西のバカブ神その17(神にも人間にも戻れない者)
17・神にも人間にも戻れない者
酷く疲れた・・・瞳も光を失った
指の一本髪の一房も動かない・・・
ここはどこだ・・・
まるで、水の中を漂っているかのようだ
私はこのまま・・・
「お疲れ様でした」
誰だ?
「だいぶ派手に動いてくれましたね」
誰だ?
「どうです?
もう一度、やってみますか?」
誰なんだ?
「大地の柱にだいぶ吸収されて、自分の名前も忘れましたか?
レオン神父」
レオン神父・・・
ああ、私の名前だ
私の名前か?
「それとも、太陽神アポ・テイゥムと呼んだ方がいいでしょうか?」
太陽神・・・そうだ、私は神だった男だ!
神・・・私が?
「アポ・テイゥムよ、腐りきった人間に神罰を与え、選別し、また神々の時代を作りませんか?
どうです?
輝かしいあの時代に、戻りたくはないですか?」
戻る?
どこへだ?
「人格どころか神だったことすら、ジャガー病で失ったようですね。
それとも、転生がはやすぎたか・・・」
なんだ?
何をする?!
私の頭をつかむな!
「まぁ、太陽神でもレオンでも、もうどっちでもいいのですよ。
貴方のおかげで、無事に西のバカブ神と柱が復活しましたから」
や、やめてくれ!
私をここから引き剥がさないでくれ!
「ただ、このまま大地の柱に吸収されて、また聖樹に転生してもらおうっていうのはどうでしょうかね」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「前(前世)は善神の慈悲で転生させて貰ったようですが、今度はどうですかね」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
「神でもなく、人間でもなく・・・
この痛みと恐怖を持って、しばらくは闇の世界をうろつくのですね」
やめてくれやめてくれやめてくれ痛い!
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ・・・
誰か助けてくれ・・・
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い誰か助けて体が・・・
魂が・・・
大地の柱に戻してくれ・・・
大地の柱よ、私を助けてくれ・・・
私の体を引っ張るのは誰だ?!
やめてくれ!
私は沈みたいんじゃない!
眠りたいんだ!
助けてくれ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い・・・
「この世界に、お前が祈る神はいるのか?」
・・・ああ
・・・神はどこにいるのだろう・・・
あの少年の姿をした神は、金色の美しく優しい瞳で私に手を伸ばしてくれていた・・・
もう、あの手をとることは出来ないのだろうか・・・
神よ・・・
ああ・・・
私の神・・・
金色の瞳の神は何処に・・・