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第八話 おじさま!~超美少女はオレの事をそー呼んだ~

 

 オレは人造メイド達を引き連れ”魔女っ子ミヨちゃん”の目の前にしずかに降りた。


 映像では何度も見たがなるほど、教祖さまというより天使さまだ。


 ロシア人とのハーフ。

 堀の深い顔。緑色の瞳。白い肌。肌の露出度の高いミニスカの白いスーツ。

 そしてバンダイのおもちゃのような魔法の杖。


 こんなのに言いくるめられればオレだって信者になってたかもな?


「よくいらっしゃいました、オジサマ!」


 とミヨはなんの屈託もない笑顔で応対した。・・まぶしい!・・が


 ・・あんなデカいのぶっ放しておいて”ようこそ”はないもんだ、まぁ先に攻撃を仕掛けようとしたのはこっちだが・・


 とかなんとか思いつつも・・


「や、やぁ・・先にあいさつくらいはと思ったんだが・・コイツラがどうしてもって・・」


 オレの臆病グセが出た。オレは躊躇なく後ろのメイドたちを適当に指さした。


 戦闘メイド”アカ”が「チっ」と舌打ちをした。アイツそんな機能まであったのか?ちらりと”アオ”の方も伺ったがこちらはいつもの無表情だ。

 少し安心した。


「アナタは、ワビル2世。・・そうでしょ?」


「あ~そうだ。まぁ、つい最近なったばかりだがね?・・実はオレもまだ自身のことがよく分かってないんだ?」


 オレはおどおどと答えた。いい歳してなさけねー!


 目の前の魔法少女はオクビもなく続ける。


「ワタシ、最近妙な感覚を感じることが頻繫にあるんです。・・こうなんていうか・・たまらなく恐怖感?みたいなぁ・・」


「・・?」


 なんだ?人生相談か?ならオレが聞いて欲しい!


「たぶん、オジサマが覚醒したのはこの一ヶ月くらいの間。ちがいますか?」


 上目づかいにオレの顔を覗き込んでくる。わぁ~たまんねぇー・・


 すると背後からザワザワと多数の人の気配が襲ってくる。


「なんだアイツ」 「俺たちのミヨ様にあんなに近づきやがって」


 ざわめきの中にそうした声が聞こえてくる。


 ハッと後ろを振り返る。メイドたちのさらに後方。数百、いや、数千か?人だかり。眼下に見下ろす。

 ステージってこんな高い所なのか?いや、それどころじゃない!


「大丈夫です。彼らはワタシの魔力で制御できてますから」


 ・・やはり洗脳しているのか?・・


「ワタシ、思い出したんです。断片的になんだけど・・”ワビルの塔”で二週間ほど過ごしたこと・・」


「記憶は完全に消したはずです。ですが幸か不幸かこちらのワビル2世が目覚めたことによりあなたと共鳴してしまった。そしてアナタは”ワビルの塔”で過ごしたことを思い出してしまった・・」


 背後の自称オレの良きアドバイザー、人造メイド”アオ”が事務的に答えた。


 ・・そうだったの?オレは全く気付かんかったぁー!・・


 ミヨは臆することなくアオにも笑顔を向ける。


「そう・・アナタは”アオ”さんよね?思い出した!ワタシ、ワビル1世の後継者になれなかったんだよね?」


「ハイ、アナタは危険分子と判断されました」


「キケンブンシか?傷つくなぁ~!」


 ・・全然そんな風に見えんゾ・・


「そして何故かワタシを倒しにきた?そうでしょ?」


「ワビルの"英知の樹木"が判断したってワケ!ウチらそれに従うってワケ!」


 戦闘メイド”アカ”が挑発するように言った。


 ・・もちょっと仲良くしようよ~・・


 そしてアオの冷静な言葉が続く。


「アナタの思想は現代には合っていません。歴史の中でそれは証明されています」


「それはヒトラーやスターリンの事を言っているのかな?」


 ミヨの背後から別の女の声がした。

 長身。切れ長な目。キザな白いスーツ・・宝ジェンヌのようないいオンナ。


芳子(よしこ)ちゃん!出てきたら危ないよ!」


 ミヨがその女のすぐ横についた。

 そうか。データの中にあった。この女がミヨの後見人”中嶋芳子”か。


「我々はなにも革命を起こそうというわけではありません。これからの日本の社会に必要な体制を構築していきたいと願っています」


 彼女は静かに答えた。横でミヨがウンウンとうなづいている。


 ・・かわいい・・


 オレ、帰ろうかな・・


「ご存知か?現在日本は高齢化が進み若者の人口が減っている。そしてその若者の約三割が就労をしていない。しかしそんな彼らも場を与え彼らに合った対応をすれば発展できると証明した。現に我々は実績をあげている」


「だからと言って洗脳はどうかと思いますが?あなた方は個人の自我をうばっているのでは?」


 アオが言った。芳子は続けた。


「先の事が見えない若者たちには希望が必要だ。それには共通のシンボルがあれば分かりやすい。そのシンボルがこの”ミヨ”だ」


「ど~も~・・シンボルで~す・・」


 横でミヨが照れくさそうに手を振る。

 ずいぶん気さくな教祖さまだな。・・いい!・・


「この先日本の人口は一億を切るのは目に見えている。しかし思わないか?この小さな島国にこの人口は多すぎだ。日本は北欧の国々のように数千万の人口で運営できるようにならなければいけない」


 芳子は更に続ける。


「この団体の最終目標は政権を取りこの国を社会主義国に育て、アジアの中立国にするのが目標だ」


 この日本をスイスみたいにするのか?

 えらいスケールのデカいこって・・

 もうオレ帰っていいんじゃない?


「しかし君たちはこのことを黙っておくことはできないよね?」


 芳子はオレのすぐ後ろにいるアオに向けて言った。


「ミヨがワビルの血を受け継いでいる限り、そのチカラを間違った思想に使うのであれば我々はそれを阻止しなければいけません。ソレが巨大なチカラを持つ”ワビル”の意思です」


 アオがそれに対応した。

 ”ワビル”の意思か・・聞いてないよ!


「ならばしかたない。・・我々はキミたちを返すわけにはいかない」


 ミヨが静かに魔法の杖を構えた。そうすることが当たり前のように・・


 オレの後ろの人造メイドたちも徐々に広がり戦闘体制をととのえていく。


 どうやらお互い最初からもうそのつもりだったようだ。

 知らぬはオレだけ。オレも”ワビル”ってヤツの血に洗脳されてたってワケか?


 ・・まぁ、なったものはしょうがない・・


 そして・・オレの“最期”のバトルが始まった・・



読んでいただいてありがとうございました。

いよいよ終焉です・・たぶん・・

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