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私が愛した男

作者: 江夏鈴

短めです。

 最近、麻薬で捕まった芸能人が多いように感じる。昼のワイドショーを観ながら、なんとなく思い出した男がいる。私がかつて愛した男も薬をやっていた。

 その男は世をときめくアイドルだった。当時はそんなアイドルと付き合っていることに、鼻を高くしたものだ。―その男の名をKとしよう。Kはアイドルになるために生まれてきたかのような、太陽みたいに明るい男だった。そんな太陽みたいに明るい光がくすみ始めたのは、いつからだったのだろう。

 ある日、Kが麻薬所持の疑いで逮捕されたとのニュースが入った。Kと共に一般人の女も捕まったらしい。それはあまりにも突然のことで、私はテレビ画面からしばらく目を離すことができなかった。Kが麻薬をやっていたなんて全く気づかなかった。あんなにも近くにいたのに。Kは、逮捕後の検査から日常的に麻薬を用いていた疑いがあるようだった。私はKが用いていたのはコカインであったとアナウンサーが言っているのを、ぼんやりと聞いていることしかできなかった。

 結局、Kの麻薬使用は約三年前から続いていたものだった。三年前と言えば、Kの所属するグループが十周年を迎えた年だ。今思うと、Kの太陽みたいな明るい光がくすみ始めたのは、確かにこの頃からだったかもしれない。この頃のKは、太陽とは正反対の妖しい魅力があった。浮かべる笑みは、誘惑的な―それこそ麻薬のような笑みだった。それでも、ライブなどで客席から観るKの姿はアイドルそのもので、まさか麻薬をやっているなんて誰も思っていなかっただろう。

 当時の私はこのKの裏切りに、これでもかというほど傷ついた。「愛している」と囁いた時も、私を「大事に思っている」と言った時も、「俺を信じてついてきて」と微笑んだ時も、私に隠れて麻薬をやっていたと思うと許せなかった。あんなにKを愛していたのに、どうしてと、何度も何度も泣いた。

 と、ここまで思い出したところで、私は気づいてしまったことがある。当時は、Kが私の知らないところで、麻薬をやっていたという事実を受け止めるのに必死で、気づくことができなかった。できれば、この疑問に死ぬまで気づきたくなかった。

「―果たして私は本当にKと付き合っていたのだろうか?」

 まず、Kの逮捕をテレビのニュースで知ったのはなぜだろう。付き合っていたならば、電話などで連絡が来るのではないだろうか。そして、私と付き合っていたならば、Kと共に女が逮捕されたのはなぜだろう。Kが浮気していたといえばそれまでだし、ただ一緒に麻薬を楽しむ仲間だっただけかもしれないが、疑問は残る。私がKのライブを客席から観ていたのはなぜだろう。付き合っていたならば関係者席で観るのではないだろうか。他にも気になる点は何点もある。そもそも恋人にバレないように三年も麻薬使用を続けることは可能なのだろうか。

 なぜ、私は気づかなかったのだろう?

これも一年前に書いたものです。

リアコは怖いですね。


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