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北のバカブ神その12(渇き)
12・渇き
血の臭いに心が騒ぐ
心臓が耳の真横にあるみたいに煩い
叫びたいのに声が出ない
ああ・・・
腹が減った
酷く喉が渇く
あの血をもう一度飲みたい・・・
力のままに、華奢な躰をねじ伏せ
細く軟らかな首筋にこの牙を立て
薄い皮を、軟らかな肉を貪り、極上の酒にも勝るあの血を飲みたい・・・
総てを飲み干し
総てを喰らい
爪の一枚
髪の一本も残さず
アイツの総てが欲しい・・・
ああ・・・
この体の痺れをどうにかしないと・・・
頭が重い
視界がない
あの血が飲みたい・・・
この渇きを癒してくれ・・・