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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
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なかまがふえるよ! やったね!

このサブタイトルはどうかと思う(´・ω・`)


 さて、冒険者になるべく、町を出ることにした俺だが。

 今すぐ出て行くわけではなく、「旅立ちの日」に合わせて出発することにしている。

 この町には、大体三カ月から半年に一度ぐらい、「旅立ちの日」というのがある。俺みたいに冒険者になりたい奴だの、出稼ぎに出発するだの、商人の丁稚になって行商に出るだの、旅立ちにふさわしい日を町の占い師が占って決めているのだそうだ。

 で、二週間後がその旅立ちの日。別にその日でなくちゃいけないってことはないが、町の決めた日に出発すると、町から「支度金」が少しばかり出る。町の宿で二泊分に相当する額(=約五〇〇ゴネル)で、昔はこれだけ握り締めて出稼ぎに行く貧乏な奴もいたらしい。それで大商人になって成功した奴がいて、そいつに続け!とばかりに今でもそれが引き継がれている。ここの領主が商売で成功した貴族だというのも、この制度が続いている要因でもあるそうな。

 で、旅立ちの日に出発する、と町の役所に申請すると、出発当日の朝の出発時間に指定場所に集合、そこで支度金が支給される、というので、役所に出向いて申請を済ませた帰り道。


「ケン! 聞いたわよ、あんた、冒険者になるんだって!?」


 ……うるさい奴につかまった。

 ビュスナ・ヴァロース。町の治療師をやってる、魔導士ヴァロースの娘だ。

 怪我したときによく世話になる「ヴァロース治療院」でちょくちょく顔を合わせるので、知らない仲ではない、というか――町の「初等学校」で共に学んだ仲間でもある。

 オレンジに近い茶色の髪とキツめの釣り目の容姿にふさわしいキツい性格で、物言いもえらくハッキリ言い過ぎるので、友達もあんまりいないっぽい。黙ってりゃ美人なのに、口を開くと「あたしが世界一ィィィィ!」みたいな物言いばっかなんで……。

 それでも魔導士の家に生まれて能力も高いので、孤立していてもあまり気にしてないようなところも見受けられる……まあそういうところもあって、俺みたいに、多少キツい物言いされても平気な奴にしか相手にされてない。いや俺もそんな平気じゃないんだけど……絡んでくるんだよこいつ。

 まあ俺も、転生じゃなかったらちょっとお相手したくないタイプだけどな。物言いが会社のお局様思い出すし……。


 ――この町には初等学校=「子供のための学校」があって、極めて安い授業料で「基本的な読み書き計算」を教えている。午後から夕方まで、一日おきの学校だが、おかげでこの町の識字率は極めて高い。さすが商業貴族の領主様、教育の重要性を解っている。

 俺もそこにしばらくの間通い、一通りの文字を覚えて、名前も文章も書けるようになった――が、計算は記憶が戻る前から「前世」の能力が発揮されていて、四則演算余裕。記憶が戻ってからは二次方程式や因数分解・統計学なども思い出したし、仕事でやった統計なんかは教師よりも高度な数学を理解している、と「数学の神童」扱いされたことがある。さすがに三角関数やら微積分はうろ覚えだったが。領主の親戚である町長から「その気があるなら町の仕事を手伝うか?」ってスカウトもされたし。一応「ちょっと外の世界を見てみたいんで」ってやんわり断りましたけど。

 魔導士の家系の英才教育で、初等学校の読み書き計算はすでにこなしていたビュスナは、それがいたくご不満だったらしく、ことあるごとにつっかかってきたものだが……俺が読み書きをある程度覚えて、習うこともなくなったので、狩りを覚えるために学校に行かなくなって以降、治療院や町中で会うぐらいになってからは、「あんたがいないとあたしに対抗できる相手がいないんだから戻ってきなさい!」などと、合う度に勝手な理屈を押し付けられたものだった。

 うん、ツン98%のデレ2%ぐらいかな……いや、デレもねーな。「我を構え」が2%ぐらい。

 相手にするのはちょいキビシイ「ツン娘さん」デス。

 これでも一応幼馴染っつーのかな?

 もうちょっと俺に優しいオッパイチャンだったら良かったんだけど……こやつは「平たい胸族」。

 現実はこんなもんですよねー。


「お、おう……」


 絡んできたビュスナに、とりあえず俺はそうとしか応えられなかった。


「ちょうどいいわ、あんた、あたしと一緒に来なさい」


 はぁ? 何言いよりますかこやつ。


「あたしも魔導士修行で冒険者デビューするのよ。まああたし一人でも、攻撃・防御に回復もこなせるから、多少のことは大丈夫な万能冒険者なんだけど、あんたふつーの戦士でしょ? バックアップがいなきゃすぐにゴブリンの餌食になるわよ? だからあたしの楯となってキリキリ働きなさい」


 ……なんつー上から目線。こやつ、これでマジで冒険者やるつもりだったのかよ……ソロプレイヤーという名の「ぼっち」しか未来が見えねえー。


「ビュスナ! お前、まだそういう口のきき方しておるのか!」


 ――そこへ、ビュスナの親父様登場。ツンお嬢の後頭部へ平手でスパーンと一発くれる。


「いった! 何すんのよ!」

「何すんのよではない! そんな上から目線でセリフを吐けるほどおまえも有能でもなかろうが!」


 白髪交じりの灰色の髪と口髭をたくわえた、壮年の治療師――というか、元冒険者の魔導士。背はさして高くない、俺と同じぐらい。今は治療師用の薄茶色の上着を羽織っているが、以前見せてもらった「旅の魔導士ローブ」には、ちょっとオラワクワクさせられたものだ。

 普段は魔導士らしく、落ち着いた話し方をする知的で穏やかな人なのだが、ビュスナが関わると……うん、わかる。


「何言ってんのよ! あたしは冒険者としてこれから頂点を取る女よ! それをパパはねえ……」


 見慣れた親娘漫才……この親娘はいつもこうだ。見てて本当に面白いが、自分がそこに加わるのは勘弁したい。

 しばらくすると、「いいかげんにせんか!」とまた親父様にひっぱたかれて、漫才が終わる。オチのセリフまでこれだもんな……天然にもほどがある。きっとこの親娘、「笑いがとれる」スキル持ってるよな。親父様がツッコミで、娘がボケだ。


「いや、済まなかったな、ケン君」


 そして、ヴァロースの親父様は腰が低い。この親からどうしてこんな天上天下唯我独尊なツン娘が生まれたのやら……。

 奥方のジェシカさんは元女戦士で、豪快な姉御なのだ。治療院の隣で酒場のオーナーなんぞやってて、ガハハと豪快に笑いながら町の男たちの相手をしている。もうちょっと細かったら確かに美人だと解るのだが、ちょっと身体も性格もマッチョ過ぎるお方なので……こちらの親父様もさぞ尻に敷かれていることだろう。

 そんな奥方の元で育ったら、まあこんな「オレ様」ならぬ「アテクシ」ツン娘が出来上がるのも致し方ないかも……決して教育が良くないとか、そういうことを言ってるのではない。言ったこともないけど。


「うちのはどうも礼儀を知らなくてな……一度痛い目を見れば直るかと思ったのだが、魔法を覚えて以降、より一層あんな風になってしまってなあ……」

「気苦労はわかりますよ、ヴァロースさん……」


 ふくれっ面の娘を前に男二人して、溜息を吐く。


「そこ! 人の悪口で同調するな!」


 ビュスナがたまらずツッコミを入れるが、俺も親父様も無視。ボケてんじゃねーんだよ。


「そこでものは相談だが……ケン君、冒険者になるなら、あれを助けてやってくれんか。あれの言い草ではないが」

「……はい?」


 ナニ言い出しよりますかこの人まで。


「確かにあれは、魔法能力は初級冒険者としては突出している。私が鍛えたのでな、そこは期待してくれていい。知識もまあ、完璧とは言えないが、冒険者を始めるには十分仕込んである。

 だが、現場でそれが生かせるかどうかは別の話だ。私も駆け出しの域を出て慣れてきた頃、同じ失敗をやらかしたものだ……そのとき同じパーティの戦士に助けられ、諌められたのだよ。お前一人で仕事してるんじゃないんだ、仲間と共にしてるんだ、とね」


 ……ああ、それが奥方様ですか。


「だがあれはまだ失敗を経験したことがない。頼む、君にしか頼めないのだ。親としては、君に頼むしかないのだよ」


 ……本心から言って良かですか?


 「いやどす」。


 ……とは言えねえよなあ……うちの親父も、俺も、兄弟一同も、この親父様にはしょっちゅうケガや病気の治療で世話になってるし、病気になったときも助けてくれたし。治療費もまけてくれてるし。


「……わかりました。なんとかしてみます」


 渋々やで? しゃーないんやで?


「おお、やってくれるか! ありがとう!」


 親父様は、がっしと俺の手をとってぶんぶんと振ってくる――よっぽどこのツン娘のことが不安だったんだなー。

 まぁ俺がいなかったあいつ……ぼっち確定だからなー。


「礼といっては何だが、これを持っていくといい。冒険者ギルドへの紹介状だ」


 一巻きの書状を手に入れた!……封蝋に押印とか、なんかすごくそれっぽいっすな。


「ククリグの町のギルドへ行くといい。私の知り合いがいるのでな、これで色々便宜を図ってくれるだろう」

「ありがとうごさいます。助かります」


 やった、町中でのイベントクリア! これクリアしとかないと、ギルドでのスタートに苦労するやつだ!

 イベントファンファーレが鳴らないのはちと不満だが……ゲーム脳ゲーム脳。脳内で鳴らしておこう。ぱーぱぱらぱーぱーぱー。


「……あと、すまないがあれの金の使い方にも少し注意を払ってほしいのだ。路銀としては十分持たせるつもりだが、何しろあれは金銭感覚がないに等しい。無駄に使いすぎないように見張ってやってくれ」

「は、あ……わかりました」

「それと、あれはすぐに無用なトラブルに首を突っ込みたがる。正義感が強いのは結構なことだが、冒険者ならやるべきこととそうでないことの区別がつくように、君が手綱を持っていて欲しいのだ」

「は、はい……」

「もうひとつ、あれは基本的に猪突猛進な性格だ。家内に影響されたのか、勇猛果敢なのだが、魔導士だということを自覚して、先頭に立って突っ込もうとするのは止めてもらいたいと思っているのだ。もし正面から撃破することにこだわるようであれば、ひっぱたいても構わぬので、止めてやってはくれまいか」

「…………」


 とんでもねえ問題児じゃねえかよ親父様!

 せめて冒険に出す前にしっかり教育しておいてくれませんかねえ!

 俺がそんな問題児の面倒見なきゃならんとか、完全に押し付けてるんじゃねーですかね!


「本当なら、こんな状態で外になど出したくはないのだが……『冒険者になれないなら家出するから!』とまで言い出しおってなあ……本当に済まないと思っている」


 ……あー。ご愁傷様ですー。

 そして俺もご愁傷様ですー。

 そしてどうしてこうなった……。


 これ、パーティメンバーになるけど、AIで勝手に突っ込んでいくダメなNPCだ……。

 「めいれいさせろ」コマンドどこー! ええわかってますよ、NPCにはコマンドきかないんですよねー!

 ……あ、わかった。ワカッチャッター。

 ランダムで能力決められたとき、きっと「運」が最低レベルになってるんだ。ちょっとステータス見せなさい!

 ……ちくそう、コマンドの類が出やしねえわ。俺がどのくらいのレベルかわかんねーじゃねーか! 次のレベルまであと経験値どんだけだー!

 ……くそう神! やってくれやがったな! もうちょっと解りやすいUIにしろとあれほど! クソゲーのレッテルは、ゲーム内容以上にUIがクソだから貼られるんだぞ!


 ……いや待て待て、運ごときでガタガタ言ってはいけない。

 逆に考えるんだ、この際運は悪くてもいい。

 運が悪くても、それは冒険人生のエッセンスだと。

 そう考えるんだ。


 ……もう、そうとでも思わないと、やってられませんよええ。



てれれれってってってー♪


『魔導士ビュスナが仲間になった!(ステータス:じゆうきまま)』

『アイテム:冒険者ギルドへの紹介状を手に入れた!』



今日はここまで。

続きは明日(´・ω・`)ノ

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