マドナグラ港
私のマリーンとしての、冒険が始まったのだが。
最初から、無理難題がのしかかる。
港以外は、スラム化が進み。ストリートの子供たちは、さらに奥へと追いやられている。
私は、水夫に銀貨に枚を渡して、荷車とカノタマーワイン樽3つを下ろしてもらった。
貿易が少なくなったとは言え、入港する時も、現在も、外に船が停泊していて。荷降ろしを、持っている状態だ。
細い水夫たちが、奴隷のように働かされているのが現状のようだ。
私は、炎のナイフを常に構えて、怖がりながらも、銀貨2枚を水夫たちに支払った。
残りは、厄介そうな商人たちだが。
「お嬢ちゃん、この港を出るには、銀貨5枚が必要だ。断るなら船に戻って貰おうかな」
身なりの良い水夫が、港の出口で絡んできた。
「何故ですか。マドナグラ港から、出るのに銀貨が5枚必要なんですか」
「ああ、この街は貧しくてな。再建するのに金がかかるんだ。悪いな、お嬢ちゃん」
私の横を、商人たちの馬車が素通りしている。
「アレには、税金をかけないのか」
「あの商人たちは、サハンナー国の御用聞きだ。この港も、サハンナー国が管理をしている。さっさと、銀貨5枚を差し出して、野垂れ死ね」
私が、巾着袋で銀貨を探していると。水夫に暴言を吐かれた。
『ムッ』っとしたが、ここで暴れたら。3日間船底で耐えた意味がない。
飛行したら、半日も経たずに往復はできる。
普通の冒険者である、マリーンが必要なのだ。
マリーンが、この町を再建して。マリア・マドナグラの孫を名乗らないといけない。
私は、マリーンをマドナグラの王にするべく、普通の人を演じなくてはならなかった。
「こちらで、お願いします」
1枚ずつ、グラナリアの銀貨を取り出して。水夫に支払った。
「毎度あり、帰りも支払えよ」
『野垂れ死ね』と言ったり。『帰りも支払え』と言ったり。人の生死に、興味がないようだった。
水夫は、私から金貨を奪い取ると、荷下ろしを辞めて。町中に消えた。
私も、荷車を少しずつ動かして、町中を散策した。
娼館がやたら止めに入り、奥には、スラムが広がる。
石で出来た家は、崩れること無く。木々の部分から朽ち果てて行く。
倒壊した建物も有れば、まともな家に、人々は寄り添い。ストリートチルドレンは、奥へ奥へと追いやられている。
「おい、こんな所まで出てくんな。目障りだ」
まだ幼い少女は、銀貨5枚の水夫に蹴られ。
湿気の多い路地裏で、倒された。
「ごめんなさい。許してください」
「けっ。奥で物乞いでもしてろ」
私は、一瞬であの日に戻った。
社畜時代。違う、カルトの集団の一員だった頃。
心臓の音が高鳴り。いつの間にか、マリーンからいつもの姿に戻っていた。
私は、急いで空中へ飛び。荷車をその場に残した。
初めて、湧き上がってくる怒りを覚えて。『クルウジー』を、手にしていた。
『ソニック』
私は、路地でソニックウェーブを起こし。
音速で、水夫を捕まえた後。雲の上に到達した。
「助けて下さい。落とさないで」
眼下には、大海原が広がり。水夫、前人未到の地に、いることを知った。
「問題無い。マドナグラの住人を殺したりはしない。安心しろ」
水夫の股間は、ダダ漏れだった。
「汚ねぇな、やっぱり殺すか」
私の理性は、まだ残っていた。
水夫を、地上に戻し。身包みを剝いだ。
水の入った樽を残して、水夫ごと封印した。
「3日間、反省しろ。悔い改めたら外に出してやる」
私は、大通りの端に、水夫を残して。立ち去った。
水夫は、恐怖からか、その場にへたり込み。生きていたことに感謝をした。
私は、急いで荷車の所へと戻り、少女を探した。
少女は、蹴られた足を引きずりながら、路地裏の奥へ奥へと入って行く。
私は、娼館や道端の老人を横目に、少女の後を追いかけた。
少女は、崩れかけの家に入り。私も、扉のない家へ入った。
一階の床は抜けて、湿気が乾かない濡れた土の上を歩き、軋む階段を登った。
『ギィー、ギィー』
「誰か来た」
2階から、複数の声が、ザワザワと聞こえて。
子供たちは、襲撃をせず。怯えて暮らしていた。
半数が病気やケガを抱えていて。ガリガリに痩せこけ。横になったまま、動けない者までいた。
数人が咳を続け、光と風は入る部屋だが。カビ臭さが残り、雨が降ったら、しのげそうもない。
「これで、全員か」
私が尋ねると。年上の青年が出て、僅かばかりの銅貨を差し出した。
「今は、コレしかありません。お許しください」
私は、マリーンの姿のまま、涙を流していた。
コレは、マリアの記憶によるものなのか。私の感情によるものなのかは、分からなかったが。
飲水の樽を出して、パンを配った。
パンを配りながら、治癒魔法をかけて。病気や怪我を治した。
アイテムボックスから、適当に食料を出して。
「料理の出来る大人はいるか」
「この子の母親が、たまにスープを作りに来ます」
「私が作るよりも、美味しくて、安全だろう。その人に作ってもらえ。他に、子供たちだけのコミュニティは、存在するのか」
私のアイテムボックスには、戦争を起こそうとした、三万人分の食料が入っている。
飢えた町の、数日分の食料を持っている。
子供たちだけのコミュニティは、幾つも点在していて、娼館の誰かが面倒を見ているらしい。
私は、怪我や病気の子供を治して、数日分の食料を置いて、次の仕事へと向かった。
港以外に、漁港を見つけて。小さな船を海に出した。
漁村も、荒れ果てていて、使える道具も乏しく。
漁網の手入れも、怠っていたが。
使える物を取り、小さな船に運び入れた。
運び入れた船も、直ぐに海水が入り。手を入れないと、行けなかったが。
逆に、漁をしていなかったために、直ぐに大漁になった。
魚が繁殖していて。大きな魚が、近くまで来ている。
私が、大量に捉えたのは、アジだった。
銀色に輝き、舟が沈みそうなほど、大量に取れて。
私は、舟から降りて、小舟に封印をかけて。僅かに持ち上げながら、岸まで辿り着いた。
そこからは、ワイン樽の上にまな板を載せて、アジを捌き始めた。
頭を落とし、二つに開いて、腸を桶に入れた。
開いた身に、卵と小麦粉、パン粉の順番で付け足し。油に潜らせた。
頭は、素揚げにして、近寄ってきた猫に、振る舞い。
集まった猫に釣られて、サハンナー行きの商人たちが足を止めた。
アジフライとワインで、客が付き。仕事を終えた水夫が、お金を落としにやって来る。
「お嬢ちゃん、ソースと醤油は無いのか」
(はぁ~。ここに何人の異世界人を、送り込んだんだ)
「お醤油とソースを、アジフライとワインで、取引できますか」
私は、アイテムボックスからお金を出さないで。物々交換を始めた。
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