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2-2 第84話 小学生の恋

sideあつし


 これは俺が小学生の頃の話。


 まだつみきと出会って間もない頃の話だ。


「ねぇ君。いつも一人だけど友達いるの?」

 俺が本を読みふけっていると前方から声をかけられた。

 聞き覚えの無いこの声はつみきのやつとは違う誰かのようだ。


 今ほどでは無かったが昔もかなり無愛想だったからちょっと不機嫌な感じで睨むように前方を見る。

 そこにはまだ小学生で幼さはあるが、整った顔立ち。将来は確実に美人になるであろうと予想されるような美少女がいた。

 それに俺はこいつのことを知っている。

進野真(すすのま)彼方(かなた)

 俺がそう呟くと目の前の少女はパァーっと笑顔になった。

 俺はこの時「しまった……」と思った。


「覚えてくれてたんだぁっ! 嬉しいな〜えへへ〜」

 何がえへへだ。

「そう言う君は確か……どうりょうじあつし君だっけ?」

 舌足らずで上手く俺の名前が呼べてない所がなんかおかしくてプフっと笑ってしまった。

「あ〜笑った〜っ! もぅ……」

 その瞬間、真横からドサッと物が落ちる音がした。

 そっちを見るとつみきが居た。居たんだが、何故かこの世の終わりみたいな顔をしている。


「どうしたんだつみき」

「わ、私でも童明寺君に笑ってもらうのに時間がかかったのに、初めて会った人と笑ってる……!?」

 俺を見ながら硬直してつみきは「これは事件だよ……」と呟いている。失礼な、俺だって笑うさ。笑うことが少ないだけでさ。


「んで、つみき。お前どこ行ってたんだよ」

「ん? ああ、ちょっと職員室に行ってたんだ」

 また勉強を教えて貰いにか。本当につみきは勉強熱心だ。そう言う所は見習いたい所ではある。


「んで、お前はいつまでそこに突っ立ってんだ?」

 俺が睨みながら言うも、彼方は全く動じずにニコニコと笑みを浮かべている。

「もう暫く」

 その返答に俺は深くため息をついた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也


「へー。あつしにはもう一人幼馴染が居たのか」

「幼馴染っつーか。一方的な感じだな」

 俺はあつしにその話を聞いてびっくりしていた。あつしに幼馴染が白井さん以外にも居たなんて。


 そこで俺は疑問を持った。

「んじゃその子は今、どうしてるの?」

 その質問をした途端、あつしの表情が曇った。

 それを見て俺は自分が地雷を踏み抜いてしまったことに気がついた。


「いや、ごめん」

「いや、良いんだ。どうせ言うつもりだったからな」

 そしてあつしは手元にある飲み物を一口飲んで喉を潤す。


 そしてあつしは意を決したかのような表情でこう告げた。

「進野真 彼方ならもう居ねーよ。この世にはな」

 その言葉を聞いて急に俺は腑に落ちた。今までの行動。態度。その全てを説明するのにこれ程分かりやすい説明ってあるだろうか?


 恐らく、あつしにとっての進野真さんは俺にとっての七海だったんだろう。もう、失いたくないから新たに仲良い人を作ることをしなかった。


「ん? だけどお前さ初めて話した時、お前の方から話しかけてきたよな?」

 そこだけが疑問だった。友を作りたくないなら話しかけなければいいのに。


「俺はあの時は取りあえず突出して目立つわけでもなく、かと言って存在感がゼロにならないようにお前の中に俺と言う人物を作っただけだったんだ」

 つまりは良いように利用されたってわけか。

 だが、結果的にこいつの行動や態度、性格などがこいつを有名人にしてしまったんだがな。


 こいつがこんな態度を取ってるにも関わらず、女生徒らは「クールな感じ、かっこいいよね〜」だ。

 呑気か!?

 とまぁ、こんな感じで余計に注目を集めていた事はあつしはまだ知らないから余計な事は言わないでおこう。


 なんで無愛想・冷たい・チョコのお返しをしない。こんなやつを好きになるのか未だに理解できないところではある。


「まぁ、取りあえず続きを話すぞ。えっと……どこまで話した?」

「進野真さんって言う方が話しかけてきたってとこまで」

 そう言うとあつしは「そうだそうだ」と手を叩きながら言って語ることを再開した。


「まぁ、彼方と出会ってし四・五ヶ月後の話だ。相変わらず彼方は一方的に話しかけてきていたが、俺はその頃には彼女への苦手意識も薄れ、逆に別の感情が湧き始めていたんだ」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

sideあつし


「でねでねあつし君…………聞いてる?」

「ああ、聞いてるよ」

 実際にはボーッとしていて聞いていなかったんだが、素直にそれを言うと後々面倒くさくなりそうだったため、嘘をつく。


「もう……。なら、なんて言ってたか言ってみて」

「…………童明寺あつし様。どうかこの私めを罵って叩いてくださいはぁ……はぁ……か?」

「はぁ……はぁ……か? じゃないよ! それじゃ私、変態じゃない!?」

 変態じゃないのか。

 こんなに友達や人気に固執するやつは変態しかいないと思っていたが、変態じゃないのか。

 ※個人の意見です。


 それにしても、こいつはよく飽きないよな。こんなに無愛想で暗い奴と友達になりたいってそれこそ変態の極みだ。物好きにも程がある。

 物好きと言えばこいつ以外にもいたな。

 俺の真横の席を占領し、ギラギラとこっちを獲物を見る目で見てきてるやつだ。

 あいつ、こんなキャラだっけ?


「もう、やっぱり聞いてなかったんじゃない……。もう一回言うから聞いててね」

 そして進野真の奴は深呼吸してからまた同じ事を言い出した。

「今週末、一緒に遊びに行こうよ!」

 その瞬間、つみきの奴が何も飲んでいないと言うのに吹き出して俺の横顔にぶっかけてきた。

 きったねーな。

 そして俺は顔を拭きながら「どこに遊びに行くんだよ」と問いかけた。


 俺達はまだ10歳だ。そんな子供がどこに遊びに行くってんだよ。

「公園に」

「子供か」

「子供だよ!」

 俺はツッコんだ気になっていたが、逆にツッコミ返されてしまった。


 結局俺は押し切られてしまい、遊びに行く事に。

 そして何故か必死になってつみきが「私も行く!」って主張してきたからつみきも合わせて三人で遊ぶことになった。


 そして三人で遊んだその夜。テレビを付けると驚くべきニュースが。

 そのニュースとは、

『今日、夕方頃。伊真舞市で10歳の女の子が襲われ、命が奪われる事件が発生しました。容疑者は九治(きゅうじ) (たかし)容疑者。被害者は──』


 ──進野真彼方(・・・・・)ちゃん


 その名前を聞いた瞬間、俺はテーブルを強く叩いて立ち上がって目を見開き、その場から一時間ほど動けなくなった。


 おい、その名前は……。おい、嘘だろ? 何かの間違いなんだろ? なぁ……そう言ってくれよ。(たち)の悪い嘘なんだろ?


「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 その日は泣きじゃくった。これまでにない程に泣きじゃくった。

 なんでだ。なんで……なんで最後の最後まで……くっ!

『ああ、聞いてる』

 聞いてねーじゃねーか。

『子供か』

 素っ気なく。冷たい。なんで最後の最後までこんな会話しか出来なかったんだ。




 後日うちに警察がやって来て、俺に一通の手紙を渡してきた。

 送り主は進野真 彼方。

 その名前を見た瞬間、俺の目じりが熱くなった。


 俺は慌てて便箋を破り開け、中の手紙を取り出して広げる。


 中にはこんな内容が書かれていた。


 ──あつし君へ

 ──たんとうちょくにゅうにいいます。好きです。

 ──いきなりこんな事を言われても困っちゃいますよねw

 ──でも、私の気持ちにいつわりはありません。

 ──私はあなたの事が好きです。


 どんどん涙が溢れてくる。もう涙で視界が遮られて満足に手紙を読める精神状態じゃなかった。


 そして俺は全てを読み終わった時、俺はガックリと膝から崩れ落ちた。


 最後の一文、『放課後、屋上に来てください』


 俺は二日連続で崩れ落ち、泣きじゃくった。


 この時の手紙はまだ取ってあるが、俺の涙でふやけて字が滲んでしまってあまり読めなくなってしまった。

 文章はハッキリ全てを覚えている訳では無い。

 だが、これだけは言える。俺は進野真 彼方。彼女の事が恐らく、無意識のうちに好きになってしまっていたと。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也


「という感じだ。お前も気持ちわかるだろ? 七海ちゃんも酷い目にあってるんだし」

「まぁ、そうだが……って! お前なぜその事を!」

 俺はその事は言ってねーぞ!?


「ああ、たまたま聞こえちゃってな」

 ちっ、聞かれてたのか。

 まぁ、聞かれたのならしょうがない。


「んじゃ守ってやれよ。今度こそ」

「当たり前だ」

 そして俺とあつしは拳を合わせる。


「お前もな?」

 あつしはそう置きセリフを言って喫茶店から出ていった。


「ってあの野郎! 会計しないでいきやがったな!!」

 あいつ、今度覚えてろよ。


 俺は童明寺 あつしを恨みながら会計をして俺も帰ることにした。

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