた貴族たちには、ショックが大きかった。
「何でもっと、取り寄せなかったんだ。いくら有っても、問題だろ」
「倉庫を満たすだけの量を、確保しなさい。何年この屋敷に勤めているの」
「マーリンを、探し出しなさい。それまでは、屋敷の敷居を跨ぐな」
商人たちは、それぞれの主人に、マーリン捜索を指示された。
サハンナーの国は、広大な山々に囲まれている、大きな島で、出入り口は、マドラグナのみ。
真っ白な、石材が豊富に採れて、まだまだ、尽きる事の無い資源だった。
出入り口を、マドラグナによって、支配されていると、55年前の商人たちが、サハンナー国の王様に吹き込み。
マドラグナ13世を、亡き者にして。
旧マドラグナ政府を破壊した。
私は、ソサルジが舵を取る船の中で、真理子に戻り。バヤナルトへ飛んだ。
別荘では、戦闘の準備を始めていて。ヴァイツ用の、荷車が完成していて。4頭引きと、2頭引きがある。
最後の最後。ギリギリで使う予定。
キースは、私の言う事も聞かない為に、ソロとして数えられた。
全てが、身重のメスと子供たちの為に、作られたものだ。
そんなに、目立ちもしないが。サーシャが、お酒を絶った。
それだけで、私にとっては十分な答えだった。
デナガリの住人とも話し。水夫や商人たちとも話した。
バヤナルトの宿泊施設を、開放するとも話し。
何が起こるか分からないとも、伝えた。
準備だけは、余念がなく。
デナガリの人々とは、密に話した。
1週間後、私は、マドナグラへ戻っていた。
商人としてではなく。別れと、謝罪をするためだった。
港の真ん中に、マドナグラの人を少し集めて、サヨナラを言った。
「皆さん、有難うございました。マドナグラは、最高の街です。これから、もっと、もっと、発展するはずです。折れずに、頑張ってください」
頭を下げて、8秒ほど、止まった。
グチャグチャな涙顔を晒して。皆が、近付いて来そうな時に。ジョルジュに、咥えられた。
「ありがとう。ジョルジュ、いいタイミングだったよ」
ジョルジュの頭を撫でて、サハンナーへと向かった。
「ですから、ビンテージワインは、私の手元には有りません。全て、真理子・バヤナルト侯爵様に、奪われました」
私の胸元には、大きな、ブルーダイヤモンドのネックレスが輝き。
私が、頭を下げる度に。ネックレスが、空中に浮く。
「そんな、安物の為に、私のビンテージワインを、売り払ったのか。買い戻してこい、そんなダイヤモンドよりも、大きな物をくれてやる」
「そうではございません。これはこれ、それはそれです。ネックレスとは、関係ございません」
「しつこいぞ、帰れ。お前には、失望した。ここへ戻って来る気なら、ビンテージワインを、捧げろ。良いな」
「それが無理になったので、別れを伝えに参りました。お体を、大切になされてください。失礼いたします」
最後にまた、ブルーダイヤモンドを、ブラブラさせて、相手の注目を引いた。
「これは、違います。バヤナルトの特産品です」
「ブルーダイヤは、真理子様が、管理されてます」
「沢山、取れるみたいですよ。ダイヤモンドが」
私は、サハンナーの貴族つを焚き付けた。
これで、引っかからなかったら、すべてが水の泡になるし、時間もない。
私は、ジョルジュのヨダレと格闘しながら、煽るのを終えた。
マドナグラの港に着くと、チャーター船に乗り込み。マドナグラの港を、後にした。
「おい。何処でもいいから、ビンテージワインを取り寄せろ。怒りで、普通のワインが、不味く感じる」
「何方か。至急、真理子・バヤナルトなる人物を探せ。ビンテージワインの交渉をしてこい」
「ブルーダイヤモンドの、情報を集めろ。兵の準備は出来ているな」
「これは、戦争だ。マーリンを、バヤナルトに奪われた。バヤナルトが悪だ。討ち滅ぼせ」
ヒヤロワーロ伯爵が、指揮を取り。1万5000の兵士が、マドナグラに向けて進軍を開始した。
「良いか、港に着いたら。先ず、船を奪い。荷物を下ろせ。乗れるだけの人数を乗せて、デナガリ港へ向けて、次々に出立しろ」
「「「「オー」」」」
マドナグラ港は、そんな事を知らされてなかった。
八割方、サハンナーの国の荷物だが。
サハンナーの貴族や兵士たちは、貿易の事を考えてなかった。
進軍して、バヤナルトの領土を奪い。ビンテージワインと、ブルーダイヤモンドを、奪う事に、心血を注がれている。
「退け、退け、この船は、サハンナー国のヒヤロワーロ伯爵が、貰い受ける。荷物を降ろしたら、船から離れよ」
一舟に、無理やり1000人の人を乗せて。出鱈目な航海術で、外海へ出た。
地図も読めず、星も読めない。私が、船底を支えて、デナガリまでを誘導した。
幾つかの船は、デナガリとマドナグラの間を、何回も往復して。最後の方は、船を持ち上げて、デナガリ港へと運んだ。
デナガリ港は、もぬけの殻で。
『壊さないで下さい』と、丁寧に、札が幾つも掛かっていた。
時間切れのタイミングで、私は、マーリンになり、デナガリ港へと現れた。
「皆さんは、間違っています。帰って下さい。危険ですよ。真理子様は、とても良い人ですが。怖い人でもあります」
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