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零地帯  作者: 三間 久士
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北のバカブ神その22(夢の最期)

22・『夢』の最期


 恍惚と語っていたドレイクは、眉一つ動かさずに聞いていたクレフに手を差し延べた。


「俺のだ。

お前なんかに、やるわきゃねーだろう」


その手がクレフに触れるのを、アレルは許さなかった。

アレルは二人の間に入り込み、その手を払いのけた。


「君もなかなか興味深い。

今度こそ、その頭を弄ってみたいなぁ」


手をはじかれた事を気にも留めず、ドレイクはニタニタとアレルを下から覗き込んだ。

アレルはそっと、アルルへと視線を投げた。

その視線を受けて、アルルは弱く頭を振ってそっとフレアを見た。

フレアのグレーの瞳は、穏やかにアルルを見つめていた。

その表情が、ニコラスには清々しく見えた。


「私はただ、お前たちの笑顔を、レダの幸せを守りたかっただけだった。

変えられぬ未来を夢見させられていた・・・

お前たちの悲しい結末を、何とか変えたかった」


フレアは優しく語りながら、ゆっくりとアルルに近づいた


「いくら『神』に祈っても変わらない未来・・・

時ばかりが流れこの身も朽ちて行く。


『神がなければ悪魔もない・・・

しょせん、神も悪魔も同じ者』


そう思うようになり、あの男の言葉に手を出した」


フレアは膝を折り、アルルの頬にそっと触れた。


「お前たちは強いな。

さすが、レダの子達だ」


アルルの頬に触れている手が光りはじめた。


「そんな事をすれば、貴様は・・・」

「いいのだ。

もう、いいのだ。

私が見た『夢』は覆えなかった。

だが、今は夢の先にきた。

愚かだった私の、せめてもの罪滅ぼしだ」


ドレイクの声に、フレアは優しく答えた。

その姿がゆっくりと透け始めた。


「大伯父様・・・」


アルルは自分の頬に触れた手に、そっと両手を重ねた。


「あの男に、気をつけなさい。

我らが幼き女神に、導きがあらんことを。

生きていてくれて、ありがとう」


消える直前、フレアは優しい瞳をアレルに向けた。


「諦めたら、終わりだと思わないか?」


アレルを下から覗き込んだまま、ドレイクは不気味に笑いはじめた。


「悪魔でも神でも、誰でもいいのだよ。

そんなもの、『きっかけ』にすぎない。

私が神になる

私が悪魔になる

私が世界の統べてに、私が現世の『ジャガー神』になるのだ!」

「アルル、術を解け!」


アレルは瞬時にクレフとニコラスを抱きしめ、叫んだ。

瞬間、辺りが真っ白になった。


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