第五話 「魔女っ子ミヨちゃん」は新興宗教団体のいわゆるカリスマ教祖だった
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ある週末の夕暮れ時、そのドーム内は熱狂の渦に包み込まれていた。
かのバブル期に、とある地方都市に鳴り物入りで建設されたドームスタジアムは、バブル崩壊後あっという間に廃れてほぼ放置されていた。
片田舎の山のど真ん中にあるのだから無理もない。
ロクな宿泊施設もない。元々温泉が売りの観光名所だったのだ。
しかしそこを数年前にある宗教団体が買い取り拠点とした。
その新興宗教団体”ゴールド・パーティー”、略して”パリ金”は発足後わずか数年で急成長を遂げ今に至る。
♪魔女っ子ミヨちゃん とぉっじょー!(登場!)♪
♪くるっくるっ 目をひらぁいてー!♪
ドームの舞台では黄色のリボンとストライプであしらった純白のドレスに身を包んだツインテール美少女が、クオリティの高い楽曲に合わせ歌声を放ちながら魅惑的な見事なダンスを披露していた。
その少女は圧倒的なカリスマで目の前の数千に及ぶ信者たちを魅了していた。
わずか11歳で団体を立ち上げのべ数十万人の信者を獲得していた。
歌って踊れる教祖様。しかもその圧倒的なルックスはたちまちいわゆる”ヒキニート”たち(十代から四十代までの男女)のハートを魅了した。
信者からは”現世のシン天使”と謳われるている。
彼女の人集めは徹底していた。
まずテレビや雑誌などのメディア、マスコミにはいっさい出ない。
主にネット配信を利用しユウチューブなどの動画で人気をあつめた。
コンテンツは主にコミュニケーション能力にかけた人々に向けた巧みな戦略だった(内容は割愛します)。
彼らは当然のように無職の者たちで占めていた。
彼らに呼びかけ約数万人をこの地に集め、宿泊施設を整備しそこに住まわせ、周辺地域の主に農業、公共事業、飲食店、小売店等々へと労働力として提供した。
地域は高齢化が進み人材不足に蔓延していた。要するに若モノがいない。
そこへ彼ら日本各地から集められた人員が供給される。
彼らは基本的に大人しく純朴でマジメな者が比較的に多かった。
雇う側も高齢者が多いので、ある者は孫のように、ある者は我が子のように接してくるので人間関係は良好と言えた。
特筆すべきは団体側が機械メーカーなどに働きかけ主に土木、農業などの力作業に特化した”アシストメカ”など試作品の数々を提供させたことだ。
信者たちには学はないが、メカやコンピューター、その他デバイスなどに特化した知識を持ったモノが多数いた。
したがって新技術の開発は飛躍的に進み企業側も大満足だった。
それは圧倒的な人件費の安さも後押しした。
高学歴の人材と言えども一人前の技術者に育成するには時間と金がかかる。
信者たちは性格の隔たりはあるものの、言われたことは時間をおしまず納得のゆくまでやるので仕事がはかどるのだ。企業から派遣された技術者たちは彼らのコミュ力の乏しさには目をつむった。・・がむしろ彼らにも好都合と言えた。エンジニアという職種に携わる者たちは比較的に人付き合いを好まない傾向にある場合が多かったせいもあった。技術的な知識の交流だけでコミュニケーションとしては十分だった。
よって彼ら信者たちは日々よく働いた。瀕死の状態だった地方運営も活気がでてきた。
何より教祖である”現世のシン天使”を崇拝するという共通の想いがあった。
町中を上げて。村中を上げて。
そして教祖”魔女っ子ミヨちゃん”はそのカリスマに自身をおごることなく常に団体の調和と発展に力をそそいだ。
「今週もみなさんご苦労様でした!明日の日曜日はゆっくり休んで月曜日からまた頑張りましょう!」
”教祖”魔女っ子ミヨちゃんの歌やダンス、МCなどといった週に一度の”パリ金”の一通りのセレモニーが終了し、信者たちは満足し各々の居住区へ散らばっていく。
「ご苦労様、ミヨ。今日もよかったよ」
「芳子ちゃ~ん!」
ミヨは舞台裏で待機していた声の主にすぐさま駆けていった。
彼女は”芳子ちゃ~ん”なる人物に絡みつくと甘い声で思いっきり甘えた。
教祖様と言えど若干15歳の少女である。
「今日の晩ゴハンはなぁ~に!?寒いからビーフストロガノフ食べたいな?」
「分かったよ、ミヨ。ボクがこれから手配するからシャワー浴びて着替えておいで・・」
ミヨは芳子にウインクを飛ばすと専用の控室へと駆けていった。
いくら芳子が美人の敏腕プロデューサーと言えどロシア系の血の入ったミヨの美少女ぶりにはいつものことながら一瞬ドキっとしてしまう。
・・全く。キミは稀代に見るお姫様だよ・・
中嶋芳子。27歳。
彼女も”魔女っ子ミヨちゃん”に窮地を救われた数多いウチの一人。
数年前に出会った瞬間、彼女のカリスマ性を見出した芳子は、今後の活動をプロデュースさせて欲しいと申し出た。
芳子自身も名ユーチューバーとして名を馳せていた。
「・・アナタあのユーチューバーのおねぇさん?・・おもしろそうね?」
運のいいことにミヨに認知されていた芳子はすぐに意気投合。
教団の運営はまさに彼女の手腕によるモノといっても過言ではなかった。
♦ ♦ ♦ ♦
いいじゃないか?・・知ってたら・・若かったらオレも(教団に)入りて~
ココは”ワビル”の塔。
2週間の睡眠学習を経て見事というか残念ながら覚醒してしまい、この塔の元の持ち主”ワビル1世”の後継者”ワビル2世”を正式に名乗ることとなった。
オレは今、宿敵”魔女っ子ミヨちゃん”のデータを頭に叩き込んでいる最中だった。
「恐れ入りますがワビル2世。彼女は大変キケンです。思想の偏った大多数の集団はいずれ混乱を招きます」
人造メイド”アオ”がオレに何度目かの忠告をしてきた。
「歴史を見れば明確です。ヒトラー、ムッソリーニ、そしてオー○真理教・・」
分かったよアオ。
だからその陶酔しきった顔の”我が闘争”ポーズはヤメテくれ?
「教団はこの国の政治にもかなり関与しています」
まぁ政治と宗教はいつの時代でも絡みが深いからな。
学の乏しいオレでもそれくらいはなんとなく解る。
オレはいつものほぼ無表情顔に戻ったアオにそれとなく質問した。
「んで”魔女っ子”の団体はどこの党を推してるんだい?」
アオはすぐさま答えた。
「共産党と社会党です」