嵐に来た男
ボラガスは、マグロを寄越せと無理難題を、要求してくる。ビンテージワインを、少しずつだが、値上げをした。
風が強く大雨の日に、ボラガスが、懲りずにやって来た。
「助けてください、お願いします。マーリンさん」
馬車を、走らせてきたのだろうか、綺麗な服に大量の泥が跳ねている。
馬車を降りて、私の足元で膝をつき、頭をぬかるんだ地面にめり込ませた。
今日のボラガスは、いつもと違い、切羽詰まっているようすだ。
「どうされましたか。ボトルワインの催促ですか」
コイツは、ヒヤロワーロ伯爵と言う、貴族の使いっ走りだ。
問題なのは、ヒヤロワーロ伯爵その者なのだろう。
「ワインもなのですが、マグロをお願いできませんか。1匹で構いません。この通りです。お金なら、私が立て替えますから、お願いします」
「無理です」
断ることも大事だ。貴族たちのご用聞きって、大変だとは思うけど。こいつを助けたいとは思わない。即答で返した。
「このシケで、船を出すやつは、アホか自殺願望があるヤツだけだぞ。私は、アホじゃないから行かないが」
「だから、こうして頭を下げている。何とかしろ」
「無理だろ。諦めも大事だぞ」
「そこを何とか、お願いしますよ」
「どう見ても無理だろ。このシケでは、舟は出ない。諦めろ」
私は、少し考えたて。
「どうしても欲しいなら、自分で取って来い。船なら、拾い物のヨットを、金貨5枚で貸すぞ」
「何で、金貨5枚もする。ボッタクリでは無いか」
「確実に、海の藻屑と代わる。勿体ないからな。それに、ボラガスさんのやる気を、見たかっただけです。ここで、金貨5枚を出すなら、助け舟を出そうかと、考えただけです」
「それは、有るのか。有るのだな、マグロは」
「無い訳では無い。ただ、他所の貴族様が、注文された品だ。つまり、誰かの食卓から奪う訳だが。いくら出せる」
「10枚、いや15枚出す。そのマグロを私によこせ」
「分かりました。17枚で、宜しくお願いします。ワインは、どうなさいますか」
「貰うに決まっているだろ。ヒヤロワーロ伯爵様だぞ。ほら、金貨7枚」
「違います。金貨9枚です。皆さんが、求めてまして。値上がりしてます。合計が、26枚になりますが、諦めますか」
「オラッちの足元ばかり見て。そのうち、死神が現れて、地獄に落ちるぞ」
「どうなさいますか。諦めてくれると、コチラも助かります」
「貰うに決まっているだろ。17、18、19、20だ。6枚は、後だ。次に払ってやる」
私は、大きなメッセンジャーバッグから、羊皮紙を一舞い取り出して。
『借用書』と大きく書き。
金貨6枚と銀貨1枚、マーリンから借りました。
「ボラガスさん。サインを頂けますか」
「銀貨1枚は何だ」
「羊皮紙代です。ご不満ですか」
「分かった。分かったから、マグロとワインをよこせ」
「サインが、先です」
「こう見えても、商人だ。サインはする。持って来い」
「では、倉庫の方へ行きましょうか」
私は、倉庫へ入り。いつもの荷車に、凍らせたマグロを乗せて、50年物のボトルワインを添えた。
倉庫から、荷車を引きながら出てくると。
ボラガスは、マグロの状態を確かめた。
無駄な事だ。分厚い氷に、覆われているのだから。確認は無意味なんだよ。
文句を付けたいだろうがな。
「ボラガスさん。サインの方をお願いします」
ボラガスは、しぶしぶサインをして。荷車から馬車に荷物を移動させた。
馬車を固定して、ロープと滑車を使い。馬が、マグロを引き上げた。
「次からは、事前に連絡してくださいね」
「知るか、ヒヤロワーロ伯爵の腹に、聞けるわけ無いだろ」
大雨の中、馬はサハンナーへ向けて走り出した。
あれから2週間も経たずに、ボラガスは、性懲りもなく現れた。
「おい、1週間後に、マグロを3匹用意しろ」
「無茶ですよ、3匹なんて。一匹上がるかどうかですよ。この時期は」
「それよりも、私に、支払いが残っていますよね。金貨7枚、耳そろえて払ってください」
「6枚だろ。待ってろ、今払う」
「先に払ってから、交渉するものですよね。普通の大人なら」
「うるさい。払ったんだから、借用書を出せ。羊皮紙を、無駄遣いして。地獄に落ちろ」
私が、メッセンジャーバッグから、金貨6枚の借用書を、取り出すと。
ボラガスは、また奪い取り。確認もしないで、自分のバックにしまった。
「これで貸し借りは、無しだ。1週間後に、マグロを3匹用意しろ。金貨は20枚だ」
「無理ですよ、私一人では。皆さんの、サポートが必要です」
「お前が、皆を納得させろ。出来ないとは、言わせないぞ。期限は、1週間後だ。分かったな」
ボラガスは、馬車に乗り、サハンナーへと帰った。
「これは、これは、サガマーラ様。本日は、良い海老とウニが入っております。いかがでしたか、前回お渡しした、ビンテージのワイン。サハンナーの王様には、お気に召していただけましたか」
「あぁ、城のシェフも、王様と后は、気に入っていたぞ。ウニのソースが美味いと、褒めておられた。今日は、ウニとエビの両方頂こう。そして、50年モノを、大樽で頼む」
「はい、喜んで。毎度ありがとうございます。お届けは、サハンナーのお城で宜しかったですか」
「いつものように、城に頼む。もう、シェフには伝えたあるから、今ごろ、首を長くしているはずだ」
「分かりました。すぐにお届けしていますので。サガマーラ様、失礼します」
私は、倉庫へと走り。一度、真っ暗な倉庫へと入った。
倉庫に、10分程滞在して、外へ出る。
辺りを、見渡して。サガマーラの方を、見つめると。
サガマーラは、柱の陰に隠れた。
その好きに、クルウジーを取り出して、空へと飛んだ。
そこからは、クルウジーを使い、サハンナーの城の裏へ。
私は、サハンナーのお城の裏庭に降り立った。
お城の調理場の戸を叩き、料理長のバルケアさんを、呼び出した。
「いつも済まないね、マーリンちゃん」
「問題ありません。暇ですから」
「それでは、いつものように、お願いしようかな」
「はい。行きますよ」
私は、バルケアさんが準備した、荷車の一つに、海老を入れた。
勿論、アイテムボックスから直に乗せた。
あっと言う間に、荷車いっぱいの海老が、入った。
「次は、ウニですね」
同様に、違う荷車に、大量のウニを乗せた。
ワイン樽は、そのまま地面に置いて、スポイトを使い、テイスティングさせた。
「問題ない。いつものワインだ」
「有難うございます」
「金貨200枚です。確認を、お願いします」
「確かに、金貨200枚。いつもの様に、倉庫へ入れて、氷を足しておきますね」
「悪いな。手が離せないんだ」
「了解です。お仕事、頑張ってください」
ウニと海老を、城の倉庫に収めて。その後は、氷を敷き詰めた。
ワインは、別へ運び。宝物庫の横の倉庫に並べた。
サハンナーのお城で、仕事を終えてマドナグラへ戻ると、事件が起きていた。
「マーリンちゃん。女の人2人が、マーリンちゃんの事を、探していたよ。逃げないで、大丈夫かい」
ふくよかな、屋台のおばちゃんが、内緒で私に、話しかけた。
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