2-2 第85話 課題が増殖中
side優也
休日。俺は部屋にこもって勉強をしていた。
理由は今、結羽に会ってしまうと意識してしまうからである。
「はぁ……」
ため息をつく。
正直、あつしの話を聞けたのは良かったが、あいつに相談しても何も起こらなかったんだから相談したのは失敗だったんじゃと思ってきている。
その時、扉が何者かによってノックされた。
「はい。どうぞー」
そう言うと、扉の向こう側にいる人物は遠慮なくって感じで俺の部屋に入ってきた。
その人物とは、
「ゆゆゆ、結羽っ!?」
恐らく、今の俺は声が裏返っていただろう。
今、一番俺を悩ませている人物が俺の部屋に入ってきた。
会いたくなかった。
だが同じ家に居る以上、接触は避けられない。それが今だったってことだろう。
まぁ仕方がない。
あまり動揺を悟られないように自然に接する。それだけだ。
「ゴホン。それで? 何の用だ?」
「あ、それなんですが実は部屋を掃除してたら卒業アルバムを見つけたので一緒に見たいなと。まぁ、同じ学校じゃなかったんですが、何となく一緒に見たいなと」
あー。確かに卒アルとか他の人と見ると楽しいもんな。なぜ別の学校の俺と一緒に見たいのか分からんが、そういう事なら俺も提供するのが常識ってやつだろう。
そして俺はこっちに来る時に持ってきた荷物の中から小学生と中学生の卒アルを取り出す。
「しかし、ここで見るには少々窮屈じゃないか? そこらに物が転がってて」
色々荷物を取り出した結果この惨状に。
「そうですね。……じゃあ、私の部屋で見ましょう!」
今の俺にとってはかなりやばい事を提案された。
今扉から机までの距離で話してるだけでかなり意識してやばいのに結羽の部屋に行ったら……。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
結局押し切られて来てしまった。
現在俺は座って結羽の事を待っていた。
結羽は俺を不用心に自分の部屋に置いて飲み物を注ぎに行った。
そして俺は座って待ってるんだが、俺の視界に一冊の本が映っている。
しかもベッドの下に思春期男子がお宝本を隠す時みたいにそこにある。
見てはいけない。だが気になってきまう。
男子の部屋でお宝本を捜索する人ってこういう気持ちなんだろうな。
そして俺は──
数分後
「お待たせしましたっ!?」
結羽は帰ってきた直後、声が裏返るほど驚いた。
まぁ、その驚いた原因は俺自身も把握している。恐らく机の上にある本の事だろう。
題名は『男子が好きな属性〜ヤンデレ編〜』
それによって全てのパズルピースが噛み合ったような気がした。
急にヤンデレになったことがあったが、こういう事だったのか。
それにしてもヤンデレ……ねぇ。
「結羽。お前は間違えている」
「な、何が!?」
「俺はヤンデレはそんなに好きじゃないぞ?」
まぁ、昔は病的なまでに愛されるのも良いかなぁ? と思ったが、ある時から萌未さんが……その……、ヤンデレになってしまいまして……。
パンツを見つけた時から俺はヤンデレは恐怖の対象でしかなくなった。
因みに萌未は独占とかはあまりしないけど、最終的に俺と添い遂げようって考え方なんだ。
だから俺が誰かと付き合ってもその相手に被害が及ぶことは無いが、愛人にしてくださいっ! とか言ってきそうで怖い。そんな事したら俺の世間体が……っ!
「ち、違うんですぅっ!」
俺が説くような口調で言うと真っ先に何かを否定した。
「え? 違うって何が?」
「これ、貰ったものなんです」
貰った? 誰から? こんな特殊なもんを結羽にあげる人なんて……一人しか思いついちまったよ!
あの元生徒会長。今度あったらどうしてくれよう。
「はぁ……そうか。事情は分かった。だが、ヤンデレは従妹だけで充分だ」
「う、うん。なんかごめんね?」
「いやお前が謝ることじゃないから気にするな」
まぁ、勝手に漁った俺が悪いんだしな。
でもこれで結羽がヤンデレすることも無くなったか。
それにしてもなにあのクオリティ。女優目指した方が良いんじゃねーの?
「んまぁ、気を取り直して本題に移ろう」
そう提案すると結羽は「うんっ!」と言って、何故かテーブルを挟んで向こうに座ればいいのに真横に、しかも完全に密着する位置に座ってきた。
腕同士が完全にくっついている。
「じゃあ見よう?」
そう言って俺の前と自分の前に飲み物を置き、自分の卒業アルバムを開いた。
「あれ? 中学校から?」
「小学校の頃の奴、どこに行ったか忘れてしまって」
えへへと笑いながら「そんなことはどうでもいいんですよ」と言いながら結羽は自分のクラスの集合写真が載っているページを開く。
「これが私です」
結羽は自分を指さして教えてくれる。
髪が短くてメガネを掛けていて、なんと言うか地味って言うか……。まぁ、本人に言ったら失礼だから言わないけどな。
でも、なんと言うか……見たことあるような……ないような?
何せ地味だからな。
「俺とお前は昔会ったことあるか?」
無意識に聞いてしまった。
気持ち悪いと思われてしまっただろうか?まぁ、そうだよな。急に前あったことあったか? って聞いたら──ってめっちゃキラキラした目で見てきてる!?
「どうでしょうか?それは記憶を辿ってください。それも宿題です」
宿題が増えてしまった。
なぜ俺の黒歴史を知っているのか。そして結羽と俺は昔会ったことのある可能性。
そこで俺はひとつの可能性が浮かんだ。だが、これは相当低い確率だ。
天文学的な数字の並びになるだろう。
「そういやこの頃、結羽は髪も短くてメガネをかけてるんだな。今はコンタクトなのか?」
「あ、そうだね。今はコンタクト。まぁ、そこまで悪いって訳じゃないけどね。視界がぼやけると吐き気がするから」
なぜコンタクトにしたのかは分からんが、コンタクトをしている理由は分かった。
「ロングにしたのもコンタクトに変えたのも、ある一人の男の子に言われたからなんだよね」
急に結羽は語り始めた。
懐かしんで、そして嬉しさと寂しさが入り混じったような。そんな表情だ。
「その子にね。「君は多分、メガネは無い方が可愛いと思うよ。うん! それと僕はロングの方が好きだな」って勝手に好みを私にぶちまけてきてその時は困惑しちゃった」
「へぇ〜っ。今はその子は何処にいるんだ?」
「んー。本人が覚えてないかもしれないけど、意外と近くに居る。探してみてよ。これも宿題」
結羽に質問する度に宿題が増えるな。
まぁ結局気になるし、探してみるか。




