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2-1,5 第73話 柴野

side優也


「しば……の」

 俺はこの苗字を知っている。知っていると言うよりも深い関係だ。

 何せ俺の友達にも"しばの"が居るからである。


「どうかしたか?」

 もし俺の予想が正しかったなら、俺は結構やばい決断を下してしまったのではないか?そう思って俺は冷や汗を流す。


 とりあえず聞いてみるか。そう思って違っていることを期待しながら、苗字が同じなだけの赤の他人である事を期待しながら俺は聞いてみた。

「あの……。政博さんには娘さんって居ますか?」


「ああ、居るぞ? なんで知ってるんだ? 優也君には見せた事無かったのに」

 嫌な予感しかしない!!


 こんなたまたまこの街に柴野さんなんて言う苗字の人が揃うとは考えられない。


 あっちの柴野さんのお宅のご主人は単身赴任中だったような気がする。だけど……もしかすると……。


「俺の娘は結羽(・・)って言うんだ」

 アウトォッ!

 柴野結羽なんて言う同姓同名のやつがそう簡単に居る訳が無い!


「じゃあ行こうか。優也君」


「うーん……。結羽にはなんて言ったらいいんだろうか? 急に押し掛けて怒られたらどうしようか……」

 俺はブツブツ呟きながら政博さんの車に乗り込んだ。


 なんで俺の家に来たのかと聞いたらたまたま今日、自宅に戻れる日になったから今帰ってる途中だったのだが、途中でドアを開けっ放しで言い争っていた俺達が見えて入ってきたという。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 久しぶりの結羽の家だ。


 入院中、毎日会っていたからちょっと合わなかっただけで久しぶりのような気がする。


 そして政博さんは鍵で扉を開けて入っていく。

「結羽、かぁさん帰ったぞー!」

 そう大声で呼びかけると結羽と美樹さんが奥から出てきた。


「おかえりなさぁいあなた〜」

 相当仲のいい夫婦のようだ。微笑ましい。


「え!?」

 結羽と目が合った。それに気がついて俺は目を逸らした。

「や、やぁ」


「な、なんで優也が!?」

 すると美樹さんも俺に気がついたようだ。


「あらァ。優也君。お久しぶりね」

 すると政博さんが驚いてこっちを見る。その反応、分かりますよ。自分がいない間にいつの間にか知り合いになっていたらそら驚く。


「優也君。君は俺の娘のなんなんだ」

 何って聞かれても……。

「友達ですね」

 でも気まずいぞこれ。友達、しかも女の子と一緒に住むってのは……。


「そうか。もう知り合っていたんだな。それなら安心だ」

 何が安心なんですか!? 俺は安心できませんよ!

 心の中でつっこんだけど現実は変わらない。


「優也君がうちで住むことになったぞ」

 政博さんがそう言うとポカンとする結羽。

「あらァ。よろしくね」

 いやいや! あなたはもうちょっと驚いて!?


 結羽は目を点にして瞬きを繰り返してるのを見てやばい選択だったんだと分かる。

 でも俺がこの町で暮らすにはこれしか方法が無かったんだ。

 すまん。結羽。


 すると結羽は数秒間フリーズした後、漸くして現実世界(こっち)に戻ってこれて、顔を真っ赤に染め上げる。

「ゆ、優也がうちに」

 なんかボソボソと呟いているような……。やっぱりそんなに嫌なんだな……。


「よし! それじゃ、今日は優也君の歓迎パーティーでも開こう! 母さん、頼んだぞ!」

 そう言うと美樹さんは袖を巻くって「任せて」と言った。頼もしい限りである。

「お、お母さん! 私も手伝うよ!」

 すると結羽もとてとてと小走りで美樹さんの方へと着いて行った。


「それじゃあ、優也君。上がってくれたまえ」

 と変な口調で上がるように言われたため、俺は少し申し訳ない気持ちになりながらも政博さんの後を追って俺も家の中に上がり込む。


 そして適当に座るように言われたからテーブルについて座ることにした。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 しばらく待っていると、台所から美味しそうな臭いがしてきた。

 しかし、久しぶりにこの家に来た経緯がこれって如何なものだろうか?

 そう思いながら携帯でニュースを見る。


「ん? 何を見ているんだい?」

 と政博が携帯を覗き込んできた。

「ニュースです。今朝は見損ねたので」

 なんだよあのボケまくるニュース。あんなの見た事ねーわ。テレビに対して突っ込んだのは初めてだぞ。

「へぇ〜。優也君。見ない間に大人になったね」

 と政博さんは感心したような声色でそう呟いた。


 当たり前だ。俺だっていつまで経っても子供なわけないだろ。

「しかし、懐かしいな。昔はよくおじちゃん! って甘えてくれたのになぁ〜」

 え? マジで? 覚えてないんだけど!? その話を詳しく聞きたい!

「七海ちゃんが産まれた頃には単身赴任をするようになって、会えなくなっちゃったからなぁ……。君のお父さんとは連絡を取っていたんだけどな」

 俺の父さんの名前を聞いて、俺はある事が気になってしまった。


 まぁ、一度は子供なら思った事がある疑問だと俺は思う。

「父さんはどんな子供だったんですか?」

 そう言うと政博さんは目を見開いて驚き、悠真を彷彿とさせる様なニヤニヤした笑みを浮かべる。

「なんだい。優也君。気になるのか?」

 だが、そのニヤニヤの中に結羽みたいな子供の様な笑顔が含まれている気がする。


 だから俺はこう言った。

「教えてください」

 そして政博さんは目を静かに閉じて俺の前に座り、胡座をかいて腕を組んだ。

 軈てゆっくりと目を開いて政博さんは口を開いた。

「俺達が出会ったのは中学生の頃の話だ」

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