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2-1,5 第72話 選択

side優也


 やっと俺は退院出来て自宅に居た。


 久しぶりの我が家なのだが、相変わらずこの家には俺以外誰も居ない。


 いや、違うな。仏壇には父さんが居る。


 そしていつも通り俺はコーヒーを飲みながらニュースを見る。


『佐藤有山容疑者は「ついかっとしてやってしまった」等と意味不明な供述をしており、容疑を否認しています』

「いや認めてるよね! 意味不明でもないし、否認してないよね!」

 思わず俺はテレビに対してツッコミを入れる。


『以上。ボケ専門ニュースチャンネルでした』

 あ。ボケ専門だったのね。……いやいやいや! そんなの無いから!


 今日はツッコまなくて済むかと思ってたら案の定ツッコんでしまった。

「いきなり疲れたな……今日はもう何も起こらなければ良いけど」

 その時、インターホンが鳴った。


 いつもの通りあいつらだろうと思ってインターホンを見てみると俺は驚いて目を見開いた。

 そしてそっとインターホンの前から音を立てずに後ずさる。


 な、なんであの人がここに居るんだよ。


 ガチャと鍵を開ける音が聞こえた。

 嫌な冷や汗が額を伝って顎まで垂れてきて落ちる。

「相変わらずの玄関。あの人の事を思い出して吐き気がするわ」

 俺の家の玄関を貶しながら女性は中に入ってきた。


「久しぶり優也」

 俺はこの人を知っている。そしてこの人も俺を知っている。

 何故ならこの人は……俺の

「か、母さん……」

 俺の母さんだからだ。


 そう。この人は俺の母さん。絆成 辛華。現在は再婚したと言う話も聞いていた。確か……木崎だっけか?

「何の用だ」

 俺が睨みながら言うと母さんは部屋を見渡し始めた。


「相変わらずの部屋。数年経ったのに相変わらずの内装ね」

 そして仏壇の父さんの写真を見て母さんはフッと笑った。

「やっとね。あの人が居なくなって清々したわ」

 ともうこの世に居ない男に対して毒づく母さん。


 やめてくれ


「はぁ……あの人が居たことにより私がどれだけ苦労したか」


 やめてくれ


「さぁ、嫌なあの人も居なくなったわけだし、優也も保護者が居ないと大変でしょ? 母さんね。再婚したの。だから今からそっちに」


「やめろ!」

 と俺は反射的に叫んだ。


「母さん……いや、辛華さんが親父の事をどう思おうとそれは辛華さんの勝手だ。だけどな」

 そして俺は一泊おいてこう言った。

「あの人は俺が辛いときでも側に居て励ましてくれ、見捨てずに世話をしてくれた人だ。だから俺にとっては大切なただ一人(・・・・)の親父だ。そんな人を目の前で毒づかれて気分良いわけないだろ」

 と良い放った。


 正直、俺は怒りでどうにかなりそうだった。


 素っ気ない態度を取ってはいたけども、たった一人のずっと一緒にいた家族だ。大切じゃないわけが無いだろう。

 そしてそんな大切な人を馬鹿にされて気分がいい人なんて誰も居ないだろう。

 俺はそんな大切な人と過ごした町だからだから俺はこの家……この町を出て辛華さんの元へ行くなんてごめんだ。

 だから

「そのお誘いは断らせてもらう。第一、今更来てなんだ! 一度は見捨てたのはお前じゃないか」

 俺は力強く。俺は意志を込めて言った。

「親に向かって何その口の聞き方!」

 いままで俺たちに対して母親らしい事を何もしてくれなかったくせに……だから余計にイラついた。

「今更母親面かよ。おせーんだよ。あんたはもう俺の母親でも何でもない」

 パシーンと破裂音がなって俺の頬に痛みが走る。


 都合が悪くなったらすぐ叩く。俺はこの人が嫌いだ。

 元々、俺達兄妹もこの人の事が好きじゃないんだ。

「この家ももう売ったから直ぐに出ていかないといけない。さっきは聞いたけど優也。アンタには選択権なんて無い」

 そんな最悪な事を言ってきた。


 この家は父さんが買ったはずなんだが……。なんで母さんが──だが、そんなことを考えている暇はない。

 このままだと本当に連れていかれちまう。


 その時、外から車の音が聞こえた。

 そしてちょうど俺の家の前で止まって扉が開く音が──。

「さぁ、選びなさい。私に着いてくるか、喜んで私に着いてくるか……」

「それか……」

 辛華さんが玄関扉前に立って言っているさらに奥、つまり外から声が聞こえてきた。


 そしてその声がした方を見てみるとそこにはスーツの上にコートを羽織ってハットを被っている男が居た。

「それが……俺と一緒に来るか……」

 そう言った。

 一緒に? なんで知らない奴と共に行かなきゃいけないんだよ。


「貴方は誰ですか」

 辛華さんが冷たい口調でそう言った。


 するとハットに手を添えて口を開いた。

「俺は政博(まさひろ)。そこにある写真立ての中に居る奴の親友だった人間だ」

 と指でクイッとハットを上げると顔が見える。


 すると誰かに似ているなと思う様な顔付きだった。

「ですがそれでは一緒について行くという理由にはなりませんよね?」

 そう言うと「そうだな」と笑う政博さん

「だがこれはあいつ自身の意思でもあるんだ。「俺が死んだら俺の子供をお前が面倒を見てくれるか?」って。俺は断ったんだけどな……。結果的に押し切られちまった」

 語る政博さん。

 父さんがこの人に俺の事を……。


「大きくなったな優也君。前にあった時は赤ん坊の時だから覚えていないだろうけどな……」

 と微笑む政博さん。

「だからと言ってあなたに託す義理はありません」


 おどけているような表情の政博さんの表情が真剣な表情へと変化した。

「じゃあ優也君に聞いてみようか」

 そう言って俺の方に視線を向ける政博さん。

 目でこう言っていた「どっちにする?」と。しかしそんな答えは既に決まっている。

「俺は政博さんの所に行きますよ」


 そう言うと辛華さんは睨んできた。

「好きにしなさい!」

 怒りながら出ていってどこかに行く辛華さん。


 でもそのお陰でいままで張り詰めていた空気が元に戻る。

「それじゃぁ優也君。改めて自己紹介をさせてもらうよ。俺の名前は柴野(・・) 政博だ」

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