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「よし。完成だ。」

 一昨日、登を相手に実験が成功している罠を屋上に仕掛け終わった椿もとい快盗answerは、今から来る怪盗×の姿を捕らえるのに神経を尖らしていた。

 時間がギリギリだったのは間違いない。警備が厳しかった所は快盗スーツの光迷彩を使って慎重に進んだ。下の状況は盗聴器を持っていないから晩餐会を含めた進行状況はよく分からないが、勘ではもう現れても言い頃だろう。

屋上ヘリポートに設置された堕とし穴は、一目見て上からは全然穴を開いているようには見えないが、踏み込んだら隠されていた深い穴に落ちてしまう。落ちたところに蓋をすれば、生け捕りの完成だ。

 ふふふ。手の内を聞かせた登には丸一日眠り込んで貰っている。あの後、私もガスを吸い込んで眠りかけたけど。危なかった。ここに連れて行くわけには……。

「居るけど。」

 また、心の声が漏れていた。くそう。

声のする方へ振り向いたら、すぐ横に手錠のあいつがいた。

知らぬ間にテレパシーで逐次伝えているのか……。いや、スマホの代わりに古い携帯に移植した測定器にメダリア反応は出ていないし……。大丈夫。私は超能力者ではない。

ぼさぼさで寝癖頭で、服も昨日の制服のままで、いかにも寝不足でとてもイライラしている。

 怖い。あ~。怒られるよな~。あんな乱暴な事をしてしまうと……。


「あそこまで言ったのなら、手伝わさせろよ!」

 へ?

 快盗answerの気の抜けた反応に、登は続けた。

「ただ、一度も会ったことのない実の父親に会いたいだけなんだろ?なら、怒る必要性がどこにあるんだ!」

 ああ。そうだ。

 気づいた。いや、気づかされた。

 ただ、単純に言えば良いだけだったんだ。何か変に気を遣わせて黙って出ていたのは間違いだった。目の前にいる彼は優しく私をギュッと抱きしめてくれた人なんだぞ。私の思いを尊重してくれたはず。

「登……。」

「ほらほら。いつの間にか君が自分を呼ぶ言葉が登になっているし。安心しろよ。椿。」

 登は椿に言葉を言うのがもうためらっていなかった。少し心が揺れるように動いているが。

 椿は登の近くに居たかった。たった数メートルが広い砂漠を挟んでいるように思えた。

 二人の距離は段々近づいていく。


 バン

 屋上に続く

 二人とも我に帰り、慌てる。

 夜で少しの照明でしか姿は分からないが、二人とも凝視した先には白仮面で黒マント。黒装束の男がいた。

 間違いない。怪盗×だ。


 そして。

 ヘリポート上に立っている二人の姿に向けて、火柱を突きだした。


○  ○  ○


 バン

 屋上への扉が開かれた。

 折原警視と白髪のSAT隊員達だ。これらは屋上に火の手が出るとスナイパーから報告が来る前に怪盗×の行動パターンを読み、行動していた。

その割に到着が少し遅いのは、あまりにも鈍足な上司がいたおかげ。


 そして数分後……。

 屋上に立っているのは二人だけしかいなかった。周りには横たわる黒炭の屍、

 そして、化け物が一体――。


「たく……メダリア反応無くて、これまで手も足も出ないとは……。あれが『炎人』?」

「いいや。『炎人』とは少し違う。二つのペブロを用いて、計測器に反応させないようにしているだけだ。」

 手に銃を持った折原は気持ちが浮いている一方の金髪の野郎を訂正した。折原の手には、改造を受け、戦後のメダリア研究・生産・使用禁止の三原則政策の元、法の整備の中、国家権力の抑止力として生き残った愛銃『ナメクジ』を握られていた。

 折原は、キッと仲間の屍の向こう側に立つ、黒マント・黒装束の男を睨んだ。白仮面は外しており、素顔が露わになっていた。手からは発火し、火の玉が形成されている。体内エネルギーをペブレ越しにメダリア変換した結果だ。

 思い出した。

 あまりにもあっけなく倒された身体が大人のガキが、十五年ぶりに目の前に立っていた。

 そうだ。あいつが世間から姿を隠した最後の時と同じく仲間を殺した――

「たく。出来の悪くて殺した兄を今まで感謝しきれないものだ。」

「まさか戦争の混乱に紛れて、双子の兄に手をかけていたとはな。下劣極まりないぞ。空本天筏!!」

「気づかないのが悪いんだよ。まぁ。指紋などを記録したデータを無くせば、肉親も居ない天才俺が本物の兄かも分からないだろう。」

 ケラケラ笑っている。

「アトーに関与している関係機関へ自らを灯台にさせて、警察の目を誘導させた怪盗×を参考にした。最終的には俺から、アトー軍団の“光”侵攻の際の情報を入手して、政府に渡して影の英雄とされているあの忌々しい男の真似をな。それで、あいつの娘と仲間を殺…。」

 バン

「何言っているんだ!おめぇ…。」

 一発、金髪の構えた銃から一筋の硝煙が銃口から出た。軽い錯乱状態から徐々に怒りがあふれ出してきた。死角から無残にも火の玉で隊長や相棒を焼き殺した獣に向かって。

 天筏の眉間には弾丸が命中した。

 大きく体を後ろに仰け反らせていくがピタッと止まり、

「フン。」

 ぐるっと状態を起こし、にやついた顔を見せるだけだった。

高階級のメダリア変換に耐えられるように、全身を包み込む見えない鎧が発生している奴には通常の弾丸はいとも簡単に弾いていた。結果、ただアザを付けたに過ぎない。

「この!汚い猟犬共が!」

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