バカブ神その4(黒蛇)
4・黒蛇
『次』の世界の空はどこまで蒼いだろう?
大地の草花は美しく咲いているのかな?
でも・・・
もしも、闇しかない空でも
もしも、一本の花もない大地でも
僕は世界を残したい
たとえ、どんなに生きにくい世界でも
たとえ、どんなに時がかかっても
再び貴女に出逢うために
再び貴女の手をとるために
僕は貴女との約束を護りたい
一緒に大地を歩くために
一緒に世界中の空を眺めるために
共に時を過ごすために
僕は世界を残す
幾度となく空間が大きく揺れて、その度にあちらこちらが裂けた。
ジャガー神はパンヤを抱きしめて、今まで自分を封印していた幹を駆け昇っていく。
解き放たれた身体の下半身は黒蛇のように見え、まだまだ全部は現れておらず、グルグルと巻き付くように昇り、聖樹を崩していく。
クレフに浄化された魂は、何とか幹の中を昇っていこうとしていた。
結界の中の空間も亀裂がはいり、そこからも悪鬼が流れ込んでいた。
祈るクレフの代わりに召喚獣が戦い、アレルとガイの姿は、炎の中に消えたままだった。
ニコラスは、失った幹の場所に新しい根を生やした。
根を生やし世界の『底』を安定させる。
それで空間の揺れは減少したが、収まるまではいかない。
それでも続けるしかなかった。
根から幹を延ばす。
昇ろうとする魂を包むように、上へ上へ・・・
「うわあぁぁぁ・・・」
ジャガー神に、聖樹に触れてはいないのに、まだ距離はだいぶあるのに、凄まじい衝撃がニコラスの全身を駆け巡り、結界の外まで飛ばされた。
また空間が大きく揺れ動く。
「二人っきりを、お邪魔するつもりはないんですが・・・」
甲冑を着ていても、ニコラスの体はあちらこちら切れた。
ココットもいつの間にか召喚獣の姿に戻り、ニコラスの胸元に避難していた。
アレルの炎は容赦なくニコラスに襲い掛かった。
慌てて結界内に戻ると、無惨に砕けた樹があった。
もう一度、根を生やす。
根を生やし、幹を延ばして・・・
「う・・・・・」
また、聖樹からの衝撃波に襲われた。
悲鳴を上げる暇もなく、再度結界の外に。
身体が悲鳴を上げるって、こう言うのを言うんだろうな。
そう思いながら、ニコラスは痛みを堪えて立ち上がった。
見上げると、ジャガー神はもう第四層まで達していた。
パンヤの姿は見えない。
地上まで行っちゃダメだ、皆がいる。
ニコラスは気を急いて、嫌な汗が噴出すのが分かった。
慌ててユニコーンを召喚し、聖樹の近くまで運んでもらった。
しかし、今度はユニコーンごと飛ばされたが、根は残ってた。
結界内に戻ると、黒い影が襲ってきた。