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2-1 第57話 パーカー

side優也


 父親の死から数日が経った。


 俺は全てがもうどうでも良くなっていた。


 これじゃ七海が事故にあって直後の頃と何も変わってないじゃないか。


 何もかもがどうでも良くなって、勉強もロクにしなくなって…


 あの頃は父さんが居たからなんとか前向きになれた。


 辛い時もいつも励ましてくれて、俺の……いや、僕の好きな料理を作って、不器用な味で……だけどそれがめちゃくちゃ美味しく感じて……


 今は誰も居ない。この家にただ一人俺が居るだけだ。


 先日、葬儀(そうぎ)にも行った。

 そこで全て改めて理解してしまった。


 俺の心はすっかり(すさ)んじゃってるな。


 そう思いながらズズズとカップ麺を啜る。


 葬儀から帰ってきてからみんなとは一度も話していない。LINEが送られてきても気が付かないふりをしている。


 完全に最低なやつだな。


 学校にはちゃんと行ってはいる。


 そして明日は体育祭当日だ。


 正直面倒だから休もうか悩んでいる。


 だが毎日来るあいつらが鬱陶(うっとう)しい。これじゃ行かざる終えないじゃないか。


「ふーん。あの芸能人、結婚するんだ」

 俺はテレビでニュースをかけていた。


 部屋の中には高く積まれたカップ麺の空。そしてゴミ袋が散乱していた。


 俺に残ったのは父さんの労働災害による保険金と遺留品のみだ。

 父さんの遺産によって俺の手元には金はある。


 何もかもに関心がわかなくなって最近は真剣にアルバイトもしていない。

 偶に如月が話しかけてくるが適当に返している。


『ここのお店はカレーが美味しい事で有名です』

 テレビで紹介されている店があった。


 この店なら近くにもあるな。

「暫くぶりにカレーってのも良いかもな」

 そう言いながら食べ終わったカップ麺の空をまた積み上げる。


 そして立ち上がって台所に向かう。


 台所に来る度に思い出す。


 俺のじいちゃんは飲食店を経営していたから俺はじいちゃんに料理を教えて貰った。

 あの頃は良かったなと


 そしてコーヒーを淹れて飲む。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 そして晩飯時になって俺は例の店に来ていた。


 その店に入った瞬間だった。

 俺はすぐ様ドアを閉めた。


 嫌なものを見た気がする。


 そして恐る恐る中を覗くとやはり居た。

 あ、目が合った。


 そしてまたドアを閉める。


「なーにやってるの」

 ばっとドアが開いて見つかってしまった。


「何もやってねーよ」


「悩みがあるみたいだね」

 何この人唐突に


「この神乃お姉ちゃんが聞いてしんぜよう」


「今の俺は神乃さんを一撃で粉砕できるほどの闇を抱えていますよ」


「闇を抱えているのなら誰かにぶちまけるのが良いんだよ」

 言葉が不穏なんですが……


「これは俺の問題だから良いですよ」


 そうして店を後にする。


 結局食わず終いだな。


 とりあえず今日もカップ麺と適当に弁当でもと思ってコンビニに入ると

「んー?」

 あ、そうだった。


「おーゆーや君いらっしゃい。どうしたのかなー? わざわざ私のシフトに合わせて来るなんて……は!? まさか私が恋しくなった? それならそうと最初から言ってくれれば」


「何1人で()うて自分で解決してんだ。それと別にこの時間に俺が来たのは偶然だ」

 そう言って俺はパーカーのポケットに手を入れながら歩いていく。


「それにしても珍しい格好してるね。パーカーなんて」

 そう。俺は普段パーカーなんて着ないのだ。だが今俺は着ている。


 俺は過去一度だけ俺はこの格好で外を出歩いた事がある。

 それは七海が事故にあった直後だ。


 俺は意識してこの格好をしている訳では無い。無意識だ。

 どうやら俺は心が落ち込んでいると無意識にこの格好をしてしまうようだ。


「まぁとりあえずこれ」

 と俺はカップ麺を4個レジに置く。


「はい1160円でーす」

 そして俺は1200円を取り出して渡す。


「はい。1200円のお預かりです。40円のお返しです」

 そして受け取った40円を財布にしまう。


 そしてレシートはどうするかと聞かれたから俺は断る。

 最近コンビニによく来てるからレシートがたまるから俺は貰わないようにしている。


 そして帰ろうとしたその時

「今日は時間も遅くなっちゃったしコンビニで済ませようか?」


「うん。わかった。あ! お父さん! あの鮭おにぎり食べたい!」

 聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 この声は確実にあいつらだな。


 俺は反射的に棚に隠れた。


 そして商品を選び終えたのか如月とあいつらの声が聞こえてくる。


「ありざした〜」

 なんか気の抜けた「ありがとうございました」だな……


「どうしたの? 急に隠れたりして……あの人達と関係あるの?」

 あの人たちは今、俺が一番会いたくない家族だよ。


「まぁ、あの子の父がな俺の親父の兄さんなんだよ」


「へーって事は」

 如月も分かったみたいだな。


「そう。つまりあの子は俺の…所謂(いわゆる)従妹(いとこ)だ」


「可愛い従妹さんじゃ無いですかー……でもなんで隠れることにそれが繋がるんですか?」

 そう聞かれて回答に困った。でも俺は口を何とか開いてこう言った。


「なんか……さ、色々とこっちにも話しづらい状況ってのがあるんだよ」

 そう言って俺はカップ麺の詰まった袋を持って立ち上がる。


 実は父方の家族とは仲はそこそこ良い方なんだ。


 母さんと別れた後も何度か会ってるしな。


 そして従妹は俺の事を本当の兄のように(した)ってくれている。きっと本当の兄が居ないからだろう。


 でも、だからこそ俺は会いにくくなってしまっているのだ。

 暫く会ってないから積もる話もあったり久々に従妹とまったりと話したい気持ちはあるが今はダメなんだよ。


「んじゃ、気をつけて帰ろよ」

 そう言って手を振ると


「え? 送ってくれるんじゃないの?」


 そう来ると思ったよ。


 正直、如月の家の方面とあいつらの家の方面って被ってるから正直行きたくないんだけど……

 ばったり会うかもしれないし。


「なんか今日のゆーや君の声に覇気が無いけど……何かあった?話ぐらいなら聞くよ」


「そうか……そんでもって話聞いてどうするつもりだ」


「悲しい話しなら私の胸ぐらいなら貸すよ」

 いや、彼女でもない女の子の胸に飛び込んで泣くなんてそんなの出来ねーよ。


「まぁ良いや。あんまり他人にする話でもねーけどお前なら大丈夫だ。それに話したら気が紛れるかもしれないしな」

 そして俺は久々に如月を送っていくことになりました。

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