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第63話 第二関門



「らぁぁぁぁっ!」


 気合を入れて、剣を振る。


 細かい事なんて考えない。

 ひたすら攻撃を通す事だけ考えた。


 小細工なんて、意味がないから。


 竜とたった一人のプレイヤー。


 結果なんて、結局は知れている。

 難解な数式なんて必要のない未来予測だ。

 きっと子供でも推測可能。


 それでも僕には意地があるから。

 今はこんなだけど、かつては命の危険と隣り合わせの最前線で戦って来たんだ。

 この程度の危機で、狼狽えてたまるか。


 ただ、がむしゃらに剣を振り続けた。

 

 そう簡単に、倒れてたまるもんか。

 そう簡単に、死んでたまるもんか。


 ここで、時間を稼げば稼いだだけ、他の人が助かる確率が高くなる。

 ここで、傷をつければつけた分だけ、他の人が龍を倒す確率が高くなる。


 それでいい。

 もう、それだけ考えるしかない


 僕だって、気がついてるんだよ。

 逃げればまだ生きられるんじゃないかって?


 こんなところでふんばって戦ってもどうにもならないんだって。


 最近のあれこれをなかった事にして立ち去る選択肢もあるんだって。

 でも、選ばない。


 だって、これってさ。

 ようするに自分の心との戦いでしょ?


 自分一人だけをとるか、その他の人間をとるかってやつ。

 何でか僕は後者の方をとっちゃったから。

 とっさに体が動いちゃったから。


 今更方向転換何で、引きこもり続けるより恰好悪い。

 このまま、責任取ってやるしかないだろ。


「こなくそっ、クソッたれが!!」


 剣で斬りかかる。

 背後にまわりこもうとするけど、失敗。

 相手の上を取ろうと宙にうかびあがろうとしたけど、羽ばたきで阻まれる。


 地面にぬいつけられて上から攻撃されるばっかりで、とっても不便だ。


 で、ときおり踏みつけてこようとしてむかしくし。


「だぁっ! 僕は蟻じゃない!」


 シロナ、無事かな。

 ついでに、アリッサとかも。

 他のモンスターにやられてたりしないかな。

 

 せめて、守りたかったのかもしれない。


 人間を信じられない僕が、人間を信じられる人を守れたら、ちょっとは意味があったんだって。


 僕がこんな情けない自分になっちゃった事にも、意味があったんだって。


 糧としてもらえたら、それで良かった。

 活かしてくれたら、それで満足だった。


 なのに。


「ニルバさん!」


 もしかしたらって予感はしてたけど、やっぱり君は来ちゃうんだ。


 

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