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第69話 ちょっと賑やかな朝食



 数分後。

 結局、布団の中で惰眠を貪り続ける事は叶わなかった。

 意外と頑固なシロナの勢いに押し負けて、布団からでる事になったからだ。


 気が弱そうな見た目と言動してるんだけど、これで結構強気な所もあるから、たまにすごくやりにくいんだよね。


 シロナに引きずられる様な形で部屋を出てリビングに行くと、すでに朝ごはんが用意されていた。


 美味しそうなのが、テーブルの上で勢ぞろいだ。


 最初の頃は感謝とかしてたんだけど、何だか慣れちゃって、僕の口から出ていくのは通常営業のセリフだけ。


「よくやるよね、毎回」

「ご飯を作るのは、嫌いじゃないんです。現実でもよくやってましたから」

「小さな弟達に?」

「はいっ」


 そんな屈託ない笑顔で肯定しないでくれる?

 僕としてはちょっと複雑な心境なんだから。


 家にきてくれるそれなりの可愛い見た目の女の子から、弟扱い。

 うーん、微妙な気持ち。


 ともかく、テーブルについて、シロナ手製の料理を観察。


 仮想世界の料理なんて、誰が作っても同じだって思ってたけど、知り合いが作った物と他の人が作った物だと、やっぱりなんか違うのかな。


 こう、フィルターでもかかってるんだろうな。


 屋台でみるような料理とかもあるけど、こう……ちょっとだけ美味しそうに見える。


 テーブルの上に並んだ朝食を前にして、僕は手をあわせた。


 別に本物の命をいただくわけでもないんだから、ありがたみなんて感じる必要はないと思うんだけど、こうしないとシロナが煩いから。


「いただきます」

「はい、召し上がってください。では、私もいただきます」


 データの塊にすぎないそれらに、箸をのばしてつついていく。

 いつもと同じ味なんだけど、それでも一人で食事をする時よりは、箸が動く回数も多くて……、気が付くとそれなりの量を平らげる事となった。


 こんな一日の始まりも、何だか悪くはないかなぁ。



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