Act.54
「スースー……」
少女が心地よさそうに寝息を立てている。
「眠ってしまったか……」
「まあ、いいんじゃないの?」
俺の言葉にミーシャは微笑みながら言った。
「サクヤの話がつまんなくて寝ちゃったんだもの」
「随分とひどい言い草だな」
「フフッ……そのおかげでアリエルは毎日熟睡してるんだから。ありがとね」
そう言うとミーシャはアリエルの頭を優しく撫でる。
ミーシャと俺に挟まれて、アリエルは幸せそうな寝顔をしている。
「ムニャムニャ……」
俺もアリエルの背中を優しくポンポンと叩く。
「あの頃はまさかこんな事になるなんて思っていなかったな」
「たしかに、そうよね」
俺は結局元の世界には戻らず、ミーシャと共にこの世界で生きることを選んでいた。
そして、クロノスを倒してから数年ぶりにクロームに会った時の事だ。
「その子……アリアちゃん? ……生まれ変わり」
ミーシャのお腹を指差しながら、クロームが言った一言がそれだったのだ。
「あの言葉にはビックリしたわ」
「まさか生まれ変わりだなんて思ってもみなかったからな」
俺もミーシャも半信半疑だった。
しかし、アリエルが成長していくについて、アリアの面影を感じる場面が何度かあった。
ああ、たしかにクロームの言った事は本当だったのかもしれない。
「ねえサクヤ……」
ミーシャはふと顔を近づけて俺の名前を呼ぶ。
「どうしたミーシャ」
「サクヤは幸せ? 後悔とかしてないの?」
「何を言うかと思えば……。ああ、幸せだぞ。後悔などする訳が無いだろう」
出会った頃と変わらず、ミーシャには色んな場面で支えになってもらえた。
それが無ければ今というこの環境も存在しなかったのだから。
前世がぼっちだった事を思えば、真反対の人生だと思う。
それに人の温もりに触れて、出会いと別れの中で俺自身も成長できた。
自分が決めた運命なのだから、後悔はない。
幸せだ。
「ありがと」
ミーシャはそう言うと、俺にそっとキスをした。
勘違いの連鎖で魔王と呼ばれ孤独だった俺が、まさかこんなになれるなんてな……。
俺はこの幸せを壊さないために、前世以上に魔法を極めて、神通力も鍛えなければと思うのだった。
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