商人ボラガス
サハンナーの商人、ボラガスに騙されて。50年物のボトルワインを、ヒヤロワーロ伯爵に取られた。
私は、商品を水夫たちに運ばせて、荷車に乗せるように指示していて、邪魔なボラガスを無視していた。
「少しくらい、話を聞いて下さいよ」
細身の中年で、身なりはしっかりしているが、マーリンのような小娘に。最初から、ゴマをすり、持ち上げるように、話をしてきた。
「商才が、お有りのようですね。皆が、マーリンさん、マーリンさんと、口を揃えて、言っていますよ。マーリンさんのお陰で、活気が戻りつつあると」
私は、顔や体は動かさずに、目だけを左へ右へと向けて。
『上々の評価だ』
口角が上がり、満足している。
「有難うございます。残りの銀貨一枚です」
腰にぶら下がった、巾着から銀貨を1枚渡して。荷車の持ち手部分の中に入り、少し持ち上げて、ゆっくりとスタートした。
船着場のゲートを潜り、街へと入った。
左右に、ボロい屋台が並び。日が傾く前だが。サハンナーの商人が、街を出る前に、一杯引っ掛けている。
「マーリンさん。マーリンさん」
「何処まで、ついて来る気ですか。こう見えても、私女の子なんですけど、ストーカーですか」
「違いますよ。ハーラージ爺さんが釣り上げた、マグロの行方を、知りたいだけなんだよ。少しでも残っているんだったら、オラッちに分けて欲しいんだけど」
「有りません。いつの話を、なさっているのですか。あのような美味しいモノが、1週間以上手元にあるとお思いですか。使用人さんなのに、お花畑ですね」
荷車を下に降ろし。右手を腰に手を当てて傾き、下から見上げるように。
「この度、良いビンテージのワインを仕入れましたので、向こうのご家庭に、魚を丸々一本、置いてきました。満足されましたか」
私は、固まるボラガスを捨てて。荷車を引きは始めた。
「違う。違う。マグロ1本いくらするが知っているのか。それを、ヤスヤスと置いてくるとは、マーリン様も、大した商人では有りませんね」
「マグロ1本幾らするんだ。50年物のカノタマー産のワイン70樽を、仕入れられる金額か」
流石は商人。計算は速いようだ。
「何処で仕入れた、本物のカノタマー産の50年物なのか。証拠はあるのか」
「証拠など、何処にも有りません。飲んだ貴族の方々が、仰るのです。グラス一杯、金貨1枚払っても良いと」
「そんなに美味いのか。そのワインは」
「私は、口を付けてません。売り物ですから」
歩いている私その後ろを、しつこく付いてくる。
「いつまで、付いてくるつもりですか」
「マグロが、手に入るまでだよ」
「漁師の方々に、お頼みしたら、宜しいじゃありませんか」
「嫌なんだよ。アイツラが」
「分かりました。支度して、4日後に1本釣って参りますから、4日後にお越しください」
私は、倉庫に入り。荷車をしまった。
次に、氷を大量に作り出して、倉庫一面を覆った。両手を叩き。
『こんなもんかな』
我ながら、立派な氷の壁を作った。
倉庫を出ると、ボラガスは、私が出てくるのを待っていた。
『4日後に、来てやってもいいが、お前が逃げるかも知れない。逃げない保証を、差し出せ」
私は、無言で倉庫に入り、1本のワインボトルを、差し出した。
間違いなく、50年物のカノタマー産のワインだ。
「金貨、5、6枚分の価値はある。4日後、返してもらうからな、中身をすり替えるなよ」
私は、ボロい船に乗り込み。止める皆の意見を無視して、沖へと向かった。
翌朝から、大シケになり。皆は、私の心配して。ボラガスは、ワインボトルを手に、サハンナーへと急いだ。
私は、皆の心配を余所に。潜水艦とフーブハイムの処理を行っていた。
フーブハイムの荷物と、私から盗んだ船と財宝が、辺り一面に散らかり。
金貨や銀貨の袋は、まとめられていた。
次の仕事は、カイチュウに合う事だった。
ドラゴンの足を出して、ロングコートと膝上ブーツが欲しいと催促して。
見様見真似で作った、ファスナーをカイチュウに渡した。
「ベヒーモスの件もあるから、お代は取らないけど。ドラゴンの革が余ったら、カバンとか作っていいの」
「ええ。好きにして構わないわよ。もう1本の足があるから」
カイチュウの庭を手入れしている、屈強な男たちが、目を丸くしている。
別荘では、リュウミーとケビンの立場が、逆転している。
ケビンの方が逃げて。リュウミーが、ケビンを追いかけている。
今は、放って置くしか無い。時間が無い。
私は、フーブハイムのヨットを使い、マドナグラの漁港にたどり着いた。
「駄目でした。2日目の朝から、大シケで。舟が壊れてしまい。近くに有ったこの舟で、どうにか戻って来る事が出来ました。最後に、大きなマグロを釣りましたよ」
ハーラージ爺さんが捕まえた、マグロを見せつけて。皆に、ヨットから運んでもらった。
それから、2日が経ち。サハンナーから、ボラガスが、やって来た。
「さぁ、私のワインを返して下さい」
「無い。ヒヤロワーロ伯爵に、献上した。喜べ、気に入っても貰えたぞ。お前。良くやった。褒美を取らす」
ボラガスは、金貨3枚を地面に捨てた。
「喜べ。金貨3枚にしてやったぞ」
私は、手加減をして、ボラガスを押した。
もう一度言う。押した。
6m程、後ろに飛び。ボラガスは、気を失っている。
私は、ボラガスの身包みを全て剥ぎ、3日間、マドナグラの港の門に吊るした。
金貨は、馬車の車輪から出てきたので、多めの15枚を盗んだ。
「反省したか、ボラガス」
「早く降ろせ、馬鹿力女」
「後1日、反省するか、オジサン」
「分かった。反省したから、降ろしてください」
私は、水夫にお願いして。地面に下ろしてもらった。
この時も、銀貨を1枚支払っている。
「覚えてろよ」
雑魚のセリフを吐いて、ボラガスは、馬車に乗り消えたが。
4日後に、戻って来た。
「ヒヤロワーロ伯爵様が、お前が持っているワインを望んでいる。金貨、5枚をお渡しするから、早く持ってこい」
全然反省している様子はないが、これも作戦なんで、好きにさせた。
「こちらのワインは、1本7枚に跳ね上がりました。ビンテージワインな物で、皆が欲しがっているのですよ」
「どいつもこいつも、私の足元ばかりを見て。その内、罰が当たるぞ」
「その内、足元掬われますよ」
「金貨7枚な、さぁよこせ」
「はい、こちらがお求めになった物です。ご確認下さい」
「分かる理由無いだろ。ヒヤロワーロ伯爵様が、味わうのだから」
私が、両手で差し出したワインボトルを、片手で奪い取り。
急いで、馬車に乗り込んだ。
「忙しいんだよ。オラッちは」
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