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第96話 お嫁さん?



 布団の中で落ち着いた後に、らいかが少しの間考えるようなそぶりを見せて、とんでもない事を聞いてきた。


「ねぇ、お兄ちゃん。シロナさんってお兄ちゃんのお嫁さんなの?」

「は……?」


 あれ、聞き間違い?

 じっと見つめてみるけど、らいかはこっちの反応待ちだ。

 どうやらさきほどの言葉は幻聴じゃなかったらしい。


 というと?

 と?

 つまり、比喩とか暗号とかじゃなくて、言葉そのまんまの意味の事を聞いてるわけで……?


 …………。


 はぁ!?

 そんなわけないじゃん。

 何言ってんの?


 何が楽しいのか、らいかはくすくす笑いながら話を続けている。


「だって、ご飯作ってくれてるみたいだし、こんな性格のお兄ちゃんといっしょにいて楽しそうにしてるし」


 悪かったな、こんなんで。

 残念な性格をしてるって点は認めるけど。

 でも、別にシロナは僕を特別扱いしてるわけじゃないと思う。


 だって、あいついつもあんなだし。

 誰にでも優しいし。

 博愛精神的な何かで、僕の事気にかけてるだけなんじゃないかな。

 水龍の件でアリッサを助けた事があるから、その事も影響してるかもしれないし。


 とにかく、お嫁さんとかないから。

 どっからそんな結論出したんだよ。


「だって、お兄ちゃん口悪いし、元から友達少なかったし、オンラインゲームではほら昔……、あんな事もあったし心配だったんだよ。そんなお兄ちゃんが誰かと一緒にいるなんて……」

「……」


 やっぱり、未だ忘れる事が出来ないPKされた思い出を引きずって、ここで極力人と関わらないようにしてきたっていうのは、さすがにお見通しらしい。


 シロナ以外の人間と交流がなさそうだって判断された事に、兄としては情けなくなる。


「言っとくけど、攻略組として最前線で戦ってた事もあるんだけど」

「え、そうなの? 意外。お兄ちゃんって先頭に立って戦うタイプには見えないのに」

「別にリーダーシップ発揮してたわけじゃないって。剣持って戦う集団の一人だったって話だし」


 できればらいかと再会するなら、そういうマシな時代の僕とだったら良かったよな。

 互いの為にも。



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