北のバカブ神その14(研究者)
14・研究者
そう、警戒しないで欲しい。
この席に座って・・・
周りの子達が気になるかい?
お察しの通り、発病者だよ。
でも心配いらない。
私の手術を受けているから、暴れるようなことはないよ。
もちろん、この子達にも欲求はある。
あるが、私がそれを制御している。
大人しく、整列しているだろう?
ピクリともしない。
ニコラス君の村では、何処まで研究が進んでいたのかな?
ああ、そんな顔をさせるつもりじゃないんだ。
私は、この病気を治したいんだよ。
そう、『不治の病』ではなく『完治できる病』にしたいんだ。
だから、試せることはやったつもりだ。
ただ、もっと沢山のデータが欲しい。
昔、君の村の神父に協力を求めたんだがね、つっぱねられてしまってね。
君は神父の手伝いをしていたんだろう?
なら・・・
いや、そんなに恐い顔をしないで。
そうか、君は助手と言っても研究の手伝いはしていなかったと。
思い当たることがないと。
なら、どうだろ?
私の研究を手伝ってはくれないか?
後少しなんだよ!
後少しで治療方が分かるんだ!
ああ、失礼。
私としたことが、興奮してしまいました。
こんな汚れた手袋では失礼ですね。
新しいのに変えましょう。
ニコラス君、ジャガー病の感染経路は知っていますか?
そうです。
感染者の血液や体液が、非感染者の傷口や粘膜に触れることがメインですね。
あと、稀に母胎感染もあります。
妊婦がジャガー病に感染した場合、臍の緒を介して、もしくは産道を通る過程で感染することです。
感染した胎児は月齢にもよりますが、九割の確率で死産、もしくは流産してしまいます。
これは、劣性遺伝子を排除するためだと解釈しました。
遺伝子とは、生き物の設計図です。
例えば、髪の色や癖、瞳の形、肌の色等、その固定を作り出す設計図。
これは、両親からもらい受けるもので、この設計図は常に環境に適応されるものが有利に残されます。
この設計図に、まれに、環境に適応されない部分が組み込まれているとします。
環境に適さないイコール、弱い。
弱いのは残る可能性が低い。
それが、劣性遺伝子です。
その設計図で作られた個体は、生まれても環境に適応できず、長く生きることが出来ません。
種族を永く未来へ残すためには、環境に強い設計図では無ければいけないのです。
だから、環境に適さない設計図は、淘汰されていく・・・
自然という世界から、消されるのです。
稀に、産まれてくる一割ですが、産まれても直ぐに発病します。
直ぐに投薬治療を開始しても、もっても一週間でしたね。
劣性遺伝子は排除されるので、遺伝子をのこすそもそもの行為が不可能になるのです。
次に、この病にかかる原因は、この病にかかったモンスターです。
このウイルスは、モンスターならば普通に持っているもので、なんらかのきっかけで宿主を食い殺すようで・・・
そこで、私の研究は行き詰まりました。
何をしても、研究に変化が出ない。
行き詰まり、方向を変えました。
どうせ発病するのなら、制御してしまえばいいと。
周りにいる子達は、発病前に脳を弄ったんですよ。
頭蓋骨を開けて、ピクピク動く脳にメスを入れたんです。
初めはなかなか上手く行きませんでしたがね。
あれはとても繊細で・・・
神経や血管も、とても多い。
まぁ、失敗は失敗で、新薬の発明ができました。
感染者の精神状態にもよるんですが、薬で制御出来ることも可能になったんですよ。
まぁ、多々扱いは難儀ですがね。
たとえば、この者のように・・・