第19話 竜の呪い
「水晶草がどうしても必要なプレイヤーさんが多くてね。いやぁ、大変大変」
「水晶草?」
「あ、興味持った?」
ついさっき、シロナにいちゃもんつけてきたおばさんが口にしていた言葉がそうだった。
シロナはたぶん水晶草を探している最中に、おばさん達のパーティーともめたんだろうな。
取り分とか?
「実は、私の友達に竜に呪われちゃった子がいて、その呪いを解くために水晶草が必要なの。ね、大変でしょ。ニルバくん。力を貸して!」
「断る」
「えー」
僕は引きこもるって決めたんだ。
現実世界じゃないこの世界なら、人と関わらずに生きていける。
だから、攻略なんか目もくれず一人でのんびりライフを満喫してたってのに。
無駄に顔の広いアリッサと一緒にいたら、人とコミュニケーションとらなくちゃいけないじゃないか。
そんなの御免だ。
「でも水晶草の事は気になるんでしょ?」
「別に」
「いけず」
口を尖らされても僕の意見は変わらない。
ニルバ・バニルは何にも口を突っ込まず首も突っ込まず、プレイヤーホームにまっすぐ帰る。
今日この後に外でする予定はそれだけだから。
「要件はそれだけ? じゃあね」
「え、ちょっとニルバくーん。ひどいんじゃないの!?」
アリッサを置いてその場から離れていく。
人ごみの多い場所だ。一度見失えば、こっちを見つけるのは大変だろう。
「……はぁ、シロナっちにどうやって手紙書こう」
だから、そんな彼女の独り言を耳にして思わず振り返っても、僕だって彼女を見つけられやしなかった。




