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05:絶体絶命

「……っ!」


 な、何でこんな事に……。

 マレは現在進行形で行われている出来事に、唖然として言葉がでない。

 目の前に現れた自らの行動の結果。それをただ眺めるだけしか出来ず、佇んでいる。


――衝撃――


 吹き荒れる砂嵐が、シンボルタワー付近で戦う2体を、ライオンの形状に変化して魔獣が如く容赦なく襲う。

 胸の奥底から這い上がる気持ち。


――ごめん、なさい……。


 心の中でマレは一方的な戦いを展開されている仲間に謝る。

 何も分からなかった自分。仲間の言う事を聞かなかった自分。

 自分が……憎い。

 だから、マレは思う。過去を、現在(いま)を否定したくて。


――もし、


 シンボルタワーに来なければ。


――もし、


 此処に来たいと言わなければ。


――もし、


 テッラとクリーンと出会わなければ。


――もし、


 この世界に、アプリケーションワールドに来なければ……。自分が……否、仲間が地獄を味わう事はなかったのではないだろうか?

 マレは飛び出した。何故かは分からない。気づいたら体が勝手に動いていたのだ。戦場を目掛けて。


(ごめん、なさい……だから……僕がっ!)


 プロモン同士の戦闘で、自分に出来ることは限られている。

 本当は後方から携帯プロフォンを用いて、テッラの能力上昇支援をするのが正しい行動なのだけれど。

 今の状況から2体の仲間を救うには、これしかない。


--------------------------


「自己紹介が遅れたね。私の名前は紀之川(きのかわ) 愛心(あいみ)


 マレから数メートル離れた少女、改め愛心。

 隣に降り立ち、マレ達を見据えるライオン型のプロモンに抱きつきながら、愛心は言う、


「この子は私のパートナーの”ラート”。そして私達、二人で一人の砂漠の”王”ね。よろしく」


 愛心の瞳は真っ直ぐと、マレを見据える。

 髪と同じ黄色の瞳に見詰めらるマレは、幻覚を見た気がした。瞳から、愛心から発せられた殺気に、自分の全てを飲み込み包容された幻覚を、だ。


「なっ……さ、砂漠の王だと? なんでこんな所に、しかも敵の陣地に」

「あのね掃除人クリーン、それに答える義理も義務もない」


 クリーンの呟きに愛心が答える、


「私はね、ずっと独りで戦ってきたんだ。昔からだよ……王になった後も独り。まぁ、でも王という称号を手に入れたお陰で得た物もある。それは圧倒的な力。数という名前の力。集団という名前の力。組織という名前の力。けれどそれだけじゃ足りない。満たされないよ、私の(こころ)は……。私は欲しいんだ……世界という名前の全ての力を、この手中に収めたい。そしてね、復讐する……」

「……」

「……」

「……」


 何を言えばいいのだろうか。放つ言葉がない。

 この少女は危ない。

 何処か歪んでいた。

 愛心の隣に佇むライオン型のプロモン、ラードから放たれている敵意と殺気。

 加えて先ほどの台詞。


「まぁ、ついでに教えてあげる。王である私が、自ら此処にいる理由を」


 愛心は相棒のラートを撫でる、


「部下が弱くて情けないから、ここら辺を彷徨いている残存勢力(ざっそう)殲滅(そうじ)する為だ。もうシンボルタワー(アレ)は私のモノなのに……人ん家の周りでウロウロされるのって、正直に言っちゃえば迷惑なんだよね。ほら、ストーカーされてるみたいで、気分悪くなるじゃん」


 不機嫌そうに呟いた。

 何もかも他とは違う感覚は、テッラとクリーを威嚇するには十分だった。

 狂い歪みを持つ少女。

 異常な殺気を放つ、彼女の相棒ラート。


――2体で1体の、砂漠の王。


 つまり、


「……ねぇ、テッラ、クリーン……あの子、自分が王だと言いましたよね?」


 マレは後方の二人を見る、


「僕……良い事を思いつきました。手っ取り早く”森林エリア”と”砂漠エリア”の戦争を終わらせる事が出来て且つ、僕、自身の目的を最短コースで果たすことが出来る皆がハッピーエンドになれる結末を」

「……オ、オイ……ま、ま、まさか、オ前っ!」

「ひゅぅぅうう……テメェの考えには毎回毎回驚かされるが……てゆーか、逃げるコマンドは存在しないのか?」


 ニカッ、とマレは笑う。


「ありませんね。僕は人生最大の危機というピンチを求める生き物でしてね。常に、それに戦いを挑み、勝つ! ……さぁ、愛心さんと仰いましたよね?」

「ええ」

「貴方に王の称号を賭けて、決闘を申し入れますっ!」

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