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「いや~。あの後、こっぴどく怒られたと思ったら、こうして眠ってしまうもの。これは自分はかなりの親不孝者だよな。今はゆっくり休ませてあげよう。」
「そうですよ。ちょっと不可抗力で父さんの手錠をかけて、半永久的に取れないかもしれませんけど、」
折原真央は意識を失っていた。あの後に二人に大きくふくれあがる程のたんこぶを作った後、倒れてしまった。そのまま病院に運ばれ、大事には至らなかったものの、怪我と過労から来る肉体的ダメージの限界を遥かに超えてしまい、あれから数日間ずっと眠り続けている。
驚異的な回復力を見せた登は嘘をつけない椿から『炎人化』した自らの行いを聞いた。自分にはそんな馬鹿げた力が眠っているもののことを。それで悪人は止めたものの、隣にいる彼女にまで襲いかかってきた事は深く悔やんでいた。
「そんなに気にしないでいいよ。私の事は。」
この言葉が無かったら、どこまで自分を責め続けてきたのだろうか。彼女には感謝しても仕切れない。
「それより、お母さんのお見舞いに行こ。自分には実の地で繋がった肉親はいないから……。」
その言葉に殺されかけた。
そうだ。彼女の唯一の肉親存命の可能性がたった一人の男のくだらない復讐のために使われたのだ。俺なんかより彼女には見えない
「本当に。もうっ。」
考えすぎる自分に、彼女の一本の柔らかい人差し指をの唇にあてた。彼女の鼻と鼻とがくっつく程度まで
「一人で背負い込みすぎだぞ。登は。」
あれっ。心の声が漏れていた。
○ ○ ○
「くそ。復讐してやる……。」
警察書から拘置所へ、パトカーで護送中の復讐魔の男は終始ぶつぶつ呟くように言っていた。
そんな餓鬼の周りがふっと黄色く光った気がした。
「届いたかな?黄色い光の中で開けられたプレゼントを。」
スコープ越しに遙か彼方のはじけを隠さずに居られない惨状を確認した。
それを確認した後、弾を銃から抜き取り、引き金を前後に二つあり、銃口も上下に並んでいる奇形銃を床に置き、窓に乗り出して空を見上げた。星がよく見えた。
その男の名は通称“黄色い驚嘆”
数時間後。怪盗×の狂言と軽はずみに黄色い驚嘆の名前を使った元警視の空本天筏が護送中に遠距離から射殺されたニュースが全国に報道された。
○ ○ ○
登達が帰った後は心電図の波が揺れる音と点滴がこぼれる音しか聞こえない。
ガラッ
面会時間がとうに過ぎている深夜に扉が開いた。ここまでに通るナースステーションの誰にも気づかれることなく、見舞いの花束を持った男が入ってきた。
「本当に無茶しやがって……。昔から少しでも目を離すとすぐにこうなる、十五、六年前からずっとだ。」
ちょっとした棚の上にある空の花瓶に花を移し替える途中、ふと横にある紅い小指ものの物体に気がついた。
それはずっと十五年間最後に奴をみた時から離さずに持ち歩き、先日には役だった小さいアーミーナイフだった。
「懐かしいな。これ。ちゃんと大切にしてくれていたんだな。」
回転させながら、刃を出し、そして収納する動作を数日繰り返した。そしてそっと、元のあった場所に返した。
「本当に毎日冒険しているような、危ない奴にはこれが欠かせない。」
と言った感想を続けつつ、眠っている折原の顔をそっとなでた。
少しその寝顔を見つめた後、黙って静かに足を動かした。
「娘の面倒をありがとう。」
一歩立ち止まり、白仮面の素顔を見せながら、寝ている彼女にただそれだけ言って立ち去った。
翌日――。
病室に入った男女の高校生は昨日無かった花に驚き、目を開けた女刑事はそれを見て微笑んだ。
※ ※ ※
無いはずの左腕の先が痛み、何か心の何処かがポッカリと失ってしまった十五になった少女に、生きていたら自分の母ぐらいの年齢の刑事が尋ねてきてそれを渡してきた。
とてもとても古い携帯端末。
その電文は途中でプツンと中断されたようにかかれていたが、最後に書き加えられた一文に心が動いた。
“×”を伝えるしかないお父さんは、より一層に生まれてくる子が“×”を乗り越えて、色んな“○”が付いてくる人生を歩んで貰いたい。誰にでも誇れて信用できる人と共に、道筋の“答え”を沢山見つけて貰いたい。
蛙嫌いの快盗answerは“○”となる答えを見つけ出すために、アポ無しで今日から行く。
これにて第一章は終わりです。ありがとうございました。




