第26話 ココ谷
ココ谷
水晶草が生えている場所はいくつかあるけど、この付近で言えばココ谷だろう。
ココナッツの実に似た何かがなる、小さな木が生えている谷だ。
でも、特に珍しい素材が手に入る場所ではない。
街から離れていなくて、ちょうどいいレベルのモンスターの湧きが多いので、低レベルプレイヤーの狩り場として便利ではあるが。
そんなココ谷を歩く人影が一つあった。
誰だよそんな物好き。
僕だよ、それ。
はー。
「水晶草、水晶草ね……」
まったく何で僕、水晶草なんかを探してるんだろ。
キモイんだけど。
そんなにシロナの事気に入ったの? 違うでしょ?
だって、僕だよ? ありえなくない。
じゃあ、一体なんでこんな所にいるのさ。
「はぁーあ」
ため息、何度ついたか回数覚えてない。
いい加減見飽きて来たココの木を眺めながら、空を仰ぐ。
水晶草は、水晶のように透き通った、花が特徴的って聞いたけど……。
ないんだよね。
ぜんっぜん。
すこっしも。
僕もそれなりにこの世界で過ごしてきたけど、見た事ないくらいだし。
希少なんだろうな。
それなのに、今のウィークローネには水晶草が必要な人間がわんさかと大量発生。
目につく所に生えていたものなんて、とっくになくなってるはずだよ。
ああ、そういえば呪いについては、詳しく聞いてなかったな。
数時間前に聞いた二人組の女性プレイヤーも困ってたみたいだしそれなりにやっかいな内容なんだろうな。




