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Cランク魔導講師  作者: 麻倉 雀
出会い
3/3

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 授業後、祐美は由奈と学内のカフェテリアで昼食をとっていた。


「さっきの授業どう思う?」

「私はファイター志望だし、いざって時に防御結界使えると便利だからいいかな思うわ。由奈はマジシャン志望だしもう少し難しい授業にする?」

「いや、私も防御系の術苦手だしこの授業にする。課題も何だか面白そうだし。」


 先ほどの授業の評価は多くの生徒からはよくないものであった。実践魔法基礎は必修科目であり、ファイターやガンナー志望でも履修しなければならない授業ではあったが、そういった生徒にとってはあまり役に立ちそうではない授業であるにも関わらず、マジシャン志望の生徒にとっては難易度が非常に簡単なものであるが、期末課題の無詠唱での防御結界の展開の難易度は高く、その課題を達成できる要素をカリキュラムの中から見出せなかったからである。また、松井の授業を受けられることを目的にしていたものたちも多く、彼女が授業に来る機会が少なく、オリエンテーションを早々に退出したのも理由の一つである。

 その上、課題に関しても、火球は初級魔法であり、アカデミーでは最初に習う魔法である。実践でも有用性は非常に低い魔法であり、それをひたすら練習してこいと言われてもその必要性を感じられる生徒はほとんどいなかった。

 しかし、彼女たちは不思議と興味を惹かれていた。


 1週間後、祐美は2回目の授業に参加するために、演習場に来ていた。

 この1週間、祐美は彼女の真面目な性分から、空き時間をひたすら課題に費やしていた。由奈に関しては不真面目な性格であり、単純な反復練習が嫌いであったので、真面目に課題に取り組むことはないと祐美は考えていたのだが、何かが由奈の琴線に触れたようで、祐美と共に珍しく練習にせいをだしていた。

 演習場に集まった生徒はオリエンテーションに来ていた生徒に比べて半分にも満たない数であったが、授業の評価を考えるとそれでも多いように祐美は感じていた。

 授業開始のチャイムと同時に杉崎は姿を著した。


「では、授業を始めます。まずは、課題の成果を見せていただきたいので、おのおの火球を打ってください。」


 それから、生徒たちはひたすら火球を打たされていた。これが何の習得に役立つのかわからず、生徒たちは小声で口々に不安や不満を述べていた。

 そんな中、一人の男子生徒がついに不満を爆発させた。


「先生!いつまでこのようなことを続けさせるんですか?我々は火球なんてすでにマスターしていて無駄だと思うんですが!」


 祐美はその生徒のことを知らなかったが、由奈は知っているようで彼女曰く、3年次まで隣のクラスに在籍しており、魔法理論の成績はまずまずであるが、実技は優秀であるが、少し鼻につくところがあるとのことだった。


「そうですか、私にはこの教え方しかできないので別の授業を受講することをお勧めします。他のみなさんも不満があるようでしたら、どうぞ」


 杉崎がそういうと最初に不満を言った生徒に加え、多くの生徒が演習場を後にした。演習場に残った生徒は授業開始から半分以上減り、祐美と由奈を含めて、10名程度しか残っていなかった。


「10名ですか、課題をしてこなかった人たちはみんな帰ったみたいですね。さて、授業を再開します。そこの君こちらに来てもらってもよろしいですか?」


 不意に由奈が杉崎の元へ呼ばれた。


「君、名前は?」

「坂本です。」

「坂本さん。この1週間非常に良く練習したようですね。早速ですが、無詠唱で火球を発動してみてください。」

「無詠唱でですか!?やり方がわからないです。」

「大丈夫です。今までの練習を思い出して、口に出さずに心の中で詠唱をしてみてください。」


 由奈は集中すると、心の中で詠唱をすると、驚くことに火球が発動した。


「できた!」

「少し発動に時間がかかりましたが、素晴らしいです。」


 その時、授業終了を告げるチャイムが鳴った。


「時間ですか。本日はここまでとします。来週は少し座学を行いますので講義室に集合でお願いします。詳細は掲示板を確認して置いてください。」


 二人はいつも通り、授業終わりにカフェテリアに来ていた。


「さっきの魔法すごかったわね。」

「まさか、私が無詠唱で魔法発動できるなんて思わなかった。自分でもびっくりしちゃったよ。」

「Cランクだから普通の先生かと思ったけど意外とすごい人なのかもね。」

「かもね。そいえば祐美はゼミはどうするの?」


 アカデミーでは4年次からゼミに所属する必要がある。ゼミは専任講師全てが開講可能であり授業よりもより講師により内容が変わるため、4年次の授業登録を終え各講師の専門を理解した上で、5月の頭に希望を出し、ゴールデンウィークの明けた5月中頃から授業が始まる。また、ほとんどの生徒が4年次に所属したゼミを5年次も持ち越しで所属する。

 ちなみに、生徒の多くは卒業に必要な必修項目の履修を4年次の前期までに完了させ、4年次の後期はゼミとライセンス取得に必要な専門技能の履修のみを行うことが多く、5年次はゼミの授業と協会の実動部隊での実地研修に当てる。


「そろそろ決めなきゃだめよね。」

「そうだね、もうすぐ書類の提出時期だし。」

「私の魔導剣術って変わってるからなかなか難しいのよね。」


 祐美は幼い頃に両親と死別しており、祖父母に育てられた。彼女祖父は若い頃、ファイターとして協会日本支部の第1師団に所属していた。現在、アカデミー等で教えられている魔法剣術は諸刃の両手剣を使用する剣術が一般的でありのだが、彼女の祖父は刀を使用していた。そんな祖父に幼い頃から刀術を習っており、彼女の剣術はアカデミーの中でもかなり上位に位置するものであったが、ファイター志望者向けのゼミを開講している講師にも刀術を教えられる人間はいなかった。


「由奈はもう決めたの?」

「私は各務先生のゼミにしようかと思ってるよ。」


 加賀美はアカデミーで魔法を教える講師でありBランクのマジシャンである。10年ほど前まで協会日本支部の第3師団に所属しており、当時は大隊の隊長を任されるほどの実力者であった。現役を退いてから後進の育成に努めるため、アカデミーで教鞭をとっており、彼女たちのクラスの2年次と3年次の魔法理論の担当講師であった。面倒見のいい性格であり、祐美も由奈も非常に信頼を置く教師である。


「明日、各務先生にゼミのお願いしに行くし、その時一緒に相談してみる?加賀美先生なら学校のことも詳しいし。」

「そうね、お願いするわ。」


 翌日の夕方、授業後に彼女たちは加賀美に割り当てられている研究室に来ていた。

 由奈が扉をノックすると中から人のよさそうさ声で入室を許可する返事が返ってきた。


「どうぞ」


 二人が研究室へ入ると、奥の机の前に白髪の老人が腰掛けていた。体は歳を感じさせないほど洗練されており、纏う雰囲気は軍人のそれであるが、顔には年相応のシワが刻まれており、非常に優しそうな笑みを浮かべている。彼が、各務である。


「おや。坂本さんと榊さんですか。今日はどうしました。」


 二人は進められるままに、入ってすぐの椅子に腰掛けると、由奈が早速本題を切り出した。


「先生のゼミを希望させてもらおうと思ってるんですが。」

「ゼミですか?坂本さんは優秀ですので大歓迎ですよ。」

「ありがとうございます。それと祐美がゼミで迷ってるみたいで。誰かいい先生いますか。」

「榊さんはファイター志望ですよね。一般的な剣術ならたくさんいつのですが、刀術となると確かに悩ましいですね。杉崎くんにお願いしてみてはいかがですか?」

「杉崎先生ですか!?」

「ご存じですか?」

「はい、私も由奈も杉崎先生の実践魔法の授業を受けてます。先生はマジシャンなんじゃないんですか?」

「彼はファイターの資格も持っているので問題ないですよ。」

「そうなんですね。全然知りませんでした。」

「ファイターでも刀使いは少ないですからね。教えられることが少ないとかで剣術の授業を持ちたがらないんですよ。ゼミもおんなじ理由で開きたがらないですし。でも、刀術を学びたければ彼よりいい人はいませんよ。榊さんが良ければ私からゼミを開くようにお願いしておきます。」

「是非お願いします!!」

「わかりました。」


 それから、少し雑談をした後二人は研究室を後にした。

 二人が退出してすぐに各務は杉崎の研究室を訪ねた。


「わざわざ各務さんにきていただくなくても用があるなら呼んでくださればよかったのに。」

「なに、たいしたようではないので。それにお願いをするのに呼びつけるわけにもいきませんよ。」

「お願い?」

「はい、あなたの授業を受講してる榊さん。彼女をあなたのゼミ生にしてくれませんか?」

「各務さん私じゃマジシャンは教えられませんよ。」

「彼女はマジシャンではなくファイター志望です。」

「ファイター?」

「ええ。彼女は刀術使いです。この学校じゃ刀を教えるのにあなた以上の人材はいませんからね。それに彼女は優秀です。あなたもきっと興味を持ちますよ。あと彼女あなたと同じことで悩んでいるようなので、あなたに教えてあげてほしいんですよ。」

「わかりました。各務さんがそこまでいうなら。」

「ありがとうございます。ではまた。」


 それだけ言うと各務は杉崎の研究室を退室した。










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