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零地帯  作者: 三間 久士
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バカブ神その10(託す決意)

10・託す決意



聖樹を中心に手を繋ぐ四人は、地上の人々の祈りの力を感じとり、それらを自分の神の力として各柱へと注いでいた。

そんな四人を護るココットの結界は、範囲は小さくても、アレルの予想以上だった。

いつまで続くかとも思われたジャガー神の排出は、最期の部分がスルっと出た。

それは二股に分かれた黒い尾で、出きった瞬間、クレフの頭上の結界を勢いよく裂いた。

その裂け目を見過ごすことなく、悪鬼の大きな口が裂け間にねじ込んできた。

犬のように細長い口が、縦に大きく開かれると、幾重にも重なった巨大な歯が見えた。


「紅蓮炎上!」


咄嗟に、向き合っていたアレルがその口を焼き払おうとしたが、炎は不発だった。

舌打ちと同時に、アレルは再生している聖樹を、ココットの真上を頭からすり抜け、クレフを右腕で抱きしめ、左腕でその口を青龍刀で切ろうとした。


「ぐっ・・・

あっ・・・」


しかし、一呼吸遅く、アレルの左腕は肩口からその幾重にも重なった歯に引きちぎられた。


「紅蓮炎上!」

「疾風!」


アレルは噴き出す自分の血を燃やした。

食い千切られた肩口の出血は止まったが、クレフには燃え移らなかった。

アレルの腕を咀嚼していた口は、腕自体が燃え上がり、ガイの技もありズタズタに切り裂かれ炎が溢れだした。


「お前らは俺の肉でも食っとけ。

クレフ、そのまま祈りつづけて結界を補強しろ!

ガイ、今は力を温存しろ!」


アレルに抱かれたまま、クレフはいつもの様に指を二回鳴らした。


「シリブロー・ザクルィトエ」


金色と白銀の魔法陣が、結界の裂け目を塞いだ。

そして、ひときわ黄金に輝くニコラスを護るため、クレフは祈りながらローブの袂から小さな水晶を幾つも撒き散らした。

ガイは青龍刀を構え、ニコラスの援護に付く。


自分の炎が出なかったこと。

ガイの技の威力が落ちていた事。

クレフがバカブ神の結界ではなく、魔力の結界を使った事・・・

皆、柱にバカブ神の力が移ったと、アレルは確信した。


「クレフ、もう少しだけ、頼むぜ」


そして、アレルは微かに残っていたバカブ神の力を左目に封じ込め、一気に自分で抉り出し、クレフの口にねじ込んだ。


「!!!」


不意に襲った口の中の生臭さ、グニグニとしたゼラチン質に、抵抗感から吐き気を覚えたが、させまいとアレルが自分の口を重ね、肉厚の下でクレフの喉奥へと押し込んだ。


「・・・なにを・・・」


思わず飲み込んでしまったものの、クレフはアレルの血で染まった口元を押さえ、こみあげてくる吐き気に膝をついた。


「お前なら、俺の力に敗けることなく、扱いきれるだろう?」


ニヤリと悪い笑みを浮かべるアレルの姿を見た瞬間、クレフの腹の中で飲み込んだアレルの左目が燃えだした。

その『微かな南方バカブ神の力』を、クレフの体は無意識に取り込もうと、外界へのアクセスが切られた。

意識を失ったクレフを、アレルは力強く抱き留め、眉を寄せて見つめた。


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