先代の魔女の情報をアップデートしていないマヌケ共のおかげで、皇太子に保護され王女に君臨します!〜婚約破棄され自暴自棄になったところ、魔女になっていた私は18歳〜
「これより、王位即位式を執り行う!皇太子デルナレフ=オラモンテ!皇太妃デルナレフ=ハクナ!前へ!」
きらびやかな王室の中で、私達は見つめ合った。
ようやくこの時が来たんだ。
先代の王が病気で亡くなり、私達は空の玉座に歩を進めた。
「ハクナ、私は君に会えて本当に幸せだよ。あの日、あの森の中で出会わなければ、こうして君の隣にいることは無かったなんて、運命だと思わないか?」
「ええ。私もそう思うわ。」
私は最高の笑顔をオラモンテに向けた。
それは心から幸せだったからではない。
それは、私が魔女であるにも関わらず、この大国の王妃として君臨することができるからだ。
出会った日のことを思い出して、私はほくそ笑んだのだ。
✳✳✳✳✳✳
「すまない!僕は運命の人を見つけてしまったんだ!」
「え・・・?な、何を言っているの!?私達、婚約してるのよ!!」
「申し訳ないけど破棄させてもらう!」
「そ、そんな・・・!?」
私がまだ真人間だった時のことだ。
私は幼い頃から結婚を約束していたグレイという男に急に婚約破棄を一方的に宣告された。
グレイだけを愛してきた私にとって、それは大きな裏切りであり、そして人生の糧を失ったと言っても過言ではなかった。
18というまだどうにでも修正が効く歳ではあったが、これまでグレイに愛情を注いできた年数を考えると、私にはこれ以上の未来はないと考え込んでしまった。
私は自暴自棄になっていた。
このまま消えてなくなりたいとさえ思った。
自然に足は立ち入りが禁止されている迷いの森に向かっていた。
ここで彷徨い続けたら、そのうち私という存在が消えてなくなってしまうのではないか、と思ったからだ。
薄暗い森を当てもなくフラフラ歩いていると、前方にうつ伏せに倒れている女性を見つけた。
白髪で腰が曲がり、見るからに衰弱しきっている。
(あれは私の将来の姿に違いない・・・)と自己投影をしてしまった。
すると、その女性がみるみるうちに姿形が消えていくではないか。
私は思わず尻餅をついてしまった。
女性が消えていく中で発生した霧が、尻餅をついた私を囲んできた。
そして、その霧の中でその女性の生涯を見た。
その女性は“魔女”だった。
迷いの森には、王国の兵力に相当するだけの魔力を持った魔女がおり、その魔女と敵対関係にあるからこの迷いの森に立ち寄ってはいけない、というのが言い伝えだった。
私は正直バカバカしいと思っていたその言い伝えが本当だったのだと驚愕した。
そして、私の周囲から霧が消え去った時、私はハッキリと分かった。
次の魔女は、私なんだと。
私は街に帰ることはしなかった。
魔女として生きていく宿命を背負ったから、人間と生活してしていくことは不可能だと思った。
第一にバレても面倒なだけだし。
それに、魔女というのは不思議なもので、ご飯を食べていなくても割と平気で、少しお腹が空いてもそこらへんにあるキノコやらなんやらを煮詰めれば結構食べられた。
先代の魔女が住んでいた家も発見し、そこで寝泊まりできたこともあり、街に戻らなくても不自由はなかった。
そうして私が魔女として生きていく決心を固め、その生活に徐々に慣れ始めたときだった。
いつもどおりする事もなく森の中をふらふらと歩いていると、前方から馬に乗った大勢の兵がこちらに駆け寄ってきた。
そして私を取り囲むと、その先頭にいた男が隣りの老人に話しかけた。
「ワラウド、魔女というのはこれか・・・?こんな綺麗な娘が?」
「いえ、この森の魔女はもう齢300を超える老婆にございます。いくら魔力が強かろうと、このような若々しい姿になるのは不可能でございます。」
「ということは、この娘は魔女ではないと・・・?」
「左様に御座います。」
男は私のことをジロジロと眺めた。
そして一人馬を降り、私の前に立った。
「私はデルナレフ=オラモンテ。この国の皇太子だ。この森に巣食う悪しき魔女を打ち倒し、国に平穏をもたらすために参った。君の名は?」
「ハクナ、と申します。」
「ハクナか・・・。名前まで美しいのだな。」
私は、もしかしたら魔女だとバレるのではないか、という一抹の不安を抱えていた。
魔女だとバレれば即刻で首をはねられるに決まっている。
しかし、それは杞憂に終わった。
「どうだ?こんなところであったよしみだ。私に着いてくる気はないか?戦力として、ではない。妃に迎え入れたい。」
「え・・・?私を、ですか?」
オラモンテは私に一目惚れしたみたいだった。
私は、自分の言葉で顔を赤らめているオラモンテを見て、あくどい考えが浮かんだ。
魔女としてこの国を支配し、私に酷い目を見せたグレイに復讐してやろうと。
そのためには、オラモンテの力が必要不可欠だ。
「分かりました。私は、あなた様に付き従います。」
「本当か!!? おい!今すぐ帰陣の準備だ!魔女狩りなどという悪趣味なことはやめだ!すぐに祝宴の準備にかかれ!!」
オラモンテの乗る馬の後ろに乗った私の表情は、なんとも言えないほど憎たらしかったに違いない。
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「ハクナ、見てみろ。王国の民が皆祝福してくれているぞ。」
「えぇ、そうですね。」
王宮の外は人が溢れかえり、皆一様に私達を祝福し手を振っていた。
おそらく、その中にはグレイの姿もあるのだろう。
私はその群衆を見下ろしながら、静かに心のなかに湧き上がるものを抑えるのに必死だった。
国を乗っ取るということは、この人間たちも私の手の中、ということなのだから。
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