死、そして転生(よくあるアレ) 1
「おめでとうございます。
あなたは死にました」
……暗い、音も何もない世界で、俺は突然そう告げられた。
ちょお待て。ちょお待てや。
俺死んだんか。死んだんか。ここはあの世か。あの世か?
大事なことなんで二度確認したが、もう一回確認すんぞ。
俺、死んだんか? そしてなにがめでたい。
「はい。これ以上ないというぐらいに、見事に死んでいますねー。店に並ぶ魚や肉と同じぐらい、十分死んでます。
日々の疲労蓄積で朦朧としてたところで、出勤時のラッシュにもまれて、駅で通過電車の前にポロンと。そしてドカンと。頭グシャーの内臓ドバーッてな感じで、見事にバラされて、もう周りもドン引きで。これだからホームドアないローカル駅はダメなんですよ」
人の死に様をチ○コポロンみたいに言うな。それと食材みたいに扱うのもヤメロ。
……とは言うてもなー……。
マジで死んだんか……。
「はい、それはもう。あ、死体、見ます? あなたですけど」
いらんわ、へこむわ。電車ボーンなんてロクな状態じゃないことぐらいわかるわ。
「ですよねー。電車も凹んでましたよ? でも中には『うわっちょっとどれくらいグロいか見てみよか』って方もいまして。見てゲロ吐いてましたけど。グロでゲロとかどんだけですかねー」
いーらーんー言うとるねん。電車より俺の方が凹んどるわ。
だいたい誰だお前。いきなり死んだ死んだって縁起でもない。
「まあ、縁起悪いとかいう以前にもう死んでますけど……ああそうですね、自己紹介自己紹介。
初めまして、神でーす☆」
軽っ。神、軽っ!
大丈夫かこの神。ものっそい不安になるわ。
異世界転生もので見るような、「全知全能にて全てワシにお任せぢゃ」みたいな威厳ある神じゃないんかい。もしくはうっかり女神だろ。
口ぶりからどうもチャラ男臭がプンプン漂うわ。
姿形は見えんのだけど、「そこにいる」っていう存在感は確かにあって、それが神たる存在の証なんだろうけど……存在感に対して、言動があまりにチャラくて軽い。
神の威厳忘れてきた?
「大きなお世話です」
……まあ「死んだから地獄池」とか言い出さなきゃいいんだけど。
んで、その神様が俺の死に様になんか疑問でもありますのん?
例えば『これは事故ではありません。明確な殺意を持った殺人事件です』とか?
「いえ、事故です。完全に。事件なんかじゃありませんよ。真実はいつも一つです」
さいですか……。
事件だったら誰かのせいにできるし、恨み言も言えるんだが、事故かー……高校生探偵も少年探偵も特命係も超常現象捜査係とかも出番ないのかー。
モ○ダーじゃないけど疲れてたんだな、俺。
「それなんですがね、まあ事故といってもあまりに不遇な事故なんで、ちょっと救済措置をとろうかと思いまして」
おお、神GJ! ネット以外にも神いるよ!
「ネット以外の神の方が多いですよ。それにあんなネ申と比べるとか、あまり不信心なこと吐かしますとマジ地獄落としますよ」
ぢごくはかんべんしてくださいデスマはもうけっこうデス。
「冗談デス」
……いや、俺死んでるからってデス絡みネタいらなくない? ひょっとして俺デスられてる?
「そのような意味で申し上げたのではないデス」
もうええっちゅーに。
それより、思うにただの死人であるところの俺にコンタクトとってきたってことは、なんか話があるんではないのデスかね。
「自分でも振ってるじゃないデスか……ってそれはもういいので。
えーでは本題に入りましょう。
狭間拳さん、あなたに選択肢を差し上げましょう」
洗濯死? いや選択肢?
「次はほんとに洗濯機に頭突っ込んで死ぬことになりますよ?
えー、あなたは本来の人生よりちょっと早すぎる死を迎えてしまいました。
本来、あの場所では他の人が死ぬはずだったのですが、その人が運命を自力で変えてしまったため、あなたが替わりに死ぬことになってしまったのです。まあ、とばっちりですね」
とばっちりかい! その運命曲げた奴呼んでこいや!
「まあね、人が自力で運命を捻じ曲げるなんてのはごくたまーにある話でしてね。そういう星の下に生まれたっていうか、運命改変能力を無意識に使ってるっていうか。そんで周辺が被害に遭うと。特に運の悪い人が当たります。
もうお解かりかと思いますが、それがあなたです」
嬉しくねえ超低確率当選だな、おい。
「そういう被害者って、他人に運命変えられてね、大抵はロクでもない目に遭うんですよ。中には被害者も運命改変できて、改変されたのをこれ幸いとさらに改変したりして被害を拡大する奴とか、その時彼の隠された力が発現した!とかで変な方向にやっぱり被害拡大させた奴とかもいたんですよ。ええ、全く同じ状況で、何千億回とか、何兆回に一回ぐらいですけど。
あなたにはそういうのなくて、すぐ死んでしまいましたけどねー。
そこで、私以外の神も『うーんこのケースはやり直しさせてやっていんじゃね?』って言うもんですから」
何その「運命が改変されたがその運命を俺がさらに改変!」とか「危険が俺の中の秘められた力を今、蘇らせた
!」みたいなの……中二病にしても重症すぎる。
そんなのが何兆回に一回って……あるんだな、そういうの。俺にはなかったけど。
いや俺のすぐ隣で起きてたけど。
はあ……なんとなく有り難いような有り難くないような。うーんこの不運。
「運命改変ではないですが、珍しい神の託宣ですので有り難がってください。
そういうわけでして、あなたには選択肢が用意されています」
どのような選択肢でしょうか。
「一つ、人生をやり直すために転生する。
同じ国の人間として、前回と同じぐらいのスタートでやり直せます。
ただし」
ただし?
「人生をやり直すにあたり、今回の死亡事故が想定外だったので、死亡事故見舞ポイントが支給されます」
……死亡事故見舞ポイント?
「はい。まあなんですか、転生するにあたり、人生プロフィールをちょいとばかりいじれる権利を差し上げようと、そういうことです」
それマジで言うてます? そマ言?
「略さない。マジデス」
それはもういい。でもマジですか? なんか「おまけつき人生」って?
「……そういうわけで、あなた方のいうところの『チート人生』というやつが、上手いこと送れることになるかもしれませんよと」
ウホッ、やったチート能力者ktkr!
まさかの俺にもチートばかし遅い春が!
「浮かれるのは解りますが、まだ説明途中ですよ。続きいいですか?
あなたには選択肢があります。
日本人としてもう一度チート人生を送るか、もしくは外国人としてチート人生を送るか、もしくは異世界でチート能力人生を送るか、どれか選びなさい」
……ちょっと待て、今ナニ言うた?