表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/13

最終話

「ん?……ここは?」


 少しずつ意識を取り戻す少年は、視線だけであたりを見渡す。

 窓も扉も換気口もない。真っ白な壁に真っ白な床と全てが白一色に染められた部屋。

 部屋はただ白いだけで何もない。だが、少年はこの部屋を知っている。


「確か、ここは神様の」


 少年ことマレが死んだ直後に神様に連れてこられた場所。

 でも神様の姿は何処にも見えない。


「しかし何故にまた此処に?」


 現実の世界でマレは死に、魂だけの状態で此処に来た。

 しかし、魂はこの世界で王に消された。

 つまり自分は完全に消滅したということ。なのに、まだ此処にいる。

 世界は違うが、まだ生きている。


「一体、どうなって……え?」


――刹那――


 世界が点滅した。

 白、黒、赤、黄、緑、赤、青、と次から次へと新しい色で塗りつぶされていく世界という黒板。

 マレの視界に展開した光景は――、


「これはっ!」


 病院の一室。

 ベットの上で眠る一人の少年。

 その周りで泣く人たち。


「父さん……母さん……シエル……」


 少年の周りで泣き続ける人たちは、マレの家族。

 つまり……ベットの上で寝かされている少年は、


「僕か」


 病院に運ばれて死んだ。


 だけど実際は違う。

 魂だけがこの別世界に行ったんだ。

 神様に生き返るチャンスを貰った。

 でも自分は……


「僕は何てバカなやつなんだ……」


 今更ながら自分がしたことに後悔する。


「死んで家族を泣かして……あちらの世界じゃ仲間を殺して!」


 マレの心のなかで、アプリケーションワールドがゲームみたいと思っていた。

 主人公は自分。

 クリーンの戦いの時、負けるはずだったのに奇跡が起こり勝利した。

 奇跡は主人公の特権。

 王相手でも奇跡が起こり、また勝利を掴めると思った。


「唯単に死んだと認めたくなかっただけじゃん! 現実逃避してただけじゃんかよ!」


 拳を強く握り締め、、


「会いたいよ……父さん、母さん、シエル」


 呟く、


「会いたいよ……テッラ、クリーン」


 叫ぶ、


「会いたいんだぁぁぁぁぁ!」

「ラストチャンスです」


 声と同時に目の前が光り輝き、目を開けられないほどの光に目を閉じた。

 そして光はゆっくりと消えていった。

 マレは光が消えた事を感じ取るすぐに、現れたであろう彼女の元に駆け寄る。


「神さま……僕は……」

「何も言わないでくださいです。貴方の想い、考え、何をしたいかは分かっているのです」


 腰の下まで届く真っ白な髪に真っ白なワンピース。

 髪と服と同じ色の瞳でマレを見上げる、


「そして私からも謝らなければいけない事があります」

「え?」

「私は神じゃないんです。この世界の管理を任された者。管理者なんです」


 少女は言う、


「そしてこの世界は……」

「神様、いいですよ。そんなこと」

「え?」

「それ僕が今するべき事と関係はないですよね? この世界が何なのか興味がないと言えば嘘になります」


 マレは言う、


「でもその前に僕にしか、僕がやらねばならない事をします。だから、神様……ううん、君の名前を教えてください」

「ひかり」

「知っていると思われますが、僕はマレ」

「知ってるのです」


 二人は顔を見合わせて、ははっと小さく笑う。


「では、ひかり……ラストチャンスをお願います」

「全力でやるんです。本当にこれがラスト」

「はい」


 マレはそう答えて、ひかりに背を向ける。


「行ってきます」

「いってらっしゃい」


 失いそうになる意識の中、マレは決意する。

 今度は誰もが笑い、誰もがハッピーでいられる自分だけの世界を作ることを。


――もう誰も泣かせない! 誰も傷つけさせない!


 マレは再び、もう一つの世界へと旅立つ。

 全てのモノに笑顔を届けるため。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ