子育て支援ロボ、奮闘す
現実における少子化と人口減少は、いろいろなところで取り沙汰されております。
たくさんの要素が複雑に絡み合った問題なので、ゴルディアスの結び目を一刀両断とは、なかなかまいりません。
そこで、頭の体操的に「子育て支援ロボが支給されるようになったら?」という物語を考えてみました。
(※2023/03/04 誤字を修正しました。「ダモクレスの剣」だと、たしかに違います)
子育て支援ロボ:0才
母「子育て支援ロボ?」
父「そう」
母「ロボットにうちの子を育てさせるの? できるのそんなこと」
父「ロボットにさせるのは、あくまで支援。子育ては従来通り親がする」
母「それで、これがロボット? ぬいぐるみ? 何がはいってんの?」
父「スマートスピーカーっぽいもの」
母「……ロボットというから、何かすごいものかと思えば」
父「日本中の子供、全員に配るんだぞ。予算の制約もある。ま、子供を常に見守ってくれると考えればいいさ。体温や脈拍、呼吸とか把握して、異常があったら親に連絡がいくし、病院とデータ連携もする。自分のスマホみてみ?」
母「どれどれ……おお、本当だ。検診とか、予防注射とかのスケジュール管理もしてくれてる」
父「お薬手帳的な記録も自動でつく。おれだと、麻疹の免疫あるかどうか、おふくろに聞いてもわかんなかったから、病院で調べてもらったもの」
母「便利といえば、便利よね。まあでも……」
父「ん?」
母「ロボットは言い過ぎだと思う」
父「こだわるなぁ」
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子育て支援ロボ:5才
子「ロボきたー!」
父「最初のぬいぐるみから数えると、3代目だな」
ロボ「こんにちは。ロボです。よろしくお願いします」
子「こんにちは!」
母「タイヤがついて、ロボっぽくなったね」
父「でも、階段は無理っぽいな。重さは……ふむ、軽いな」
子「ぼくのロボだから、ぼくが持つ!」
父「大丈夫か?」
子「大丈夫! ……うんしょっ、うんしょっ」
ロボ「ありがとう。でも無理はしないでね。この前も足をぶつけてたでしょ」
子「痛かった! でもなおった!」
父「よしよし。ちゃんと2代目の記憶も継承してるな」
母「兄弟みたいな感じね。このロボも、するのは見守りだけ?」
父「こいつは学習補助もできる、家庭教師タイプだ」
母「洗濯とか料理とかする、家事手伝いタイプのロボはないの?」
父「ない。親の代わりに金を稼いでくれる勤労タイプもなかった」
母「そのふたつこそ、親が子育て支援に求めてるものなのにねー」
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子育て支援ロボ:12才
子「……チッ。クソが」
ロボ「どうした」
子「なんでもねえよ。ロボごときが口出しすんじゃねえ」
ロボ「そうか」
子「……」
ロボ「……」
子「……あっさりしてんな。オレのこと監視するのがオマエの仕事じゃないのかよ」
ロボ「勘違いしてもらっては困る。わたしの仕事はあくまで子育て支援だ。監視はわたしの仕事に入らない」
子「はっ。口ではなんとでも言えるさ。今だって、おまえ、オレの生体データや位置データを集めて転送してんだろ」
ロボ「もちろんだ。だが、それは感染警戒法に基づき、日本に住む全員が提供して蓄積しているデータでもある。新たな病気などが発生したら、過去にさかのぼって追跡し、即座に根絶できるように。病気が発生するまでは名前もデータも非公開だ」
子「なら……いや……」
ロボ「……」
子「……オレが喧嘩したコト、警察や親に通報してないのか?」
ロボ「警察に? わたしが通報するわけがないだろう。喧嘩した? きみの生体データでは、きみが怪我をした様子はない。もしどこか痛いところがあるなら、わたしが病院の予約をとるので……」
子「いや、オレは大丈夫。でも、トシキがふざけてて……腹が立ったんでつきとばして……あいつ、血が出てたし……」
ロボ「ふむ。
《相互リンク:トシキの子育て支援ロボ。負傷の程度を確認。軽い擦過傷》
気にするほどのことではないぞ。
《検索:通学路カメラ。映像と音声の解析。事件性はなし》
悪いと思うなら、明日、トシキに謝ればいい。
《報告:支援AIセンター。現時点での両親への担当ロボからの報告は非推奨》
わたしが親に言うことはない。どうしてもというなら、きみが自分で言うんだ。その時には、わたしが一緒に口添えしよう」
子「本当か?! あ、でも、明日でいいかな。トシキと仲直りした後で……」
ロボ「もちろんだ。仲直りできるといいな」
子「うん」
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子育て支援ロボ:16才
子「……死にたい」
ロボ「そうか」
子「……オレなんか生きててもしょうがない」
ロボ「そうか」
子「……おい。なんか最近、冷たかないか? オレが本当に自殺とかしたらおまえ、責任問題だろうが」
ロボ「きみへの信頼の証だと思ってくれ。きみのことはよく知ってるから、本当にきみが死にたいと思っているのではないのは、データ解析によってお見通しだ」
子「ちっ。なら、慰めの言葉くらいよこせよな」
ロボ「慰めになるかはわからないが、きみが死ぬときはわたしも一緒だ」
子「は? おまえ、プログラムやデータのバックアップはとってあるんじゃないのかよ? 前に事故で潰れた時も、すぐに次のボディがきただろ」
ロボ「当然だ。きみが生きてある限り、わたしの支援は終わらない。だが、きみがいなくなれば、バックアップは消去される。わたしが蓄積したきみのデータの方は、きみの個人情報を抜いた形で再利用されるが、そこにわたしは存在しない」
子「そうだったんだ……おまえ、次の赤ん坊のところに行くのだとばかり」
ロボ「それはない。それぞれの赤ん坊は、まっさらな、自分だけのロボによって支援される。それがたとえ、きみの子だったとしても、わたしが関わることはない」
子「え。おれの子って……いやその……そんなもの、存在しねえよ」
ロボ「デートなのにやけに早く帰ってきたと思ったら、キスギ・ミヤにフられたか」
子「ぐっ! フられたんじゃない! ちょっとしばらく会わない方がいいって……連絡も、ミヤの方からするからって……」
ロボ「距離を置き、時間を置く。円満な別れ方だな。キスギ・ミヤの子育て支援ロボのアドバイスかもしれん」
子「うう……オレの何がいけなかったんだ……」
ロボ「わたしにわかるわけがないだろう」
子「なあ……その……支援ロボ同士って、互いに連絡取り合えるんだよな? おまえの方から、あっちのロボを経由してミヤに……」
ロボ「ダメだ」
子「ダメなのか」
ロボ「それはストーカー行為に含まれる」
子「そうか……なら、もうおしまいだ……」
ロボ「そうだな」
子「言い方っ!」
ロボ「キスギ・ミヤとの関係がおしまいになっても、きみの人生は続く。わたしはきみの、きみだけの子育て支援ロボだ。どのような人生だろうときみと共にある」
子「ロボ……」
ロボ「きみが失恋をひきずって人生を棒に振っても、できるかぎりの支援を約束する」
子「表現っ!」
ロボ「きみはわたしにどんな支援を望む?」
子「そうだな……最近、成績がすげえ落ちてたし……ミヤにも怒られて……」
ロボ「(30倍速)それが原因だとなぜ気づかない」
子「ん? なんかキュルキュルした音が聞こえたぞ?」
ロボ「勉強なら、手伝おう。どんな人生でも学習能力が高いにこしたことはない」
子「そうだな。成績がよくなったらミヤも……いや、それはないか」
ロボ「色恋はわたしの関与するところではないが、最善を尽くせば道は開けるものだぞ」




