第117話 パーティー
突き飛ばされて体のあちこちが痛くなったけど、そんな事よりも相手への憤りの感情の萌芽まさった。
「お前なんかにやられてたまるかよっ!」
剣を手にして、相手に切りかかる。
こいつのせいでどんな思いをしてきたか。
昔のトラウマを刺激されて、どんな思いを抱いたか。
ぶつけてやらないと気が済まなかった。
「これは僕の分だ。そして僕と同じ目に遭った奴らの分! 邪魔なのはこっちのセリフだっ!!」
剣で斬りつけながら、感情に思考が支配されていくのを感じる
でも自分ではどうしようも出来なかった。
いっそこのまま、ライフを全損させるまで攻撃してやろうかと思った時……。
「それは駄目だよっ、お兄ちゃん!」
らいかの声がきこえてきて、視界の横に強制的にステータスが表示された。
そこにはパーティー申請の文字。
どうして今?
と思う。
なにこれ。
関係ないよね。
今すること?
でも、頭の中の冷静な部分は、これが一番今の僕に効く有効なブレーキだって分かってた。
これからずっとらいかの兄でいるために、シロナ達と一緒にいるためには、ここで選択しなくちゃいけない事があるんだって。
うまく、言葉にはできないけどさ。
「お兄ちゃん、誰かを憎むよりも、信じて前に進もうよ。そのままじゃ、きっとお兄ちゃん最後に一人ぼっちになっちゃうよ。らいかは昔のお兄ちゃんに戻って欲しいよ」
らいかの声には切実な響きが混じっていた。
ずっと不思議だった。
あんなにオンラインゲームを嫌がってたらいかがこの世界に来た事に。
ありえないはずだった。
僕と同じ気持ちだったらなら。
けれど、もし、らいかがあの時の事に決着をつけているとしたら。
あの時の呪縛を断ち切っって、前に進んでいるというのなら……。
僕は、このままでいいのか?
そんなんでらいかの兄を名乗れるのか?
「ニルバさん、今のニルバさんはちょっと怖いです。だからいつもみたいな優しいニルバさんに戻ってください」
「そうそう、シロナっちの言う通り。ちょっとヘタレなくらいがニルバっちの味が出てて良いと思うけどなぁ」
まったく、シロナ達も勝手な事言ってくれちゃって。
外野のくせに。
でも、ちょっとだけ冷静になれたかな。
視線の先にある憎い敵の顔を見る。
うん、やだ。
ぶさいくだし。
お馬鹿さんの顏だし。
我欲に捕らわれてて、自分さえよければいいなんて思ってる奴、そんな顔してる。
僕はやっぱり、こんなにはなりたくないよ。
僕は、握っていた剣の柄で、システムウィンドウに表示されたパーティー申請のボタンを押した。




