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Cランク魔導講師  作者: 麻倉 雀
出会い
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 2192年4月、国際魔法協会日本支部所属魔道士養成学校の大講堂の一つでは4年生に向けたオリエンテーションを実施していた。


 国際魔法協会日本支部所属魔道士養成校ー通称アカデミーはその名の通り魔導士を育成する学校の一つであり、魔法協会日本支部の直営ということもあり、日本でも最高峰の魔道士養成学校である。

 この学園は義務教育終了ー中等学校卒業と同時に入学し、5年かけて魔道士及び、魔導技師を目指すことになる。

 1年から3年次までは教養課程となり、一般的な高等学校で学ぶ内容に加え基礎的な魔法理論に関して学び、4年次、5年次はより実践的に魔道士及び魔導技師になるために必要な技術を自分たちの適正に合わせ各々がカリキュラムを選択し、学ぶことができる。

 ところで、魔道士とは広義の意味では魔法を使用することのできるすべての人間を指すのだが、一般的には魔法戦闘員のことを指し、それ以外の魔法を使用した職業につくものを魔法技師と呼ぶ。

 魔法協会における魔法士の種類は全部で5つある。魔導格闘術や魔導剣術等を用い近接戦闘を行うファイター、魔道銃等を用いた遠距離戦闘を行うガンナー、魔法を用い範囲殲滅を行うマジシャン、魔獣や精霊などの魔法生物を使役するテイマー、そして、情報士官や技術者として魔道士たちの援助を行うサポーターである。それらにはそれぞれAからEまでの5段階のランクが存在しており、さらにその上には特別優秀な人間のみが取得することのできるSランクというランクが存在している。

 魔法協会の魔道士として入隊するためには年に数回行われる入隊試験にていずれかのEランク以上の資格を取得する必要があり、これらの取得が可能なだけの実力を持った魔法技師を育成することが一般的な魔道士養成学校の目標である。


 講堂の中腹で物憂げにオリエンテーションを聞く榊祐美も魔道士を目指す学生の一人である。

 オリエンテーションが終わると講堂の前方に座る少女が彼女の元までやってきた。


「何つまんなそうな顔してるの?せっかくの美人が台無しだよ。」


 祐美の元へやってきたのは坂本由奈。彼女の容姿を一言で表すなら、快活そうな女の子というものであろう。短く切り揃えられた髪は茶色であり、非常に人懐っこさを感じる可愛らしい美少女である。

 それに対し、祐美は美人という言葉がしっくり容姿をしている。髪は黒く目元は切長で、街中で見かけたら誰もが振り向いてしまうほどの容姿である。

 祐美と由奈は入学そうそうに仲良くなった。アカデミーでは基本的に1年次から3年次までクラス替えというものが存在しないのだが、二人はそのクラスが同じであり、出席番号で割り振られた席が近いということと下の名前が似ているということで仲良くなり、3年間同じクラスで過ごすことで親友と呼べるほどに親交を深めていた。


「なかなか取る授業を決めきれなくて。由奈は何の授業取るか決めた?」

「私はだいたい決めたよ。何の授業で悩んでるの?」

「実践魔導基礎をどれ取るか悩ましいのよね。ファイター志望でも基礎までは必修だし、少しでもファイターに役立ちそうな授業取りたいんだけど、シラバスじゃ判断できないのよ」


 アカデミーでは4年次からはカリキュラムに則り自らの希望する授業を半年ごとに受講することができる。また、同じ名前の授業でも担当する講師により、その内容は大きく異なる。そのため、進級式とオリエンテーションが行われた翌日から、1週間かけて各授業で個別にオリエンテーションを行い、事前に配られたシラバスと合わせ、各々の生徒たちは受講する授業を決めていく。また、各授業の3回目の授業までであれば履修希望の授業を変更することが可能になっている。

 そのため、一般的な生徒は1週目シラバスで目星をつけたなるべく多くの授業のオリエンテーションに参加し、さらに絞った上で2週目に実質的な初回授業を受講し履修する授業を決めるのである。


「じゃあさ、私と一緒にこの先生のやつとろうよ。講師の人はCランクマジシャンみたいだけど副講師はあの松井真美子なんだって。」

「松井真美子って、Aランクマジシャンの?」

「そう、すごくない?そんな人の講義受けられることなかなかないよ。」


 アカデミーの教員は協会日本支部の直営ということもあり、全員が協会に所属する魔道士である。教育機関という側面と同時に研究機関という側面も持ち合わせているため、ほとんどの教員が実働部隊には所属せず、アカデミー魔法技術の研究を専門としている研究員である。しかし、一部実動部隊を引退したものや、実動部隊に所属しつつ命令の合間に講師業に携わるものもいる。

 また、日本最高の研究機関であり、教育機関であることから、そこに所属する講師の全てがCランク以上であり、Bランク以上の魔道士も多く存在する。しかし、Aランクを持つ専任講師は存在しておらず、そんな人間の講義を受けることができるのは、たとえ副講師としてであったとしても、非常に貴重な機会である。



「でもそんなすごい人の授業があるなんて聞いてなかった。」

「何でも副講師やるのは今年かららしいよ。めちゃめちゃラッキーだよね。」

「そうね。私もその授業を受けることにするわ。」

「オッケー。じゃあ、私授業あるから行くね。またね。」


 そういって祐美と由奈はそれぞれの目的の授業が行われる教室へ向かうべく分かれた。


 オリエンテーションから3日後祐美と由奈は件の授業を受けるべく教室の前方で隣同士で座っていた。

 アカデミーでは4年次以降の生徒が対象になる授業で使用される教室は受講を希望する人数に応じてサイズの違うものが使用されるのだが、さすがAランク魔道士が副講師として名を連ねているということだけあり、50人以上が入る大教室が割り当てられている。しかし、その教室もすでに超満員であ理、後方には立ち見まで出ている状態である。前の授業がなかった由奈が授業のかなり前から場所取りを行っていたことで何とか席に座ることができた。

 授業開始を告げるチャイムがなると、二人の講師が教室に入ってきた。片方は長身でハッとするような美しさの女性であり、もう一方は長身の特に特徴ののない男性である。

 教壇の前に二人が立つと男性の方が話し始めた。


「これから、この授業を受け持つ、Cランク魔道士の杉崎秋人です。俺は所要で授業ができないこともあるのでその際にはこちらの松井さんに授業を見てもらうことになります。」

「Aランク魔道士の松井真美子です。みなさんに接する機会はかなり少ないかと思いますが、よろしくお願いします。すみません、私は別の用事がありますので、本日はあいさつのみで失礼します。」


 そういうと、松井はそそくさと教室を出ていってしまった。


「まず、学期末の課題ですが、みなさんには学期末までに無詠唱での防御結界の展開を行えるようになってもらいます。」


「無詠唱!?」

 教室の各所で多くの生徒が驚きの声をあげている。一般的に魔法を使用するためには詠唱が必要とされる。熟練した魔道士であればなれた魔法は無詠唱で行使できるようになるが、決して簡単な技術ではなく、それをアカデミー生に求めるのはなかなかの無理難題である。


「では実際の授業に関して説明します。」


 それから、授業の詳細について説明されたが、防御用の魔法に少し寄っている以外はいたって普通なカリキュラムであり、無詠唱を可能とさせるようなものは感じなかった。


「次回からは演習場で授業を行いますので、授業時間までに運動着に着替えて演習場に集合をお願いします。

 後、早速ですが、みなさんに課題です。次回の授業まで、空き時間になるべく多く火球を打ってください。

 初級魔法ですが、危険ですので、課題は必ず演習場で行ってください。

 では、本日の授業はここまでとします。」


 杉崎はそういうと演習場を出て行った。

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