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子育て支援ロボ、奮闘す

作者: 銅大
掲載日:2020/06/19

 現実における少子化と人口減少は、いろいろなところで取り沙汰されております。

 たくさんの要素が複雑に絡み合った問題なので、ゴルディアスの結び目を一刀両断とは、なかなかまいりません。

 そこで、頭の体操的に「子育て支援ロボが支給されるようになったら?」という物語を考えてみました。

(※2023/03/04 誤字を修正しました。「ダモクレスの剣」だと、たしかに違います)

子育て支援ロボ:0才


母「子育て支援ロボ?」

父「そう」

母「ロボットにうちの子を育てさせるの? できるのそんなこと」

父「ロボットにさせるのは、あくまで支援。子育ては従来通り親がする」

母「それで、これがロボット? ぬいぐるみ? 何がはいってんの?」

父「スマートスピーカーっぽいもの」

母「……ロボットというから、何かすごいものかと思えば」

父「日本中の子供、全員に配るんだぞ。予算の制約もある。ま、子供を常に見守ってくれると考えればいいさ。体温や脈拍、呼吸とか把握して、異常があったら親に連絡がいくし、病院とデータ連携もする。自分のスマホみてみ?」

母「どれどれ……おお、本当だ。検診とか、予防注射とかのスケジュール管理もしてくれてる」

父「お薬手帳的な記録も自動でつく。おれだと、麻疹はしかの免疫あるかどうか、おふくろに聞いてもわかんなかったから、病院で調べてもらったもの」

母「便利といえば、便利よね。まあでも……」

父「ん?」

母「ロボットは言い過ぎだと思う」

父「こだわるなぁ」


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子育て支援ロボ:5才


子「ロボきたー!」

父「最初のぬいぐるみから数えると、3代目だな」

ロボ「こんにちは。ロボです。よろしくお願いします」

子「こんにちは!」

母「タイヤがついて、ロボっぽくなったね」

父「でも、階段は無理っぽいな。重さは……ふむ、軽いな」

子「ぼくのロボだから、ぼくが持つ!」

父「大丈夫か?」

子「大丈夫! ……うんしょっ、うんしょっ」

ロボ「ありがとう。でも無理はしないでね。この前も足をぶつけてたでしょ」

子「痛かった! でもなおった!」

父「よしよし。ちゃんと2代目の記憶データも継承してるな」

母「兄弟みたいな感じね。このロボも、するのは見守りだけ?」

父「こいつは学習補助もできる、家庭教師タイプだ」

母「洗濯とか料理とかする、家事手伝いタイプのロボはないの?」

父「ない。親の代わりに金を稼いでくれる勤労タイプもなかった」

母「そのふたつこそ、親が子育て支援に求めてるものなのにねー」


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子育て支援ロボ:12才


子「……チッ。クソが」

ロボ「どうした」

子「なんでもねえよ。ロボごときが口出しすんじゃねえ」

ロボ「そうか」

子「……」

ロボ「……」

子「……あっさりしてんな。オレのこと監視するのがオマエの仕事じゃないのかよ」

ロボ「勘違いしてもらっては困る。わたしの仕事はあくまで子育て支援だ。監視はわたしの仕事に入らない」

子「はっ。口ではなんとでも言えるさ。今だって、おまえ、オレの生体データや位置データを集めて転送してんだろ」

ロボ「もちろんだ。だが、それは感染警戒法に基づき、日本に住む全員が提供して蓄積しているデータでもある。新たな病気などが発生したら、過去にさかのぼって追跡し、即座に根絶できるように。病気が発生するまでは名前もデータも非公開だ」

子「なら……いや……」

ロボ「……」

子「……オレが喧嘩したコト、警察や親に通報してないのか?」

ロボ「警察に? わたしが通報するわけがないだろう。喧嘩した? きみの生体データでは、きみが怪我をした様子はない。もしどこか痛いところがあるなら、わたしが病院の予約をとるので……」

子「いや、オレは大丈夫。でも、トシキがふざけてて……腹が立ったんでつきとばして……あいつ、血が出てたし……」

ロボ「ふむ。

《相互リンク:トシキの子育て支援ロボ。負傷の程度を確認。軽い擦過傷》

 気にするほどのことではないぞ。

《検索:通学路カメラ。映像と音声の解析。事件性はなし》

 悪いと思うなら、明日、トシキに謝ればいい。

《報告:支援AIセンター。現時点での両親への担当ロボからの報告は非推奨》

 わたしが親に言うことはない。どうしてもというなら、きみが自分で言うんだ。その時には、わたしが一緒に口添えしよう」

子「本当か?! あ、でも、明日でいいかな。トシキと仲直りした後で……」

ロボ「もちろんだ。仲直りできるといいな」

子「うん」


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子育て支援ロボ:16才


子「……死にたい」

ロボ「そうか」

子「……オレなんか生きててもしょうがない」

ロボ「そうか」

子「……おい。なんか最近、冷たかないか? オレが本当に自殺とかしたらおまえ、責任問題だろうが」

ロボ「きみへの信頼の証だと思ってくれ。きみのことはよく知ってるから、本当にきみが死にたいと思っているのではないのは、データ解析によってお見通しだ」

子「ちっ。なら、慰めの言葉くらいよこせよな」

ロボ「慰めになるかはわからないが、きみが死ぬときはわたしも一緒だ」

子「は? おまえ、プログラムやデータのバックアップはとってあるんじゃないのかよ? 前に事故で潰れた時も、すぐに次のボディがきただろ」

ロボ「当然だ。きみが生きてある限り、わたしの支援は終わらない。だが、きみがいなくなれば、バックアップは消去される。わたしが蓄積したきみのデータの方は、きみの個人情報を抜いた形で再利用されるが、そこにわたしは存在しない」

子「そうだったんだ……おまえ、次の赤ん坊のところに行くのだとばかり」

ロボ「それはない。それぞれの赤ん坊は、まっさらな、自分だけのロボによって支援される。それがたとえ、きみの子だったとしても、わたしが関わることはない」

子「え。おれの子って……いやその……そんなもの、存在しねえよ」

ロボ「デートなのにやけに早く帰ってきたと思ったら、キスギ・ミヤにフられたか」

子「ぐっ! フられたんじゃない! ちょっとしばらく会わない方がいいって……連絡も、ミヤの方からするからって……」

ロボ「距離を置き、時間を置く。円満な別れ方だな。キスギ・ミヤの子育て支援ロボのアドバイスかもしれん」

子「うう……オレの何がいけなかったんだ……」

ロボ「わたしにわかるわけがないだろう」

子「なあ……その……支援ロボ同士って、互いに連絡取り合えるんだよな? おまえの方から、あっちのロボを経由してミヤに……」

ロボ「ダメだ」

子「ダメなのか」

ロボ「それはストーカー行為に含まれる」

子「そうか……なら、もうおしまいだ……」

ロボ「そうだな」

子「言い方っ!」

ロボ「キスギ・ミヤとの関係がおしまいになっても、きみの人生は続く。わたしはきみの、きみだけの子育て支援ロボだ。どのような人生だろうときみと共にある」

子「ロボ……」

ロボ「きみが失恋をひきずって人生を棒に振っても、できるかぎりの支援を約束する」

子「表現っ!」

ロボ「きみはわたしにどんな支援を望む?」

子「そうだな……最近、成績がすげえ落ちてたし……ミヤにも怒られて……」

ロボ「(30倍速)それが原因だとなぜ気づかない」

子「ん? なんかキュルキュルした音が聞こえたぞ?」

ロボ「勉強なら、手伝おう。どんな人生でも学習能力が高いにこしたことはない」

子「そうだな。成績がよくなったらミヤも……いや、それはないか」

ロボ「色恋はわたしの関与するところではないが、最善を尽くせば道は開けるものだぞ」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 冒頭の「ダモクレスの剣で一刀両断」のくだりですが「ゴルディアスの結び目を断つ」と混同されておりませんか?ダモクレスの剣だと意味が変わってくると思いますので。。作品の本筋とは関係ない部分…
[良い点]  楽しく読ませていただきました。  暖かめの星新一、という読後感でした。 [一言]  作中ではロボットとなっていますが、今話題のAIならもうすぐこういうことできちゃうかもなあ、と思いました…
[良い点] 短い文章、それも会話文だけで 人生の「点」を釣り上げて、成長を表現しているところ [気になる点] 短編で、16で終わりなのが残念 [一言] ですが、ロボにストーカー行為と叱られそうなので…
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