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百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
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能力分析結果

 というわけで、前世の記憶とチート能力を取り戻した俺だったが。


「……よくこんなんで生き残ったな俺……」


 今発動できるのは、わずか十平方センチほどの〈絶対領域〉。

 掌に発動させてみても、やはり直径三センチ程度の円形とか、手の拳を中途半端に覆う程度の絶対領域しかない。

 拳の前を覆うように発動させれば、殴っても全く痛くないし、これでどんな武器でも完全に防いで壊したりできるんじゃないかと思ったんだが……


 絶対領域狭ぇ。超狭ぇ。セッコい能力だわー。ないわー。マジないわー。

 五センチ×二センチでエリア作って木殴ってみたら、ガードされてない部分がぶつかって超痛ってぇの。やるんじゃなかった。

 ……そりゃあねえ、勇者が六百万ポイントの男、スーパー勇者が一億五千万の男だとすれば、俺なんて百の男。百均勇者。やっす。ポイントカードのオマケでも貯まるよ百ポイントなんて。スマホ決済のキャンペーンのオマケだってもっと高い。

 そう、ほぼ、ただの転生人間ですから。勇者の六万分の一じゃ、こんなんでもしょーがねえですけどー。

 一〇〇でもチート能力もらえただけ有難いと思うべきですよええ。チートばかしセコいけど。

 ……まあそれでもだ、一度は命助かったことだし……ちょっとまて、逆に考えるんだ、転生人生送ろうと思った瞬間、また死にそうになっていたんだと。

 ほんとマジフザケンナ。生き返った早々またぬっ殺されるとか、冗談じゃねーわ。

 ……うん、これからはできるだけ注意深く生きるようにしよう。

 そんでこのちーとばかりのチート能力、なんとか鍛えて伸ばそう。

 どうやって鍛えるのか知らんが、とにかく使っていれば成長するだろ。

 神そう言ってたし。




 ……そんな風に考えていた時期が、俺にもありました。

 これがまた、不毛というか、どれだけやったら伸びるのかがわからない。

 ゴールの見えないマラソンほど辛いもんはありませんよ。学生時代の真夏の体育マラソンの授業、あのスタート時の絶望感といったらもうね。そんで走り始めたら「今日の体育は三時間なー」と体育教師に言われたような、絶望から虚無の心理状態。悟りの状態だね。

 ……「俺」を取り戻してから半年、来る日も来る日も、〈絶対領域〉の使い方を研究しつつ使い方を訓練してきたにもかかわらず、この領域が一向に広がる気配がない。

 面積は変えられず、拳を覆うにも狭すぎる。うーんうーんうーんこのー、と毎日毎日悩んで、とりあえず「痛くないように拳を覆う形態」だけは考案できた。

 金網みたいなメッシュ状に展開することで、対象が拳に触れないように殴ることはできるようになった。これで何を殴っても全く痛くない。トゲトゲの相手を除けば。うん、「(ほぼ)無敵の拳」の完成だぜ!


 ……と思ったのも束の間。

 「無敵の拳」で殴れば何もかも破壊できる、ってわけじゃないんだこれが。

 殴る威力=俺の殴る力で、俺自体が強くならないと威力も増えない。ただ、どんな硬いものブン殴っても手が痛くない、それだけ。手は痛くないんだが……全力でブン殴ると、衝撃で肩やら背中に反動がくるんですわ。いっぺん手首挫いたし。

 ……なんやかや言っても、俺もただのガキだし……そりゃまあ、他のガキどもより少しはガタイも良くて力もありますけどね? でも人間離れしているってほどじゃありません。「若者の人間離れ」には程遠い。マスコミも注目しませんわ。マスコミないけどな。

 むう、やはり実戦が足りないのか……とはいっても、これで実戦というのもなんか心もとない。この世界にも素手の武術道場があるので、それでも習えば実戦で通用するほどに強くなれるんだろうか、とか。それとも剣振る訓練でもしないといかんか。道場通うにも金かかるしな……。

 せめて攻撃魔法の一つも使えれば、この状況も打破できるのかもしれんというのに……魔法の修得にだって金も時間もかかる。

 このなんか手詰まり感を打破するには、やはり俺がこの拳でなんか実績を上げていくとか、もっとこの能力で経験値的なものを稼ぐクエストでも完了しないとダメなんだろうか。


 とはいっても、この世界、経験値なんて概念もなければレベル制があるわけでもない。そういうのがあったとして、それを見る方法がない。

 ほらー、よくあるじゃん? 転生したら自分の能力がどのくらいのレベルにあって、それをいつでも参照できて、どうすれば経験値が貯まっていって、どれくらいでレベルアップしてー、どれくらい効果が拡大するとか威力が上がるとか、そういうのが判るっていう「鑑定」スキルとか。

 冒険者ギルド行ったらそういうの鑑定してくれて、ギルドカードに今のステータスが書いてあって今何レベルでステータスがどれくらいーって解るとか。新しいスキル取って鍛えたら、マジチートな能力で怪獣退治の専門家、ウルトラマンになれるとかさー。

 チート転生っつったら、そういうのがあって然るべきだと思うんデスよ。デュワ?


 だけど、そういうのが全くない。ちっともない。さっぱりわからない。コマンドメニューもありゃしないし。

 もちろん「鑑定」スキルとかもないし、能力値とかが頭に流れ込んでくるでもない。もう全部手探り。現実のトレーニングみたいに、訓練してたらある日、「あ、俺できるようになってる」ってのを感じる、そういうのしかない。

 ……まあ、普通のリアル人生ですわ。百均チート能力除けば。

 いや、それで「できるようになってる」が判ればいいんですがね、このチートさん、ちーともわからんとですよ……ほんともうね、拡大しているとかなんとかもわかんねーし、威力が上がってるもなにも、こいつ初手から「完全防壁」だから、なんでもシャットアウトしてまうんです……だから防御に関しては「完璧」なんですわ。

 でもね、面積小さいから、ちょっと避けると全く意味がないっていうかね……雨降っても傘代わりにもならんし。

 はあ、こんなことならレベルが判る世界に行きたい、ぐらいの要望出しておくんだった……いや、だとしたら〈絶対領域〉も手に入らなかったかもしれんしなあ……。


 ああもう止め止め。悩んでもしょうがない。

 部分的にとはいえ、これだけのことができるんだ、これの活用法を考えるとしよう。

 あと、できるだけ精密な測定法。それで大きさを計測して、成長してるのかどうかを経過観察。

 デフォルトで直径約三・五センチの円、もしくは2センチ×5センチの長方形にもなる。メッシュ状にも変えられる。面積変化なければどんな形でも……いやまあ形はどうでもいい。よくないけど今はいい。

 「何も通さない」というものなので、よく考えたら光も通さない真っ黒な円かと思ったら、透明にもうっすら光らせることもできる。視覚的な部分はコントロールできるみたい。光らせるとハンディライト替わりになるので真っ暗な場所でも足元安心。普段は透明にしておく。他人に見られると厄介なので。なお俺には透明でも輪郭が見える模様。

 そして変形もできる、神が言っていたとおり――現在、二ミリ×五〇センチの長方形に変形させて、拳の前に一筆書きメッシュ状に展開させて「無敵の拳」を作り上げた。

 あとはケンカのとき、ケンカ相手の拳を、掌に展開した円形の〈絶対領域〉で受けて完全防御、とかいう使い方もできるが……まあこれは最初にやったやつだ。

 とにもかくにも、最初の一発でよくあれだけ上手いこと発動できたもんだと思うが……ん?

 んんんー?

 ……なんか引っかかるな……あれ?

 あのとき……ヨロイイノシシの一撃を、「絶対防御」してふっ飛ばした……あ。

 そういうことか!

 確認のために、手にもってずっしりとくるぐらいの石を持ち上げ、上に軽く放り上げる。

 それを手で受け取ると、ずん、と重さがかかる。当たり前だ。

 次に、掌に〈絶対領域〉を発動して、その上で石を放り上げ――受ける。


「やっぱりか!」


 今までなんで気付かなかったか!


 〈絶対領域〉は、「空中に固定できる」!


 そうだよ、今まで無意識に「防御用」として使っていて、なんで気付かなかったのか!

 一番最初に防御したとき、俺はヨロイイノシシの勢いで吹っ飛ばされなかったんだ!

 それに、攻撃の際にメッシュにした〈絶対領域〉は拳に張り付いて自在に動いていたが、あれは「拳に固定されていた」とみるべきだろう。

 ということは――

 俺は改めて、デフォルトの円形領域を拳の前で発動し――「この位置で固定」と念じる。

 すると、確かに長方形の〈絶対領域〉が、その場に残った。石をぶつけてみると、確かにそこで石が跳ね返る。石乗せることもできる。石乗せて上下左右に移動もできる。ピッって素早く横へ動かしたら慣性で石落ちるけど。


「おお、なるほど……今までは無意識にこれを動かしたり固定してたってわけか」


 あえて位置を固定すれば、解除するまではそのままで固定できるのか。

 よしよし、これは使えるぞ。

 ……俺は家に帰ると、自分の部屋のベッドの角に、〈絶対領域〉のサイズを炭筆で書き込む。〈絶対領域〉に沿って四角く枠を書いただけだから、誰かが見ても何のことやら解るまい。

 時々これに領域を当てて、範囲が拡大してないか確認するとしよう。少しでも拡大していたら、成長しているということだが、どれくらいか確認しておかないとな。

 半年で全く変動があったように思えないことから、多分普段の生活だけでは、年単位の鍛錬が必要になるものとして扱っておこう。

 ……だとしてもだ、何もしなければ成長の芽もない。スキル選択の際に「成長する」と神言ってたんだから、使って慣れてスキルポイントみたいなのが蓄積されていけば拡大されていくとか新たな力が追加されるとか、そういうことのはず。

 ……それ以上に、この〈絶対領域〉の使い方をよく考えておくべきだろう。「空間に絶対位置で固定できる」という、最初は知らなかった使い方を発見できたということは、こいつにはまだ応用方法があると思える。

 もっと研究の余地があるな……さすがチートさんだぜ!




 そんなこんなで十五歳になったよ、イマココ。

 あれから二年経って、俺は更なる〈絶対領域〉の使用法を会得していた、が。


 一つ、〈絶対領域〉は「俺の意志でどのようにも変形できる」。神サマそう言ってたので。

 一つ、〈絶対領域〉は「俺の意志でどこにでも発生・固定できる」。確認済み。ただし、目に見える範囲で。

 一つ、〈絶対領域〉は「俺の意思で自在に移動できる」。固定させて発動もできるが、発動後に動かすこともできる。発動後は、見える範囲ならかなり先でも移動できた。それこそ空の彼方、何キロ先にも。ただし見えないほど遠距離だと、どこにいるか見失う。感覚的には解るけど、見えないところの目標に当てるには、直線上でないと無理だな。

 一つ、〈絶対領域〉は「あらゆる物質・エネルギーを通さない絶対障壁である」。これも聞いてた。だけど実験で確認はできてない……狭すぎて魔法とかぶつけられても、局所的にしか防御でけんのや。爆発とか、総合的には防げませんから!

 一つ、〈絶対領域〉は「あらゆる物理力に対して無敵である」。これもおk。ちょっと斧とかでも試したけど無敵。俺が試せる範囲だけど。


 結局今までに判ったのはこの五つだけ――だが。

 これを「極端に解釈」して活用することで、俺は十分な確信を得ていた。

 「上手く使えば無敵になれる!」と。

 ――結局、あれからさらに二年、経過観察をして、領域が増えることはなかった。ポイントが足りないのか、成長条件を満たしてないのか、原因は解らないが――俺はその欠点を補う応用方法をいくつか発見していた。

 これだけの応用法があれば、念願の「冒険者」になれるからな! しかもチート持ちだぜ! チート能力はおもちですよ! えっなにそれこわい。カビるじゃん。腐るじゃん。

 腐らせないで使いこなさないといけませんね。


実は「ツッコミ」スキルもリストにはあったが取らずとも最初から持っている模様(´・ω・`)

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