表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百均勇者。 -百均スキルで異世界チートは難しい気がする-  作者: 木持河類
第一章 転生したらチート勇者だった……はずが。
4/228

新たな人生

 俺の転生した世界は、よく物語や童話にある発展途上の西洋文明圏、でなければ日本のマンガやらラノベやらゲームなんかによくある、つまり「中世ファンタジー世界」というやつでだいたいあってる。

 そこに「魔法」が加わり、いわゆる「剣と魔法の世界」というやつになっている世界。だと思う。

 うん、希望通りではある。異世界転生っていったらこういう世界だよね!


 ――そんな世界に転生して、俺は今年で十五歳になっていた。

 この世界で、ケン・ファラザードという名を得て、ジシィ・マーダ王国のとある地方の町・マシナで生まれた。

 狩人、マディ・ファラザードの家で俺は、兄貴・弟・妹の四人兄弟の次男として生まれた。兄貴はサザン、弟はロブ、妹はティアナ、母親はシーレ。お貴族様の三男四男とか八男とかだけどお気楽スーパーチート持ちヒャッハー!とかって人生ではなかったが、まあ貧乏どん底とか奴隷として虐げられるような人生でもないので、そこはよしとしとこう。

 幸いにも、文明レベルは「マジしんどい……」って思うほど酷くはなかった。それでも乳幼児の死亡率は高く、医療レベルも衛生観念もあまり高いとはいえない。ただ、相応に気を付けていれば、なんとか生き延びることはできるみたいだ。

 我が家も、四人兄弟ではあるが、実は兄貴と俺の間に本当は一人姉がいたはずだそうだが、病気で三歳になる前に死んだそうだ。南無。

 まあそんなこともあって、父ちゃん母ちゃん共々、子供を捨てるようなこともなく、なんとか貧乏ながらも育ててくれたわけですよ。有難う、父よ母よ妹よ! いや、妹はワシが育てた……ようなもんだ。親は仕事忙しいしな。

 てなわけで、家族仲は悪くはない。大切よこれ。


 この世界ではパンピーもファミリーネームがあるみたいだ。三割ぐらいは持ってるらしい。ない奴は名前だけ。人口多い町だと例えば「ジャック」とか「ジョン」とかが何人もいて紛らわしい。そういう場合は「西地区のジャック」とか地名で分けられる。大体姓のない奴は、生まれた村とか町とかをつけて「**村のジャック」みたいに名乗る。出身が判って、何かあったときに家族に知らせることもできるからだ。

 転生前の会社でも、苗字同じで紛らわしいことあったけど、あの場合は部署と名前付きで連絡行くからな。「ナントカ産業の営業部営業二課・高橋です」みたいな具合に名乗ってるようなもんだ。

 最近はそういう紛らわしい名前だと判別がしにくいってんで、「ジャック」が「コジャック」とか「ジャックス」とか「ハイジャック」とか「ダイヤジャック」とかいう、なんか付け加えた名前をつけるのが流行っているらしい……が、なんかちょっと恣意的なものを感じるネーミングセンスだ。きっと俺みたいな転生者が他にもいるんだろう。神もそんなようなこと言ってたし。


 我がファラザード家は狩人一家とはいえ、季節(多少は暑くなったり寒くなったりの変化はある)によっては獲物も少ないので、お袋は家の近くで畑を耕し、俺ら兄弟はそれを手伝った。兄貴は十歳で狩人見習いになって、親父についていくようになった。

 住んでるところは町とはいっても、町はずれの畑エリア。人口も千人弱だかそれくらいだが、村よりはずっとましな町……だからマシナ? あの神か、このネーミングは。きっとそうだ。


 そして、俺も十歳になると、兄貴と交代で親父について狩りに出ることになった。

 狩りといっても、銃があったりするわけではなく、弓矢、ボーラ(錘が両端についた1mぐらいの紐、投げて獲物を絡めとる)、スリング(紐の真ん中に弾引っ掛ける布がついた投石器)といった道具を使ったり、罠で獲物を仕留めたりする。火薬はないが、世の中には「魔法」がある――親父も少しは魔法が使えて、焚き火の火種を出したり、明かりをつけたり、身体の汚れを綺麗にしたりとかいう「一般魔法ジェネラル・キャスト」というやつをいくつか覚えていた。

 魔法は結構範囲が広く、一般的な生活に使われる「一般魔法」、職能ギルドに加盟しないと習得できない「職業魔法ジョブ・キャスト」、そして専業魔導士にならないと使えない「魔導士魔法レベルド・キャスト」の三つのカテゴリーがある。

 そして、攻撃魔法は専業魔導士にならないと教えられない――専業魔導士は、一般魔法や職業魔法のように、一般人でも使えるような「簡易魔法」ではなく、もっと高レベルで威力の大きい「魔導士専用魔法」を使う。ゆえに、より高レベルな魔法を使うために、「ベーシック・コンバータ」という「魔力変換機構」を伝承している。これがあるとないとでは、魔力の使い方が全く違う。一般・職業魔法は魔法自体に簡易な魔力コンバータが組み込まれて、その場の発動だけでほぼ終了するが、ベーシック・コンバータは魔力を大量&継続して発生させ、大きな威力の魔法を発動させられる。


 ――親父は、狩りや生活に有用な一般魔法をいくつか知っているだけで、攻撃魔法が使えるわけではない。専業魔導士になるには「魔法学校」や「魔導士私塾」へ通って勉強して訓練をしなければならない。ここで一定の知識と技術を習得して、初めて魔導士のためのベーシック・コンバータが授与される。そのためには、年単位の時間と幾許かの授業料が必要となる。

 貧乏狩人のうちにはそんな金はなかったため、俺たち庶民が買えるのはせいぜい一般魔法程度。それですら、親父が金を一年貯めてやっと一つ買える、といった値段がする。便利は便利だが、ビンボー一家には相当なぜいたく品でもある。

 まあ、本当の貧乏人はそんな魔法を買う余裕もないから、それを思えばウチはまだ恵まれている。


 ……そうして狩りに随行するようになって二年ちょい、十三歳のとき。


 俺は、やっと転生前の記憶を取り戻した。


 きっかけは、狩りの際に遭遇した「大物」であった――一匹狩れば、家族が一ヶ月は食うに困らず、毛皮は通常の三十倍の値段にもなろうという、十年に一度の超大物の、ヨロイイノシシ。

 全長は三メートルを超え、体重は想定1トンクラス、頭に鎧のような硬い表皮をもち、体当たりで巨木をなぎ倒すほどの巨躯で、並みの狩人なら十数人がかりでやっと倒せる、といった「森のヌシ級」である。


 ――普通なら、こんな大物にいきなり出くわしても、親父も俺も逃げるだけである。何せ倒せないから。

 あいつらも基本草食(奴らの主食は芋とか根菜類やキノコ、木の実)なので、人が視界に入っただけでは襲ってきたりはしない。

 だが奴は、「子供」を連れていた。縞々のウリ坊が三匹。そこらへんやっぱりイノシシだな。

 子連れの獣は、子供を守るため、他の獣に対して攻撃的になる時期がある。このヨロイイノシシも、丁度そんな時期だったのだろう――俺たちの方へ向き、前足でガツガツと地面を削る、突進前威嚇行動。


 ブオォォォォォォ――――――――ンッッ!!


 一声吼えると、ヨロイイノシシは、俺たちめがけて突進してきた。

 その巨体に、獣道は細すぎたが――ヨロイイノシシは構わず、左右の木をなぎ倒しながら俺たちの方へ突っ走ってくる。

 うわああああああ、荒ぶる神よ、鎮まりたまえー!


「ケン!」


 親父が、近くの木の枝に手をかけて、上から俺に手を伸ばす。

 俺は、それに手を伸ばし――間一髪、親父に引き上げられ、ヨロイイノシシのアタックを回避するが。


 ドズゥウン! ベキ、メキメキメキ……


 登っていた木が、ヨロイイノシシのアタックで根元から折られ、俺たちは再び地上へダイブさせられる。


「うわっ、やっ、やっべぇえええええ――」


 ヨロイイノシシが、少し先でUターンして、こちらを見ている――絶対俺を狙っている!


 そのとき、俺は世界がブレたように感じた。

 そして、「何かが俺に重なった」ように。


 それは一瞬で終わり、すぐに目の前の状況に注意が戻る。

 再び威嚇から、ヨロイイノシシが突進してくる――今度は登る木がない!

 俺は咄嗟に、親父がやったように、立ち上がって横へ大きく跳んで回避しようとした――が。


「あ、このっ、くそが!」


 服の背中に、枝が引っかかった――逃げようにもとれない。

 迫る地響きの方向には――巨大で、鋭く尖った牙を俺に向けたヨロイイノシシが、目の前に迫っていた。

 このままヨロイイノシシに跳ね飛ばされる――上手く行けば、跳ね飛ばされただけで済むが、牙に当たったら多分、即死。

 運よく避けられても、ヨロイイノシシに踏まれる――あの巨体の体重で踏まれたら、内臓吐き出して即死。

 ヨロイイノシシを避けて逃げる――背中の枝が邪魔で逃げられない!

 あ、これはダメだ――俺はそのとき、完全に「死ぬ」って思った。

 ゆっくりと、巨大な身体に見合わない小さな頭と、身体に見合った「巨大な牙」が迫ってくる――思わず、俺は手を前に差し出して目を閉じ、迫り来るイノシシの体当たりの衝撃を覚悟した。


 だが。


 「牙」が――「止められて」いた。

 俺の、掌で。


 ヨロイイノシシが言葉を話せたら、「なっ……馬鹿な!」とでも言ったかもしれない。

 それほどまでに非常識な、「ありえない」ことが起きていた。

 だが、俺には判った――掌の真ん中当たりに、小さな「壁」ができて、イノシシの「牙を受け止めていた」。

 その牙が「へし折れる」と同時に、目の前のイノシシの巨体が「宙に舞った」――そして、俺の後方へゆっくりと落下して――

 地震のような地響きが周囲の木々を揺らし、身を潜めていた鳥が一斉に、喚きながら逃げるように飛び立った。


 地響きが収まって数秒して――俺はゆっくりと、目を開いた。

 俺の右掌には……直径三センチぐらいの、小さな「円形の光」。


 そこで俺は、全てを思い出した。

 正しくは、「転生した俺が完全に目を覚ました」のである。


 ――ここは森の中で、俺一人――と思ったのだが。


「ケン!」


 数秒のち、親父の声が聞こえた――親父?

 ……ああ、そうだっけ、俺、こっちに「転生」したんだっけ。

 うん、思い出したっていうか――いやまあ、思い出した、で合ってるんだけど。

 こっちで過ごした「ケン」という別人が、やっと「俺」になったっていうか。

 記憶が混同されてちょっと頭の中がグールグルなりますが。


「ケン! 大丈夫か!」


 あ、はい、大丈夫です。「絶対領域」が守ってくれましたんで――なんて言おうもんなら、親父は「頭でも打ったか」って思うだろうなー。

 まあここは……。


「う、うん――こいつ、目の前で木の根っこかなんかに足引っ掛けたんだと思う。いきなり目の前ですっ飛んでいって」

「そうか――ケガはないな?」

「ちょっとかすり傷あるぐらい」


 背中の枝を取って、俺は改めて後ろに転がっている巨体を見る――死んではいないようで、ゆっくりと、ふらつきながら起き上がろうとしている。

 このまま止めを刺すべきか――いや。


「逃げるぞ。歩けるか?」


 親父の判断は正しい。こいつが死んだかどうかは、明日にでも確認に来ればいい。どうせこのあたりの狩人は今の時期は俺達だけだし、死んでいれば改めて回収すればいいし、生きていればどこかへ行く。

 今ここで、刺せるかわからない止めを無理に刺そうとするのは、ほぼ自殺行為だ。

 俺と親父は、その場を逃げるように離れた――子供がいたが、そいつらは放っておく。捕まえていけば、匂いを辿って俺の家まで奴が「押しかけて」くる。小型のイノシシならともかく、こんなのを敵にしたら、家ごと潰されかねない。


「……しかし危なかったな」


 ……しばらく早足で山を下り、町の入り口が見えるところまできて、俺と親父はやっと安堵した。ここまでくれば奴らも自分のテリトリーから外れるので、追いかけてくることはない。


「あいつが木の根に蹴躓いて思いっきりコケてなかったら、今頃俺たちはあそこでヌシに踏み潰されて、狼にでも食われていたかもしれんな」


 ――オッソロシーこと言わないでよおとっつぁん。

 ほんと、転生して気がついた途端、いきなりバケモノみたいなイノシシに踏み潰されて人生\(^o^)/オワタとか、マジシャレにもマジシャンにもならんわ。


 ――しかし、改めて〈絶対領域〉、マジチートだわー。

 あの一撃を完全に止めてたもんなー……いや、マジあれはほんと危なかった。ギリだった。

 ……うっわー、今思い出して、マジ寒気するわー。

 よく生きてたな俺。マジで褒めて遣わす。


 しかしなんだ、このテのチート転移とか転生すると、覚醒時にかなり高確率で凶暴な獣やら怪物に遭遇するような気がするんですけど、それはお約束なんですかね神様?


 ……へんじがない。ただのしかb……たわごとのようだ。


 まあいいや、とりあえず無事転生した。いや無事じゃなかったけど、転生完了した。

 よし、〈絶対領域〉使いこなそう。これは上手いこと使えば、絶対役に立つって。

 一〇〇ポイントスキルとはいえ、チートには違いない!

 だって完全に死んだタイミングのあれを生き残ったんだからな。これをチートと言わずしてなんと言うー。

 よし、これから異世界生活チート人生、じっくり楽しませてもらうぜ――っと!



『※ケンは前世の記憶を取り戻しました』

『※運命能力《絶対領域》が使えるようになりました』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ