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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
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冒険者になろう


 ――この異世界にも「冒険者」という連中がいる。

 己の身と、己の腕だけを信じて、この殺伐とした世界を闊歩していく荒くれ者ども。この近辺にはいないが、世界に跋扈する怪物どもを退治する、モンスターハンター。ゲームみてー!

 こんな異世界に来たからには、男子が一度はなりたい職業ランキング、戦闘民族の王子も認める、おまえがナンバーワンだ!

 そういう、男子一生の夢みたいな職業を一回はやってみたかった俺は、「こっち」に完全転生して以来、あれやこれやと身体を鍛えてきたのだ。

 一見すればただ狩りに出かけたり畑を耕してたりと、家の手伝いに終始しているようにも見えただろうが――その実、一人で森に入ったりしたときは、半日は自作の木刀を振って、多少は武器を振れるだけの力もつけてきたつもりだ。畑耕すのも、クワ片手でやったりしてな。リストと後背筋鍛えて打撃力上げるアレですよ。


「そうか……いずれお前は言い出すとは思っていたが」


 俺がある夜、晩飯の後に「冒険者になりたい」と言い出すと、親父はそう答えて、自分の寝室に引っ込んだ。

 ガサゴソと何か漁って戻ってくると、古びた重そうなバックパックが一つ。巻いた野営用のテントも防寒寝袋もついてる。


「ちょっと使い古されてはいるが、まだ使える。これをもっていけ」


 おお、もしかして親父殿、あなたも昔は冒険者だったでござるか! 先輩ちーっす!


「お前が生まれるまでは、俺も冒険者の端くれだったがな。お前が生まれるときに、冒険者稼業は引退した。

 ……まあ、俺はそんなに腕の立つ方じゃなかったし、いつまでやれるかも解らなかったし、いくらか金も稼げて、辞め時を考えていたときだったから丁度よかったがな」


 ……ちなみに兄貴にも「冒険者になりたくない?」って聞いてみたことはあるが。


「やめとくよ。俺はお前みたいに何でも上手くこなせるわけじゃない。だが、狩りならお前よりもなんとか上手くやれそうだし、ミシュリーに心配はかけたくない」


 ミシュリーというのは、兄貴の彼女だ。宿屋の看板娘で、一歳年上のおっとり爆乳彼女……おっぱい先輩ラブのリア充め! こないだ裏山でチューしてたの見たぞ!……う、裏山しくなんかないんだからねっ!

 まあ、弟のロブも狩りに出られる歳だし、妹のティアナも母上殿の手伝いは十分できる。

 俺一人がここで抜けても、なんとかやっていけるだろう。ならば俺は外で稼いで、仕送りする役目を担うとしよう。次男坊はそうやってフラフラ生きてく役目と相場は決まっとる。困窮するほど貧乏ではないが、俺が一人口減らしになって、さらに金も稼げれば、家の暮らし向きも楽になるだろうし。跡継ぎ予備もロブにやってもらおう。

 ――で、親父殿の冒険者キットには、冒険に必要そうなものが一式、キッチリ手入れされて入っていた。さすがに食料は入ってないが。


「それと、これもあるぞ」


 おお、初級冒険者必携の「かわよろい」と「はくじのつるぎ」ですか! 親父殿は解っておられる! 「たけやり」とか「ひのきのぼう」に「ぬののふく」だったらちょっと泣くところだったぜ!


 ……俺の思っていた世界とちょっと違うのだが、この世界は「金属」というやつが非常に少ない。なぜかは知らんが、そういう世界らしい。

 まあ少ないだけで、全くないわけではなく、金属そのものが全て「貴金属」扱い。金も銀も鉄も銅も鉛もアルミも、なんでも希少品。あーでもアルミは見たことないな……電気精錬とかせにゃいかんしな。

 そういった事情もあり、この世界の武器は「セラミック(陶磁)」、もしくは「木」製だ。もちろん「竹槍」でもいいのだが……まあ、武器としてあまり人気のあるものではない。なんせ竹を斜めに切っただけだし。開拓村とかではよく使われるらしいが。

 なので、やはり見た目は木刀・木剣ではあっても、カッコイイ方が男子にはウケがいい。

 もちろん、素材は普通のセラミックや木ではない。

 この世界の魔導士ギルドと協力して造られる、「強化陶磁エンセラム」「強化木エンウッド」といわれる、魔法で強化された素材の武器だ。これは建材としても使われている。

 どうやって造ってるのかはギルド秘伝なので、一般人の俺には知る術もないが、ガッキンガッキン打ち合ってもそう簡単に刃こぼれも折れたりもしないという、トンデモ強化術だという。もちろん強化のレベルによって強度にも差が出るので、より高度な強化を施した方が頑丈で、通常の強化武器などすぱりら!って、ないものと同様に切り裂くレベルのものもあるらしい……そういうのはお高い。超お高い。桁が二つ三つ違うお値段なので、「将来是非手に入れたいモノリスト」に入れておこう。


 で、親父殿から頂いた「白磁の剣」は、長年使われてきた割にはまっさらで、多少の汚れはあるものの、刃こぼれも根元に一箇所あるだけで、あとはすらりと滑らかな刃である。十数年使ってこれなら、それなりにいいモノだろう。

 そうびしますか? YES! YES! YES! 武器は装備しないと意味がないからな!

 装備してみると、上半身を覆う革鎧はちょいと大きめで違和感はあるが、下に当て布でもすれば十分使えそうだ。磨かれた剣はずしりと重く、「本物」の手ごたえがある。くぅーっ、たまりませんわ!

 そして、同じく差し出された革の小袋には、数十枚のゴネル白貨や赤貨。これ、小遣いにしては結構な額あるんだけど、どしたの父ちゃん? ヘソクリ?

 ちなみに一ゴネルが五円から十円ぐらいの感覚で、物価は日本より遥かに安い。一食三〇ゴネル(200~300円見当)もあれば十分量は食えて、普通の宿も一食付で二〇〇ゴネルぐらいから、安い素泊まり宿なら五〇ゴネルからある。一家四人が一ヶ月暮らすのには、一万(体感的に7・8万円相当ぐらい)もあれば食うだけは食っていける。多分、袋には何千ゴネルか入ってる。これだけで俺一人なら一ヶ月は生きていける。

 そしてコインも金属ではなく、強化陶磁と強化木のパズルみたいな組み合わせでできていて、本物とニセモノを区別するため、「強化木ハンマーで叩いてみる」というのがある。ニセモノだったらその場で割れるんだそうだ。あと、本物のコインはセラミック部分が一定期間(二十年ぐらい)経つと勝手に砕けるそうで、それで毎年一定量が供給される。デザインは数年ごとに微妙に変わり、それで発行時期が解るようになっているらしい。

 ゴネルコインは、各国が魔導士ギルドへ依頼して供給してもらっている。国はセラミックの材料になる土や石灰を出し、魔導士ギルドはそれを受け取って鋳造料金をもらって、依頼数のコインを製造するんだそうだ。

 ちなみに砕けたコインは、残った強化木部分を役所か魔導士ギルドの貨幣交換所に持っていくと、新品と交換してくれる。まあそうでないと、壊れたら丸損だしな。


「旅にはいろいろと入用だ。持っていけ」


 有難く受け取って、「これは借りてく、必ず稼いで十倍にして返しに来るからな」と言っておいた。サンキュー親父殿!


「気にするな。これはお前の初めての獲物の代金だ。こういう時のために取っておいた」


 おおう……聞けば、俺が「目覚めた」ときの、あの「ヌシ級」ヨロイイノシシの牙代金だとか。あのイノシシは翌日いなくはなっていたが、牙だけが一本、折れて残っていた。稀に見る巨大な牙だったので、結構な値段になって、それで色々弓やら服やらを新調したのは覚えているが、あの金額の一部は何かのときのために貯金してあったのだとか。

 母上殿は目に涙を溜めていたが、「この金返しにくるから、そのときまでのちょっとの出稼ぎだから」と言っておく。

 母上殿は黙って頷いてくれたが――うーん、あんまりこういう顔は見たくないな。

 ……安心させるために、チート能力のことは話すべきか、話さざるべきか。

 いや、やっぱりやめておこう。成功して帰ってきたら、そのとき話せばいい。

 あんまり最初から大きな期待を持たせすぎるのもな。

 ……とりあえずは、無事に帰ってくるのが第一の目的だな。


てれれれってってってー♪


『冒険者セットを手に入れた!』

『白磁の剣を手に入れた!:装備しました』

『革鎧を手に入れた!:装備しました』

『所持金:八千ゴネルを手に入れた!』

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