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グルメガイドで発掘ごはん

この時節、現金収入ほどありがてぇもんはないっす。まじ、ありがてぇ。

うさちゃん大魔王の提示した条件は時給1000円、あるいは異世界の銀銭1枚。

18禁表現なしで、暗い表情でぼそぼそ話ながらご近所案内するだけのらくちんバイト。

いまは日に3度の炊き出しもあるしお金がなくても飢えはしないけど、嗜好品はものすっごく高価なんだよね。キャラメル1個が5000円ぐらいするの

煙草屋のばあさんなんて若い衆を1日煙草2本でこき使ってるしさ。


とりあえず、うさちゃん大魔王の行きたがってる《江戸前ずし龍五郎》にご案内することにした。

うさちゃんの持ってるガイドブックは数年前の日本の出版社の発行のもので情報が比較的新しい。

《龍五郎》は地元民が家族連れで行くような気安いお寿司屋さんで、うちでも寿司の出前といえばここだったな。

それでも、ネタの新鮮さと質は一流店並みだという評判だった。ほんとにおいしかった。

大将の親父さんが料亭と海鮮居酒屋を経営していて、そのつてで仕入れなんかは安くできてたみたい。

大将は気さくなおっちゃんだった。享年50歳ぐらいかな?

召喚の日、《龍五郎》はお店の入った雑居ビルごと地割れに滑り落ちて、ちょうどお店の前に出ていた大将は雪崩てきた土に埋もれてしまったんだ。


さて、現在は地下2Fとなった《龍五郎》店舗前です。

空気を読まない男、うさちゃん大魔王はこの惨状も目に入らないのか、ときおりカメラに話しかけつつサクサクを穴を降りていきます。

お店前の土は掘り出してあるし、いまは崩れ落ちる心配もないけど、同行するのはちょっと腰が引ける。

《龍五郎》は呪われてるって噂なんだよね。


「開かないな」


うさちゃん大魔王はお店の引き戸に手をかけて、ちょっと思案気な表情。

そうなんだ、《龍五郎》のお店の入り口は鍵もかかってないのに開かないし、木の引き戸を鉄パイプやスコップで力任せに叩いても傷ひとつつかないの。

大将の無念の想いが店に憑りついて何人も立ち入らせまいとしてるかのようでしょ。

たぶん呪われてる。その証拠に長くこの場所にいると気分が悪くなってくるし、実際、土砂のかき出しの時には失神する作業員も続出したんだ。


ふたたび、うさちゃんが引き戸に手をかけたとき、お店全体が白く光った。


ガラッ「お邪魔っス」うさちゃんはひょいっと店に入ってく。


「えっ!?開いたの!?あれだけみんなで頑張っても壊せなかったのに」


「結界が張ってあったから解除した。この店の引き戸、《桜》だからさ」


えぇ!?結界ってあれか、あの桜のか。この木戸は桜材で、えっ!?結界って解除できんの!?

ちょっと驚きを隠せない爆弾発言ですよ!

うさちゃんのなんでもないふうな表情が、私の表情を見てドヤ顔に変化。


「そりゃぁ俺は基本すげぇから、この程度の結界はテヤッと解除しちゃったりするけど」

「キミタチも日常的に結界解除してるはずだよ」


「いやいや聞いてないし、知らないし」


うさちゃんのニヤニヤが止まらない。きもいけど今のみるべきポイントはそこじゃない。

私たちが日常的に結界解除してる?どういうことだ。結界が解除できるってことは親父たちも助け出せるの!?


「この国の満開桜の結界はかなり強力だから、近づくだけで魔力を吸い取られるけどな。魔力、生気といってもいい」

「桜の建材の結界解除ぐらいなら、ちょぃと修行すればキミタチにも簡単にできちゃうと思うよ」

「結界は桜の木周辺だけじゃなく、この国全体を覆っていることを忘れてないかい」

「護国結界は動物以外の植物、無機物を眠らせているね。キミタチはそれらの眠りについたものに触れて結界を解除しているはずだよ」


そういわれて腑に落ちた。

瓦礫を掘り返して食料を発見したとする。それがテーブルの上のアイスだったとしたら、そのアイスは溶けないで冷たいままで保存されてるんだ。

そして人の手に触れるとその時から溶け始めるの。だから発掘した揚げ物は揚げたて。野菜は新鮮パリパリなままなんだ。

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