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「危ないよな。いきなり撃て来るなんて。」
天才創業者は済ました顔で言ってくる。
「なら、手から出ている炎は一体何なのですか?」
折原は『ナメクジ』構えつつ、目の前に立っているペブロを二つ着けている超能力者を見ていた。
取り押さえようとしていた二人の警官は、奴の能力を見た途端、くるりと向きを変えて逃げ出していた。懸命な判断だ。
正面に向かって折原は対峙した。
「お前が焼き殺したんだな。ビル内部の惨状は。」
「そうだ。」
「何故だ。」
「何でって邪魔だったし、僕の大事なデータを守るのは一人で十分だったし。そんな輩は一人で殺せるし。」
やはりこいつ。最初から一人で怪盗×を殺すつもりだったか。
後ろでは若い巡査が背負っているメダリア測定器の数値を熱心に見つめているが、指針が零を指したままだ。なぜこの超能力者はメダリア反応を見せず、
「そいつは、ペブロでメダリア変換した際に空気中に流れる “波”を測定しているんだろ。ならば左右対称に二重変換させて波を相殺すれば、攻撃力数十倍で」
「それは、誰に聞いた。」
「これをレンタルしている契約でね。取り敢えず秘密だ。」
答えは分かりやすい。メダリア研究をしているところは知り合いの居る日本の民間研究所他には東京を攻撃してきたあいつら関連だ。
「でも、ツインメダリアは……。」
「話を聞くところによると、体の神経伝達が僅かにずれると変換されないか、暴走して激痛と爆発を呼ぶらしい。と友達に聞いた。」
いつの間にか、手錠姿の白仮面で黒マントの怪盗×が隣に立っていた。部下達は
「てめぇ。いつの間に……。」
振り返った探田は怪盗×を捕まえようとするが、今まで見たことのない仮面越しの真剣の様な視線に動じてしまった。
「気をつけろ。常人の上回る力が出る分、身体の方もその力に体が耐えられるように見えない鎧で守っている化け物だと思え。」
「あなたはどうなんだよ。化け物みたいな人の心を読めるのは……。」
「俺は体質だ。そのままの意味で心が読める。」
「そんな訳あるか。」
即決した。
「目の前で、メダリア反応せずに超能力を使った証明がされているのに……?」
「……………。」
「だから。俺がやるよ。」
呆気に取られたまま、自由の少ない手錠をはめられている快盗は言った。
「いやいや。犯罪者に逮捕させるなんて……。」
今さっきまで自由勝手に言っていた奴が何を言い出す。少し本気な顔になっているけど。何で余裕のない引き締まった顔になっているんだ……。
「ほぅ。ここまで馬鹿げた、初めてワンマンヒーロー気取りの奴を見た。いいぜ。」
あの殺人者。何で乗り気なんだ……。頭が一つ抜けているもの同士は惹かれるモノがあるのか?頭が痛い。
「いや。あのいかれた野郎は私が絶対に生け捕りをする。そして法の定めの元、裁決を公衆の面前で裁きを下す。それが私達の仕事だ。」
折原は俯きながらも顔を上げて白仮面に向かって怒鳴った。こいつにかしこまる態度は要らないと思うが、思いはぶつけておこう。だから、仕事の邪魔をするな!
そこに誰も居ない。
「おーい。こいつ、気絶させたから宜しく。」
離れた所で手錠を掛けた奴が手を振っている。足の下には殺人者がのびていた。
「ちょっと。いつの間に……。」
「あれだよ。お前が青臭い事を言っている時に注目していたの時の隙を突いて、ペブロを釘で刺して使用不能にして超能力を封じ、俺らと同じスペックになったところを蹴る!KO!以上。」
「そこまで上手くいくとは……。」
「空間捕縛術がいかに超能力者確保に有効なのは分かっているかな。要するに対象者の意識を奪うか、ブレスレットを砕くかの二択じゃん。」
何で今、そんなことを言う。
「あ。そうそう。これらをそれぞれメモに書いている宛先に渡しておいてくれ。」
急に投げつけられた。中身は古い携帯端末にUSBメモリに紅い小さなアーミーナイフ。
「最後のアーミーナイフはお前にあげる。いざというときに便利。じゃっ。」
「ま……。」
黒マントを翻した怪盗×はまた何処かへ消えてしまった。




