第四話 そしてメイドは「魔法少女」と戦ってほしいと言った
「それでこれからどうするんだ?」
オレはこのベッドのようなモノから完全に起き上がるとそこに腰かけた。
「アナタにはこのワビル1世の英知をを宿したこの巨木の中に2週間ほど滞在して頂きます」
建物の中のうっそうとした木々の中にひときわ太い大木が立っている。
なるほど。オレほどの典型的な中肉中背男ならば余裕で入るな。しかしどこから?
と思っていると木の幹がスーッとまるで厳かな扉でも開くように開いた。
中は暗くてよく見えんが・・なるほど。人が入れる空間と座り心地のよさそうな一人掛けソファーがある。例の”ルクルス”とかいうバケモノカラスの内部よりはよほど安心感がある。
「さぁ、さっそくお入りください。集中的にワビル様の能力をアナタの潜在能力に移植します」
「2週間か・・?オレはその間どうなるんだ?」
「体力的にも精神的にもご心配はいりませんワビル2世。睡眠学習ですので脳に直接伝達させアナタの眠っている能力に適合させるのです」
なんか内部に木の枝のようなモノが張り巡らされているがアレが伝達するパイプみたいなもんか?
「まさかアレを頭やら身体に突き刺すんじゃないだろうな?」
オレは人造メイド”アオ”に恐る恐る聞いた。
「お察しの通りでございますワビル様。ワビル1世様の魔力は宇宙いちぃ~!」
またスイッチが入りやがった。陶酔したようなたるい顔。
そのまま無垢な表情してれば一日中眺めていたいものなんだが・・
「痛くないのか?」
「大丈夫です。万全です」
「他のヤツに試したことがあるのか?」
「アナタ様が二人目でございます」
二人目だって?じゃぁ跡取りがもう一人確実にいるってことじゃぁないか?
なんでよりによってオレみたいなやつなんだ?
だいたいなんでオレたちのような存在がわかるんだ?
オレは疑念をその無表情なアオの顔にぶつけた。
「この塔からはそのはるか5000年前より魔力による電波が世界中に発信されております」
「なんだそりゃ。魔力レーダー探知機みたいなもんか?」
「そうです。その電波、つまり魔力を潜在した人物に当たるとこの受信用の樹木に反応するようになっています」
「じゃぁ、なんだ?そいつはオレの親戚みたいなものか?」
「はい。血は繋がっております。つまりワビル様、その方もアナタ様もワビル1世とほぼ同じ能力を受け継ぐ人物なのでございます」
「それじゃぁ、そのオレの親戚ってやつはここで全能力を会得して人生を満喫してるってワケかい?それなら・・」
それならオレどうでもいいじゃないか。魔法をくれるなら金をくれ。
アオはさらに続けた。
「その方、”ミヨ様”はすでに八割ほど覚醒されておりました。恐ろしく優秀な人物です」
「ミヨ?ミヨちゃん?オンナなのか」
「はい、若干十五歳の少女でございます」
「おいおいちょっと待て・・」
オレはあわてた。なんでオレみたいないい歳したヤツが今頃になって・・
なんでもっと早くに分からなかった?
いくらなんでももう遅いって・・
「実はワビル様。この塔のシステムはしばらくメンテナンスに入っておりました。なにしろ千年に一度の大規模なものです」
相変わらず人造メイド”アオ”は慇懃に答える。
「いったい何日くらいかけてやるんだ?」
「百年でございます」
しゃくねんかよ!さすがにこのオレもまだ生まれてねぇよ。
なんでも一月前から稼働し最近になってようやくそのワビル1世の世継ぎの資格を持ったモノ、すなわちこのオレともう一人オレの親戚を感知したらしい。
つまりオレはそのメンテとやらの間にこの世に生を受けて自身の力に気づくどころか目覚めることもなくこの年まで過ごしてきたらしい。
・・今更いいぜまったく。魔法なんて使い道わからんし?
「その女の子・・ミヨちゃんだっけ?若くて優秀なんだったらもオレはいいからさ・・その子に継いでもらいなよ」
「それはそうはいかないのです我が新しき主、ワビル2世よ!」
メイド”アオ”の語気がいきなり上がった。
あービックリした。
また右手を上げて”我が闘争の我が総統”ポーズでもとるんかと・・
「ミヨ様は正式な後継者になれない欠落した部分がありました」
「でも優秀なんだろ?」
「いくら優秀な方でも”能力”を正しい道に活用しなければなりません。ミヨ様はその事柄に対して突出して強く適合できない部分があったのでございます」
「と言うことはアレか?・・性格悪いのか?」
「野心が大変強くございました」
オレと同じようにこの塔に連れて来られた時のミヨはもう”魔法少女”として活躍していて最初は正義のために暗躍していたらしいが人心掌握術に長けていることに気づき人材を集めいわゆる”世界征服”を目指して秘密結社を組織しているんだとか?
最近のローティーンは怖いねぇ・・これも時代の流れか?
で、そんなヤツにこの塔のシステムとワビル一世の英知を授けるわけにはイカンと、この”知性を持った超高性能樹木サーバー”・・まぁ平たく言えばバイオコンピューターか?がコイツには継がせるなとここでの記憶を一切消して元の所へもどしたらしい。
まぁ、どんな娘か知らんが、いい迷惑だよなどっちにしろ。
「で、なんでオレが選ばれたワケ?」
オレは”アオ”に問うた。んで、ナニをさせようっていうんだ?
「アナタには正義感があります」
「マジかよ!?初耳だ!」
「アナタは気づいていないだけ。アナタの深層心理のなかには幼き日に見たあの”赤いヒーロー”の正義感が支えになっているハズです」
・・思い出した。
幼少の頃に見たあの戦隊モノのリーダー格のお兄さん。
そうだ。辛い時、たまに彼のあの熱血漢に救われたっけな・・
「そんなことまで見透かされているのか?・・まいったな・・で、その木の中に2週間ほど入ってオレが無事覚醒したらなんか使命とかあったりして?」
オレはアオに恐る恐る聞いた。
確かにオレは悔しいケド男なんだよ。
でも闘争心なんてこれっぽちももっちゃいねぇ!
見りゃわかんだろ?
まさかと思うが・・世界平和のために戦えとかぬかしたりしねぇだろうな?コイツ!
「はい。我が主。アナタはその”ミヨ”こと”魔女っ子ミヨちゃん”の世界征服の野望を阻止していただきたいのです」
・・なんてこった?
敵は”魔女っ子”かよ?
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